TOEICリスニングの勉強法|「形式テク」と「聞く力」を分けてPart3・4の頭打ちを抜く
「先読みも覚えた。シャドーイングもやった。それでもPart3・4で取りこぼして、リスニングが頭打ちになる」
TOEIC700点前後でよく聞く悩みです。最初に結論を述べます。Part3・4の頭打ちは、テクニック不足ではありません。「聞く力」そのものの不足です。 そして、テクニックと聞く力は別物です。混同したまま「とにかくシャドーイング」を続けても、穴は塞がりません。
この記事では、TOEICリスニングを「①形式攻略テク」と「②聞く力の訓練」に分け、両輪で回す方法を示します。
結論:TOEICリスニングは「形式テク」×「聞く力の訓練」の両輪
TOEICリスニングの勉強は、性質の違う2つを分けて考えると整理できます。
- 形式攻略テク(先読み・設問予測・Part別の型)= 取りこぼしを減らし、短期でスコアを底上げする
- 聞く力の訓練= 音声知覚・意味理解・情報保持の3層を鍛え、根本から聞けるようにする

500〜700点まではテクの習得で伸びます。しかし700点を越えるあたりから、テクだけでは頭打ちになります。理由は後述しますが、そこから先は「聞く力」の問題だからです。なお、TOEICに限らない一般的なリスニングの組み立ては「英語リスニングの勉強法」で解説しています。
形式攻略テク|Part別に取りこぼしを減らす
まずは短期で効くテクニックです。これは「英語を聞き取る力」とは別に、TOEICという形式に慣れて取りこぼしを減らすためのものです。
Part1(写真描写)|主語と動詞を予測する
Part1は6問。音声が流れる前に勝負がついているパートです。Directionsが読まれている間に写真を見て、主語と動詞を英語で1つだけ立てておきます。「男性が/コピーを取っている」まで決めておけば、あとは合致するかを判定するだけになります。
引っかけは3つの型に絞られます。
- 受動態の進行形:is being ~ は「いま誰かがその動作をしている最中」を表します。人が写っていない写真で The copies are being made. が流れたら誤りです
- 写っていないものを言う:写真に無い物・場所が主語や目的語に入っている選択肢は切ります
- 似た音:grass / glass、walking / working のように、1音だけ違う語を混ぜてきます。ここは知識ではなく音声知覚の勝負です
3つ目で落ちるなら、原因はPart1ではありません。音の識別そのものです。英語の音声変化5種完全ガイドで先に整理してください。
Part2(応答)|冒頭の疑問詞(WH)を絶対に取る
Part2は25問。設問も選択肢も印刷されないため、先読みという逃げ道がありません。テクニックがほぼ効かない=聞く力がそのまま点になるパートです。
勝負は冒頭の2語で決まります。ここで疑問詞と時制を取れば、残りが多少聞き取れなくても選択肢を絞れます。
- Where → 場所・人・部署が答えになる(On your desk. / With Mr. Tanaka.)
- When → 時点・期限(By Friday. / After the meeting.)
- Why → 理由。Because で始まるとは限らない(To meet the deadline.)
- How → 手段・程度(By train. / About twenty.)
難所は間接応答です。質問に正面から答えない選択肢が正解になります。型は3つです。
- 質問で返す:When is the deadline? → Didn’t you get the email?
- 分からないと答える:I have no idea. / Let me check.
- 条件をつける:It depends on the budget.
