TOEICシャドーイングは何点から効く?スコア帯別のやり方と7日間メニュー
通読のうえ、気になる箇所には方法2・3で直接書き込んでいただけます。
記事の監修者:辻村彩子(つじむらさいこ)
TOEIC L&R 990点(満点)。上智大学外国語学部卒業。英語指導歴12年。企業研修・大学非常勤講師・ビジネス英語のマンツーマン指導に携わるほか、英語教材出版社で約9年、編集・校正に従事。学習者が英語を聞き取れない原因を、発音とリスニングの両面から指導している。
「TOEICのリスニングを上げたいなら、シャドーイングが効く」
英語学習の現場では、よくこのように言われます。ところが実際にやった人からは、「ただ音声のあとを追っているだけ」「続けているのに効果を感じられない」という声が少なくありません。
なぜでしょうか。実はシャドーイングは、誰でも同じやり方を続ければ同じように効果が出る練習ではないからです。今の英語力によって、つまずきやすいポイントも、適した練習の負荷も変わります。
本記事でいう「効く」とは、聞こえてきた英語をこれまでより速く正確に捉え、内容の理解とTOEICの正答につなげられるようになることです。
シャドーイングには発音やリズム、流暢さへの効果も期待できますが、ここではTOEICのリスニング力にどう生かすかに絞って考えます。
たとえば、英文を読んでも意味が十分に取れない、知らない単語が多い、知っている単語でも音になると認識できない。こうした段階で長い音源をいきなり追おうとしても、ついていくことだけで精いっぱいになりがちです。
一方、ある程度のスコアが取れていても、「読めば分かるのに、聞くと分からない」という人はいます。この場合は、文字で知っている英語と実際の音を結びつける練習が必要です。
そこで本記事では、シャドーイングを一律に「効く・効かない」で分けるのではなく、スコア帯を目安に、今の段階では何をどこまで行えばよいのかを具体的に解説します。
その上で基本の練習手順、Partごとの使い分け、教材の選び方に加え、Part 3の音源を使った7日間のトレーニングメニューまで紹介します。
※本記事で「TOEIC」と表記する場合は、リスニング力とリーディング力を測るTOEIC Listening and Reading Test (TOEIC L&R) を指します。
TOEICシャドーイング スコア帯別の使い分け
まず、スコア帯ごとの目安を見てみましょう。
ここで示す600点、780点、900点という区切りは、TOEICの公式基準ではありません。現在の英語力に応じて、どのようにシャドーイングを取り入れるかを考えるための実践上の目安です。
同じスコアでも、語彙や文法の力、音を聞き取る力には個人差があります。そのため、「600点未満だから絶対にシャドーイングをしてはいけない」「900点を超えれば必ずシャドーイングの効果がある」という意味ではありません。
※境界値(600/780/900)は、The Pastの指導方針にもとづく目安です。試験の公式仕様ではありません。CEFR対応(B2=785点〜、B1=550点〜、C1=945点〜)はIIBC公式換算の下限目安に準拠しています。
ただし大切なのは、スコアだけで判断しないことです。
実際には、次の3点を確認してみてください。
- この英文は、文字で読めば理解できるか
- 聞いた音を、知っている単語として認識できるか
- 音声を止めずに、ある程度追い続けられるか
たとえば600点台でも、英文を読めばすぐ理解でき、短い音声ならある程度追える人はいます。その場合は、短い文からシャドーイングを取り入れて構いません。
反対に800点を超えていても、「読めば分かるのに、音になると知っている単語が入ってこない」という人もいます。その場合は、いきなりPart 3・4の長い音源を追うより、ディクテーションやListen & Repeat、オーバーラッピングで、文字と実際の音を結びつけるところから始めた方がよいでしょう。
音声変化の知識は、その判断の大切な手がかりになります。知っている単語でも、実際の会話では音がつながったり、弱く短く発音されたりするため、文字から想像していた音とは違って聞こえることがほとんどだからです。
スコアを入口の目安にしつつ、「今の自分はどこまで処理できるか」を見て練習を選ぶのが、
スコア帯別にシャドーイングを使い分けるときの基本です。
では次に、具体的な練習手順を見ていきましょう。
6
TOEICシャドーイングの基本手順
シャドーイングというと、「音声を流して、そのあとをひたすら追いかける練習」と思われがちです。
しかし、聞き取れないところを曖昧なまま何度追っても、なぜ聞こえないのかは分かりません。特に難しい教材では、語彙や内容、実際の音を確認してからシャドーイングに入ることが大切です。
TOEICのリスニング対策として行うなら、ここではシャドーイングを2段階に分けます。
STEP 1:プロソディ・シャドーイング英語の強弱やリズム、イントネーションなど「音の流れ」を追う
