TOEIC高得点でも話せない本当の理由|TOEIC 945点とVersant 76点、同じC1なのに会議室で差がつく

記事の執筆者 メイソン(株式会社The Past 代表 / 椿祐輔)

VERSANT満点(90点)、CEFR C2レベルの英語力を有する。フィリピンの語学学校で10年以上にわたりカリキュラムと教材開発に従事し、述べ5,000人以上の多国籍な英語学習者(日本、中国、台湾、ベトナム、ロシア等)の学習をサポート。言語学と音声学に精通しており、現在は株式会社The Pastの代表取締役、カリキュラム開発者として、グローバルな英語教育を推進している。

TOEICで900点を超えているのに、外国人を前にすると言葉が出てこない。会議に参加しても、愛想笑いだけで終わってしまう。「あれだけ単語も文法も勉強したのに、なぜ……」と、自分の英語力に絶望した経験はないでしょうか。

フィリピンの語学学校で10年以上、5,000人以上の学習者を見てきた私が断言します。

これはあなたの努力不足でも、語学の才能がないからでもありません。
ただ単に、「受けてきた試験が、話す能力を測る構造になっていない」という事実とそれに伴う「脳の使い方のズレ」が原因です。

本記事では、TOEIC高得点者が話せない構造的な理由を紐解き、あなたが本当に英語を話せるようになるために何が必要かを解説します。

※本記事で「TOEIC」と表記する場合、一般的に広く受験されているTOEIC Listening & Reading(L&R)を指します。

TOEIC 945点はどのレベルか|CEFR C1・英検1級相当

先に、スコアの位置づけを確認しておきます。TOEIC L&R の 945点以上は、CEFR でいう C1(熟練した言語使用者)に対応します。英検なら1級相当の水準です。900点台に乗った時点で、多くの職場では「英語ができる人」として扱われ、翻訳や資料チェック、時には通訳めいた仕事まで回ってくるようになります。

ただし、その C1 が何を根拠に付いた評価なのかは押さえておく必要があります。TOEIC L&R が測っているのは、聞く・読む——つまり受け取る側の力だけです。話す・書くは1問も出ません。

だから「TOEIC 945点で C1」と「Versant 76点で C1」は、同じラベルでも中身が違います。前者は読んで分かる C1、後者は口から出せる C1。会議室で差がつくのは、まさにここです。

「読めるのに話せない」は、公式データにはっきり出ている

これは感覚の話ではありません。IIBC が公表している数字に、そのまま出ています。

まず全体像から。2025年度の公開テストの平均は、TOEIC L&R が 616点(受験者755,473人)。話す・書くを測る TOEIC Speaking & Writing Tests は、同じ年度の公開テストで Speaking 131.5点(12,207人)/Writing 141.0点(8,770人) でした。満点が違うので、この2つを直接くらべても意味はありません。効いてくるのは、L&R のスコア帯ごとに S&W の平均がどうなるかのほうです。

IIBC は、TOEIC L&R のスコア帯別に、その層が実際に取った S&W の平均スコアを集計しています。ただしこの表だけ、母集団が単年度ではありません。アンケートに回答した Speaking 受験者の累計348,302人(公開テスト2007年1月〜2026年3月/IPテスト2008年6月〜2026年3月)、つまり約19年分の合算です。

TOEIC L&RSpeaking 平均Writing 平均
900点以上150.5166.9
800〜895点131.4151.4
700〜795点121.1141.4
600〜695点110.4131.8

読みどころは上の2行です。ETS は CEFR への対応で、Speaking は120点が B1 の入口、160点が B2 の入口としています。この線を引くと、こうなります。

  • L&R 900点以上——冒頭で見た C1(945点〜)を含む層でも、Speaking の平均は150.5点。B2 の入口にすら届いていません
  • L&R 800〜895点の層の Speaking 平均は131.4点。これは2025年度の公開テスト平均(131.5点)とほぼ同じ数字です(母集団は違いますが、水準は重なります)。L&R で800点台を持っていることは、話す力が平均以上であることを何も意味しません
  • ところが同じ L&R 900点以上の層でも、Writing は166.9点で B2 に入っています。落ちているのは、話すほうだけです