Yes/No が無いから誤り、という判定をやめるだけで数問変わります。そして、冒頭を取り逃したと分かった時点でその問題は捨てて次の音声に備える。引きずると連鎖して落とします。
Part3(会話)|先読みは「いつ」やるかで決まる
Part3は39問。3人までの会話1本につき設問3問が13セットです。最大のテクが先読みですが、勝敗を分けるのは「読むかどうか」ではなくいつ読むかです。
- Directionsの間に、最初のセット3問を読む:ここで1セット分の貯金を作ります
- 会話が終わったら設問音声を待たずに次のセットへ移る:設問の読み上げは既に読んだ内容なので、聞く必要がありません。この時間が次の先読みに使えます
- 読むのは設問文だけ。選択肢は捨てる:時間内に4択まで読み切ろうとして全部が中途半端になるのが、最も多い失敗です
設問は3タイプに分かれます。取りに行く順番が違います。
- 全体系(What are they discussing?)… 冒頭2〜3文で決まる
- 詳細系(What will the man do next?)… 会話の後半に答えがある
- 意図・図表系(What does the woman mean when she says …?)… 前後の文脈が要る。ここは聞く力そのものが問われるので、先読みでは埋まりません
Part4(説明文)|フォーマットで展開を予測する
Part4は30問。1人の説明文1本につき設問3問が10セットです。Part3と違い、話し手が1人=話の展開が定型化しているのが特徴で、ここが唯一の攻めどころになります。
- 電話メッセージ:名乗り → 用件 → 依頼・折り返し依頼
- アナウンス(店内・空港・社内):呼びかけ → 変更の告知 → 指示
- ツアー・施設案内:歓迎 → 順路・注意 → 集合時刻
- 広告:商品 → 特典・期間 → 連絡方法
- 会議・研修の冒頭:目的 → 議題 → 担当者の紹介
どの型でも「最後に必ず指示か依頼が来る」という共通点があります。Part3・4の最終設問(What are the listeners asked to do?)は、ここを取れば拾えます。後半で集中を切らさないことが、そのまま1問になるパートです。
ここまでがテクニックです。取りこぼしは確実に減ります。しかし、これだけではPart3・4で頭打ちになります。 なぜでしょうか。
なぜPart3・4で頭打ちになるのか|聞く力の3層
頭打ちの正体は「聞く力」の不足です。リスニングは3つの層でできています。どこで詰まっているかで、症状が変わります。

- ①音声知覚:音そのものが拾えない。
Did youが「ディヂュ」、put theがつながって別の音に聞こえる。 - ②意味理解:音は拾えるのに、意味化が追いつかない。長い会話で理解が遅れ、置いていかれる。
- ③情報保持:Part3・4の後半で取りこぼす。これがワーキングメモリ(短期記憶)の限界です。 聞いた内容を保持しきれず、最後の設問で記憶が抜けます。
「集中が切れて後半を落とす」のは、根性の問題ではありません。保持できる量を超えているという構造的な問題です。第二言語のリスニングにおいて、ワーキングメモリの容量は聞き取りの成否を左右する強力な要因だと、研究でも指摘されています。
ここで重要な気づきがあります。先読みが効くのは、この③情報保持の負荷を下げるからです。 先に設問を読むと「保持すべき情報」が絞られ、ワーキングメモリの負担が軽くなります。先読みは「テク」であると同時に、保持層への介入なのです。だから、保持する力そのものが弱いと、先読みだけでは限界が来ます。
スコアは上がったのに、会話が聞き取れない方へ
TOEICの音声はスタジオ収録で、実際の会話より音の変化が穏やかです。測っている範囲が違います。The Past の無料eBook『シャドーイングを今すぐ捨てよ』(LINE登録)で、脳の仕組みに合う学習法を解説しています。
自分がどの層で詰まっているかを先に決める
3層のどれを鍛えるかで、やることが正反対になります。当てにいくと、ほぼ全員が「音が聞き取れない」を選びます。実際にはもっと後ろの層で落ちていることが多いので、素材で切り分けます。