STEP 2:コンテント・シャドーイング音を追いながら「何を言っているか」まで理解する
まず音声を安定して追える状態を作り、そこから意味の処理へ進みます。
まずは準備:英文の意味と音を確認する
最初に一度音声を聞き、スクリプトを確認します。
知らない単語や、読んでも意味が取れない文があれば、この段階で確認しておきましょう。文字でも理解できない英文を、音だけで瞬時に理解するのは不可能に近いです。
次に、スクリプトを見ながら音声と同時に声に出して読む、オーバーラッピングを行います。
ここでは、
- 実際にはどのように聞こえるか
- どこがつながっているか
- どこが弱く短く発音されているか
を確認し、文字で知っている英語と、実際の音を結びつけます。
準備ができたら、シャドーイングへ進みます。
STEP 1:プロソディ・シャドーイング
まずは英語の「音の流れ」を追う
最初から意味をすべて理解しながら追う必要はありません。
まず注意したいのは、
- 強く聞こえるところ
- 弱く短くなるところ
- 意味のまとまり
- リズム
- イントネーション
です。
すべての単語を同じ強さで一語ずつ追うのではなく、話者の強弱やリズムを含めて、音の流れごと追ってみましょう。
一語一語を完璧に発音しようとしなくてOKです。
スクリプトなしでも、大きく止まったり遅れたりせず、ある程度音声を追えることを目指します。
速度と回数は「できたか」で調整する
最初は通常速度で試します。
ついていけない場合は、そのまま無理に繰り返すのではなく、
- 音源を短く区切る
- オーバーラッピングに戻る
- より易しい素材に変える
- 必要に応じて一時的に速度を落とす
などして負荷を調整してください。
ただし、TOEIC対策なら最終的なゴールは通常速度で処理できることです。速度を落とすのは、あくまで音を確認するための補助と考えます。
反復は、まず3〜5回程度を一つの目安にして構いません。ただし、「5回やったから終了」ではありません。
ポイントは、
前より拾える音が増えたか。同じところで止まらなくなったか。強弱やリズムを保ちやすくなったか。
という変化です。
同じところで何度も崩れるなら、全文をさらに繰り返すより、その部分だけを取り出し、言える速度まで落として口になじませ反復します。
そして、音を追うことだけに全神経を使わなくてもよくなってきたら、次の段階へ進みます。
STEP 2:コンテント・シャドーイング
今度は「何を言っているか」まで追う
プロソディ・シャドーイングで音声をある程度追えるようになったら、同じ音源を使って、今度は内容にも注意を向けます。
たとえばPart 3・4なら、
誰が何について話しているのか。何が問題なのか。何をすることになったのか。次に何が起こりそうか。
といった内容を追いながらシャドーイングします。
TOEIC本番で必要なのは、聞こえた英文を口で再現することではなく、あくまでも流れてくる英語をその場で理解し、正答につなげることです。
そのため、コンテント・シャドーイングでは原則として通常速度で行い、1〜数回追いながら、
「音を追いながら意味も入ってくるか」
を確認します。
意味がほとんど残らない場合は、ただ回数を増やすのではなく、いったんスクリプトに戻って語彙や内容を確認しましょう。
最後に、音声を止めて簡単に内容を振り返ります。
- 何についての会話だったか
- 誰が何をすることになったか
- 問題や変更点は何だったか
一文ずつ日本語に訳す必要はありません。大まかな流れや、設問につながる情報をすぐ取り出せれば十分です。
シャドーイングで目指したいのは、
「音を言えた」から、「通常速度の音を追いながら意味が分かった」へ進むこと。
速度や回数も、そのために調整します。
必要に応じて録音する
自分のシャドーイングを録音すると、
「言ったつもりなのに単語が抜けている」「毎回同じところで遅れている」
といった崩れを確認しやすくなります。
毎回録音する必要はありません。また、TOEICのリスニング対策なら、見本とまったく同じ発音かどうかまでをチェックする必要はありません。
確認したいのは、
どこで音声を処理できなくなったのか。
そこが分かれば、もう一度確認すべき場所も見えてきます。
シャドーイングでは、「何回やったか」よりも「何ができるようになったか」を見てください。
最初は聞こえなかった一文が聞こえる。知っている単語を音でも認識できる。そして、音を追いながら内容も入ってくる。
この変化が、次へ進むための目安です。
なお、TOEICに限らないシャドーイング一般の手順については、英語シャドーイングの正しいやり方で詳しく解説しています。
TOEICシャドーイングの教材・アプリ ― 何を使うか
手順が分かったら、次は教材です。
TOEIC対策としてシャドーイングをするなら、まず候補にしたいのが公式TOEIC Listening & Reading 問題集です。