つまり、読む力の最上位層が、話す力では B1 に留まっている。「読んで分かる C1」と「口から出せる C1」の差は、公式データの上で数字になって表れています。

⚠ 出典は IIBC『TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2026』(2026年7月発行)と ETS「TOEIC® Speaking & Writing Tests Score User Guide」p.22。L&R スコア帯別の集計だけ、期間と母集団が違います。公開テスト2007年1月〜2026年3月・IPテスト2008年6月〜2026年3月の累計(S&W 受験者総数349,926人)で、L&R のスコアは本人が申告した「もっとも最近に受験した L&R」の範囲で、S&W と同時期に取ったスコアとは限りません。年度の平均(616点/131.5点/141.0点)は2025年度の公開テストのみの数字で、別の母集団になります。なお ETS は CEFR 対応について「有識者の推奨であり、硬直的なカットスコアの使用は推奨しない」と但し書きを付けています。

つまり、945点なのに話せないのは矛盾ではありません。測っていないものができない、というだけのことです。ではなぜ「測っていない」ことがそのまま「できない」に直結してしまうのか。理由は3つあります。

理由1:TOEICは「読む・聞く」の知識量しか測らない

日本国内の2024年度TOEIC L&R受験者は約194万人。一方、スピーキングを含むTOEIC S&Wの受験者はわずか2%にあたる約3.9万人です。つまり、日本のTOEIC受験者の大半は、自分の「話す力」を一度も測ることなくスコアを持ち歩いています。

TOEICの発行元であるIIBCの公式Can Doガイドを見ても、項目はすべて「〜を聞いて理解できる」「〜を読んで理解できる」という受動的な能力の指標です。TOEICのスコアが証明しているのは、あなたの「卓越したインプットの量」であり、アウトプットの力ではありません。

理由2:「知っている」と「話せる」は、脳の回路が全く違う

英語を聞いて理解することと、自ら英語を組み立てて発信することは、脳内で全く別のシステムを使っています。認知科学の言葉で説明すると、非常にクリアになります。人間の記憶には、大きく分けて以下の2種類があります。

  • 宣言的記憶(知識の記憶): 「appleはリンゴ」「仮定法過去のルール」など、言葉で説明できる知識。
  • 手続き記憶(運動の記憶): 自転車の乗り方やタイピングなど、体で覚えている無意識のスキル。

TOEIC対策で単語や文法の正解を覚えるのは、すべて「宣言的記憶」を増やす作業です。一方で、実際の会話において「頭の中の概念を瞬時に英語の語順に変換し、正しい発音で口から出す」という処理は、スポーツと同じ「手続き記憶」の領域なのです。

例えるなら、TOEICの勉強は「自転車の乗り方のマニュアルを熟読し、物理法則を完璧に暗記すること」です。しかし、どれだけマニュアルを読み込んでも、実際にサドルに跨って転びながらペダルを漕ぐ練習をしなければ、決して自転車には乗れません。

あなたが言葉に詰まるのは、単に「知っている知識を、運動神経に落とし込む作業」が抜けていただけなのです。

理由3:TOEICが植え付ける「正解主義」の呪縛

さらに厄介なのが、心理的なメンタルブロックです。

TOEICは、4つの選択肢の中から「たった1つの完璧な正解」を選ぶ試験です。この訓練を極めると、無意識のうちに「文法的に完璧な正解の英文を作らなければ、発言してはいけない」という正解主義の呪縛に陥ります。

しかし、実際のビジネスの現場では、100点の文法を頭の中で10秒かけて組み立てる人よりも、60点の文法でも1秒で打ち返してくる人の方が「コミュニケーション能力が高い」と評価されます。足りない単語があれば別の簡単な言葉で「迂回」し、テンポよく会話のキャッチボールを続ける。この思考の転換ができない限り、知識の鎖に縛られたままになってしまいます。

「話せる」の基準は、誰を相手にするかで変わる

ここで一つ、ゴールを明確にしましょう。
「英語が話せない」という悩みは、実は相手によって意味が大きく変わります。

私がフィリピンで働いていた頃、相手も第二言語として英語を話すノンネイティブ同士の環境では、私のVersantスコアが40点台(CEFR B1)でも十分に業務は回っていました。お互いに簡単な語彙を使い、配慮し合う環境だったからです。

しかし、相手がネイティブスピーカーになった途端、容赦ないスピードとリアルタイムのやり取りについていけなくなりました。

  • B1(43点〜): ノンネイティブ中心の環境なら業務が回る最低ライン。
  • B2(59点〜): ネイティブとの会議や、グローバル市場での交渉で意見を述べることができる最低ライン。