公式問題集のPart3を1セット使い、上から順に確認してください。
- スクリプトを黙読しても意味が取れない → 層の問題ではありません。語彙と文法が先です
- 黙読なら分かるが、音では単語が拾えない → ①音声知覚
- 書き取れるのに、意味を追うと次の文に置いていかれる → ②意味理解
- 会話中は分かるのに、3問目で内容を思い出せない → ③情報保持
2つ当てはまる場合は、上の層から潰します。音が拾えていない状態で保持の練習をしても、保持する中身が入ってこないからです。
3層別の訓練|頭打ちを根本から抜く処方
自分が詰まっている層に対応した訓練を行います。
①音声知覚で詰まる|ディクテーション+オーバーラッピング
症状:スクリプトを読めば全部分かるのに、音では取れない。Part1の似た音、Part2の冒頭で落とす。
公式問題集のPart3を1セット(会話1本)だけ使い、次の順で回します。
- ディクテーション:スクリプトを見ずに書き取る。1文ずつ止めてよい。書けなかった箇所が、そのまま拾えていない音です
- スクリプトで答え合わせ:間違いを「知らない単語」と「知っているのに聞こえない音」に分ける。後者だけが音声知覚の課題です
- オーバーラッピング:スクリプトを見ながら音声に重ねて読む。5〜10回。文字を見てよいぶん、音に注意を向けられます
1セットに20〜30分かかります。毎日新しいセットに変えないこと。同じセットを3日繰り返して、書けなかった箇所が消えてから次へ進みます。手順の詳細は英語ディクテーションのやり方、崩れる音の全体像は英語の音声変化5種完全ガイドにあります。
②意味理解で詰まる|Listen & Repeat+チャンク
症状:音は拾えている。書き取れる。それなのに、意味を追っているうちに次の文が流れて置いていかれる。
- Listen & Repeat:1チャンク聞いて止め、正確に繰り返す。シャドーイングと違い止めてよいので、意味を取る余力が残ります
- チャンクで区切る:スクリプトに / を入れて意味のかたまりに割る。The manager said / that the shipment / would arrive / on Monday. のように、前から順に処理する形に直します
- 1文要約:会話1本を聞いたあと、日本語で1文にまとめる。細部ではなく要点だけを残す訓練です
ここで訳さないことが最も重要です。日本語に置き換える工程を挟むと、その間に次の文が流れます。前から処理する感覚は読解で先に作れます(チャンクリーディングとは)。
③情報保持で詰まる|先読み+メモ+要約
症状:会話の前半は分かる。3問目で「そんな話あったか」となる。Part4の最終設問を落とす。
保持できる量そのものは増やせません。1つあたりの情報を大きくするのが打ち手です。
- 記号でメモを取る:単語を書くと聞く方が止まります。曜日・数字・人物の頭文字だけ(M→Fri)。書く動作が注意も維持します
- 3点で保持する:会話を「誰が/何に困って/どうする」の3点に落とす。この3点はPart3の設問3つとほぼ対応します
- 聞き終わりに口頭で1文要約:練習時のみ。要約できない=保持できていない、とその場で分かります
この層だけが弱い場合、TOEIC以外でも同じ症状が出ます(英語が聞けても覚えられない)。
なお、上位の対策記事の多くは、Part3・4の万能策としてシャドーイングを勧めます。しかしシャドーイングは、初中級者が主軸にすると、音を処理しながら同時に発声するため、肝心の処理が破綻しやすい練習です。初中級者の主軸にはしません(理由は「シャドーイングは意味ない?」で解説)。まずは上記の処方で土台を作ってください。
記事内ミニ練習|Part2で「冒頭WH+弱形」を取る
実際にPart2を1問やってみます。冒頭の疑問詞と、崩れる音を取る練習です。
Q: Where did you put the quarterly report? (A) By Friday. (B) On your desk. (C) It’s a new model.