2026年8月現在、シリーズの最新刊は『公式TOEIC Listening & Reading 問題集12』。問題はETSが本番と同じプロセスで制作し、リスニングには本番と同じ公式スピーカーが使われています。TOEICで実際に聞く英語を使って練習するという意味でも、まず公式音源を使うのがよいでしょう。
公式教材アプリでは、対象となる問題音声や書籍音源を0.5〜2.5倍速で再生できます。そのため、「速度を変えたい」という理由だけで別のアプリを用意する必要はありません。※一部、速度変更に対応していないモードがあります。
そのうえで、学習アプリやサービスは、今の自分に足りない工程を補えるかで選びましょう。
聞こえない場所を特定したいなら
ディクテーションや、短い音声を繰り返し練習できるものが便利です。
たとえばスタディサプリENGLISHのTOEIC L&R TEST対策コースには、ディクテーションとシャドーイングのトレーニングがあります。
特にまだ長い音源を追うのが難しい段階では、「何秒シャドーイングできたか」よりも、どこが聞こえなかったのかを確認できることを優先してください。
苦手な数秒を繰り返したいなら
速度変更や区間リピートができるツールが使いやすいでしょう。
abceedには、倍速再生や区間リピートなどの機能があります。
聞き取れなかった場所にすぐ戻れるか。短い範囲を繰り返せるか。自分が使いたい教材に対応しているか。
といった使いやすさで選んでください。
自分ではズレが分からないなら
ある程度シャドーイングができるようになってくると、今度は、
「ついていけているつもりだけれど、本当にできているのか分からない」
という問題が出てきます。
まずは自分の音声を録音して見本と比較する方法があります。
それでも、どこが違うのか、何を直せばよいのか分からない場合は、第三者からフィードバックを受けるのも一つの方法です。
たとえばシャドテンでは、提出したシャドーイング音声を英語学習の専門家が添削する仕組みがあります。
アプリやサービスを使えばリスニング力が上がるという保証はありません。
今の自分に必要な「確認・反復・フィードバック」のどこを補えるのかをリサーチしましょう。
そして上級者になったら、単純に再生速度を上げればよいわけでもありません。
Part 3・4の長めの音源を通常速度で聞きながら、内容や要点、話者の意図まで捉えていきます。上級者ほど、「速く聞く」より「深く理解する」ことに負荷をかけていきます。
音源が決まったら、次はTOEICのPartごとに、どの練習を使うかを見ていきましょう。
Part別の使い分け ― TOEICのどのパートで、何をやるか

TOEICのリスニングは、Part 1・2とPart 3・4で音源の長さや求められる処理が異なります。
Part 1・2は一つひとつの発話が短く、Part 3・4では複数の文を続けて聞きながら内容を理解する必要があります。
そのため、すべてのPartに同じ練習を一律に当てはめる必要はありません。
Part 1・2(写真描写・応答問題)― 短い音声で「聞こえない原因」を確認する
Part 1・2は発話が短いため、聞き取れなかったところを一文単位で確認しやすい素材です。
まずはディクテーションやListen & Repeatを行い、
- 単語そのものを知らなかったのか
- 知っている単語を音では認識できなかったのか
- 弱く発音された語や、語のつながりを落としたのか
を確認します。
そのあと、見本の強弱やリズムを意識してListen & Repeatを行います。短い文を安定して聞き取り、再現できるようになったら、その一文で短いシャドーイングを試しても構いません。
Part 1・2ではいきなりシャドーイングに入るのではなく、まず聞き取れなかった音を細かく確認しましょう。
Part 3・4(会話・説明文)― 「音を追う」から「意味を追う」へ
Part 3・4では、会話や説明文を続けて聞きながら、
誰が何について話しているか。何が問題なのか。このあと何をするのか。
まで処理する必要があります。
そこで、
内容確認 → オーバーラッピング → プロソディ・シャドーイング → コンテント・シャドーイング
と段階的に進めます。
この流れは前章で説明した基本手順と同じです。
最終的に目指すのは、音声についていけることに加え、「意味も入ってくる」状態です。
Part 3・4の練習後には、
「何についての会話だったか」「何が問題だったか」「誰が何をすることになったか」
を簡単に説明できるか確認してみてください。
「言えた」で終わらず、「音を追いながら内容まで理解できた」まで進む。
これが、TOEICのリスニング対策としてシャドーイングを使うときのポイントです。
シャドーイングの効果や研究については、英語シャドーイングの効果を研究から検証で詳しく解説しています。
では次に、Part 3の一つの音源を使い、1週間でどう練習するかを見ていきましょう。
この使い分けを、1つの音源で1週間かけて回す具体手順に落とし込みます。
7日間トレーニングメニュー ― Part 3の1つの会話を、7日かけて仕上げる