「誰と、どのようなコミュニケーションを取りたいか」。このゴール設定が、学習の解像度を劇的に高めます。

スコアは上がったのに、聞き取れない・話せない方へ

TOEICが測っている範囲と、実務で要る力はずれています。The Past の無料eBook『シャドーイングを今すぐ捨てよ』(LINE登録)で、脳の仕組みに合う学習法を解説しています。

万能薬ではない。それでもVersantを指標にする理由

TOEIC 945点とVersant 76点はどちらも同じ「CEFR C1」と評価されますが、TOEIC C1で話せない人は山ほどいる一方、Versant C1で話せない人はいません。

Versant がどういう試験で、どう対策すると点が動くのかはVERSANTスコアをあげる対策方法にまとめています。随時受験できるので、「話す力の現在地」を数字で確かめる用途では TOEIC S&W より手軽です。

誤解のないように言えば、Versantも完璧な「魔法の杖」ではありません。特定のテーマについて深く論理的な意見を構築する力を測るのであれば、IELTS等のほうが適しているでしょう。

しかし、TOEIC高得点者が最初にぶつかる「頭の中の知識を、1秒以内に音声として出力する」という壁を壊す指標としては、Versantは間違いなく世界最高峰です。

VersantのAIは、単なる発音の良し悪しだけでなく、「英語特有のリズム」「イントネーション」「適切な間の取り方(ポーズ)」を極めて厳密に採点します。これらは、現場で「聞き返されずにテンポよく対話する」ための最も重要な要素です。

TOEICの「知識」を「使える武器」に変えるトレーニング

では、TOEIC高得点のあなたが「話せる」ようになるには、これから何をすべきか。

必要なのは、「知っている英語を瞬時に口から出す」泥臭い運動トレーニングへの転換です。

瞬間英作文

中学レベルの簡単な日本語を、1秒以内に英語にして口に出す。「完璧さ」より「瞬発力」を鍛え、正解主義の呪縛を解き放ちます。

オーバーラッピング・リピーティング

VersantのAIが最も重視する「ネイティブ特有の音声変化やリズム」を体に覚え込ませるには、シャドーイングではなく、オーバーラッピングが最適です。シャドーイングが多くの学習者に効きにくい理由はシャドーイングは意味ない・効果ない理由で詳しく解説しています。

The Pastの受講生で、TOEIC 860点を持ちながら海外会議で一言も発言できなかったメーカー勤務の方がいました。プログラム開始前のVersantは42点。しかし、知識のインプットをやめ、この「手続き記憶(運動)」のトレーニングに特化した結果、3ヶ月で56点(B2レベル)に到達し、今では通訳なしで堂々と議論に参加しています。

話す力そのものをTOEICの枠内で測るなら Speaking テストがあります。採点基準から逆算した対策はTOEIC Speakingの対策|採点基準から逆算する解答設計にまとめています。

まずは「本当の現在地」を知ることから

あなたがこれまでTOEICに向けて重ねてきた努力は、決して無駄ではありません。単語帳をめくり、文法を理解し、長文を読み込んだ日々。そこで培われた膨大な知識は、すでに確固たる土台としてあなたの中に蓄積されています。

ただ、ペーパーテストで高得点を取るためのアプローチと、実際のビジネスシーンで瞬時に言葉を返すためのアプローチは異なります。評価の基準や、英語を話すために使うべき筋肉が少し違っているだけなのです。

手持ちの知識をどうすれば実践的な会話力に変換できるのか迷われた際は、ぜひThe Pastの無料カウンセリングをご活用ください。まだVERSANTを受験したことがないという方でも、全く問題ありません。

お申し込みフォームの備考欄にクーポンコード「TOEIC」をご入力いただいた方は、VERSANT満点を取得している精鋭コーチ陣が直接カウンセリングを担当いたします。

お時間をいただくからには、単なるご相談で終わらせることはありません。すでにスコアをお持ちの方はもちろん、未受験の方であっても、ヒアリングと独自の簡易診断を通じて、あなたのリスニングとスピーキングの現在地をプロの目線で細かく分析します。どのパート(A〜F)や技能(Use/Mannerなど)でつまずきやすいのか、根本的な原因を的確に整理いたします。

また、必要に応じてその場で音読や復唱(特にPart B)を一緒に練習し、ご自身の癖や修正ポイントも具体的にお伝えします。そのうえで、目標とするビジネスの舞台で堂々と発言できるようになるために、何を優先し、どの順番で、どれくらい行うべきかを、週5日・1日20分から無理なく回せる具体的な学習プランに落とし込んでお渡しします。

今の正確な現在地を知るための第一歩として、私たちが全力でサポートいたします。

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