Practice 1:通常速で聞く【①音声知覚】
冒頭の Where を取れたかが勝負です。did you put は「ディヂュ・プッ」のように崩れて聞こえます。正解は (B) On your desk.(場所=Whereへの応答)。(A) は時間、(C) は無関係です。
Practice 2:スローで答え合わせ【①音声知覚→②意味理解】
ゆっくりで Where did you put の崩れを確認します。冒頭のWHを外すと、応答の正誤判断ができなくなります。Part2は先読みできない=聞く力がそのまま出るパートです。
教材は公式問題集1冊でいい|「何周」ではなく「詰まる問題が消えるまで」
教材を増やすほど伸びる、ということはありません。公式問題集1冊を、詰まる問題が消えるまで回すのが最短です。理由は、ここまでの訓練がすべて「同じ素材を繰り返す」前提で組まれているからです。
周回数を目標にしないでください。同じセットで2回続けて詰まらなくなったら、そのセットは終わりです。詰まるセットだけを残して回し、残りが尽きたら次の1冊に進みます。これなら「何周やればいいのか」を数えずに済みます。
アプリは補助です。移動中の反復には向きますが、ディクテーションと要約は机に向かう時間が要ります。聞き流しだけで伸びない理由は英語の聞き流しは効果ある?意味ない?で整理しています。
スコア帯別の進め方
同じ「リスニングの勉強」でも、スコア帯によってやる順番が変わります。自分の帯より先の施策に手を出すのが、最も多い遠回りです。
〜500点|テクより先に土台
この帯で先読みを練習しても効きません。設問を先に読めても、流れてくる音が語として認識できていないからです。語彙とディクテーションに寄せます。1日30分なら、単語15分+ディクテーション15分。Part1・Part2だけを素材にします。
500→700点|最も伸びる帯。テクで取りこぼしを消す
音はある程度取れているので、形式に慣れるだけで上がります。先読みのタイミング、Part2の間接応答、Part1の引っかけ3類型。この帯だけは「テクの習得」が最短です。公式問題集を1冊、Part3・4の先読みを本番と同じ時間感覚で回します。
700→900点|テクは一巡。情報保持で抜く
ここで多くの人が止まります。先読みもシャドーイングもやった。それでもPart3・4の後半で落ちる。原因はテクではなく情報保持です。メモの取り方と3点保持、1文要約に時間を移します。この帯は1〜2か月では動きません。訓練の質を変えて3か月見てください。
なお、スコアが上がっても実際の会話が聞き取れるとは限りません。TOEICの音声はスタジオ収録で、実際の会話より音の変化が穏やかだからです(TOEIC高得点でも話せない本当の理由)。
公式問題集の代わりにAI生成問題を使えないかという相談も増えていますが、その限界はChatGPTでTOEIC対策はできるのか|AI生成問題の限界にまとめています。
よくある質問
Q. どのくらいやればスコアが上がりますか。
一般に100点の上積みには200〜300時間が目安とされます。ただしこの数字は正しい層を鍛えた場合の話です。音声知覚が原因なのに先読みを300時間練習しても動きません。まず層の特定が先です。
Q. シャドーイングはやるべきですか。
初中級者の主軸にはしません。聞く・保持する・話すを同時に走らせるため認知負荷が高く、音に注意を向ける余力が残らないからです。オーバーラッピングとListen & Repeatで工程を分けてください(スコア帯別の判断はTOEICシャドーイングは何点から効く?)。
Q. 倍速で聞くと効果がありますか。
既に理解できている素材の反復には使えます。ただし聞き取れていない素材を倍速にしても、取れない音が速く流れるだけです。先に等速で書き取れる状態を作ってください。
Q. Part2だけ極端に苦手です。
Part2は先読みが使えないので、聞く力がそのまま出ます。つまりPart2の点は、あなたの音声知覚の実力そのものです。テクで埋めようとせず、ディクテーションに戻ってください。
Q. 公式問題集は何冊必要ですか。
1冊で足ります。詰まる問題が消えてから次に進んでください。冊数を増やすと、1冊あたりの反復が浅くなり、解いたことはあるが聞き取れないセットだけが積み上がります。
L&R で測れるのは受信側だけです。話す力をTOEICの枠で測って対策する場合の設計はTOEIC Speakingの対策|採点基準から逆算する解答設計にまとめています。
まとめ|テクと訓練を、両輪で回す
- TOEICリスニングは「形式テク(短期の底上げ)」と「聞く力の訓練(根本)」の両輪
- Part3・4の頭打ちの正体は、情報保持(ワーキングメモリ)切れ
- 先読みは情報保持の負荷を下げるテク。だが保持する力そのものは訓練で育てる
- 自分が詰まっている層に対応した訓練を選ぶ
先読みを増やすより、自分の「聞く力」のどこが詰まっているかを見極める。これが、頭打ちを抜ける最短ルートです。
テクは尽くしたのに頭打ち、という方へ
先読みもトレーニングもやったのに伸びない場合、自分のボトルネックの層を自分で見極めるのが難しいことがほとんどです。
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