ここからは、先ほどの基本手順を7日間のメニューに落とし込みます。使うのは、公式問題集Part 3の一つの会話です。
Day 1〜4では、
意味を理解する→ 聞こえない場所を特定する→ 文字と実際の音を結びつける
という共通の土台を作ります。
Day 5以降は、スコア帯と「どこまで音声を処理できるか」に合わせて負荷を変えていきます。
もしくはこちら
Day 1(約10分)まず解いて、現在地を知る
最初はスクリプトを見ず、いつも通りPart 3の問題を解きます。
答え合わせのあとには、
- どこから話が分からなくなったか
- 知っている単語なのに聞こえなかったところはないか
- 音は聞こえたのに、意味が取れなかったところはないか
を振り返ります。
Day 1では、今の聞き取りの課題を確認することです。
Day 2(約15分)英文の意味を固める
スクリプトを読み、知らない単語や表現、意味の取れない文を確認します。
そのうえで、意味のまとまりごとに前から読むチャンクリーディングを行います。
Part 3・4では、聞こえてきた英語をその場で理解していく必要があります。そのため、まず文字の段階で、英語の語順のまま意味を取れる状態を作っておきましょう。
600点未満でここに時間がかかる場合は、音声練習へ急がず、まず意味理解を固めましょう。
詳しい方法はチャンクリーディングとはで解説しています。
Day 3(約15分)聞こえない場所を見つける
Day 1で聞き取りにくかった部分をディクテーションします。会話全体を書き取る必要はありません。数秒、あるいは一文だけでも十分です。
スクリプトと比べると、
- 単語そのものを知らなかった
- 知っている単語を音では認識できなかった
- 弱く発音された語を落とした
- 語の切れ目を取り違えた
といった原因が見えてきます。
聞こえなかったところには、スクリプト上で印を付けておきましょう。
ディクテーションの方法は英語ディクテーションのやり方で詳しく解説しています。
Day 4(約15分)文字と実際の音を結びつける
Day 3で印を付けた部分を、音声とスクリプトを照らし合わせながら確認します。
たとえば、
- 語と語がつながっていた
- 機能語が弱く短くなっていた
- 音が脱落・同化していた
- 予想していた強弱と、実際の強弱が違っていた
といったことがあります。
ここで大切なのは、
「自分が予想していた音」と「実際に聞こえた音」のズレを知ることが、Day 4のゴールです。
音声変化の詳細やルールは英語の音声変化完全ガイドで確認できます。
Day 5(約15分)音の流れを再現する
ここからは、今の力に合わせて負荷を変えていきます。
600点未満は、短い文やチャンクでListen & Repeatとオーバーラッピングを繰り返します。600〜780点は、数文ずつ区切ってオーバーラッピング。780点以上は、会話全体を通常速度で行います。
ここで意識したいのは、話者の強弱やリズムに合わせて、音の流れを再現することです。
スクリプトを見ながら、ある程度安定して合わせられれば次へ進みましょう。
Day 6(約15分)スクリプトなしで音を追う
Day 6は、プロソディ・シャドーイングです。
600点未満は、無理に会話全体をシャドーイングせず、Day 5を続けます。余裕があれば短い一文だけ試してみましょう。600〜780点は、1〜2文程度から。780点以上は、会話全体を通常速度で追います。
途中で大きく崩れる場合は、そのまま回数を増やさず、オーバーラッピングや聞き取れなかった部分の確認に戻ります。
音を追うことだけに全神経を使わなくなってきたら、次へ進む目安です。
Day 7(約10〜15分)音を追いながら、意味まで取る
最終日は、ここまでの変化を確認します。
600点未満は、Day 1で聞こえなかった単語やフレーズが、以前より聞こえるようになったかを確認します。
600〜780点は、短い範囲で音を追いながら意味も入ってくるか試します。
780点以上は、会話全体でコンテント・シャドーイングを行い、
- 誰が何について話していたか
- 何が問題だったか
- 何をすることになったか
を説明してみましょう。
900点以上なら、さらに話者の意図や話の展開まで追えるかを確認します。
最後に、できればまだ練習していないPart 3を一題解いてみてください。
同じ音源は7日間繰り返しているため、正解できても「慣れ」や記憶の影響があります。新しい音源で、
以前より単語が拾えるか。話の流れを追いやすくなったか。途中で意味を見失いにくくなったか。
を見ることで、練習の変化を確かめられます。
7日間の目的は、今できるところから、一段ずつ負荷を上げていくことです。
この積み重ねで、「聞こえない」から「音を追いながら意味が分かる」へ進んでいきます。
TOEICシャドーイングで点が伸びにくい5つの原因
ここまでの手順で練習していても、「なかなか聞き取れるようにならない」「TOEICの点数につながらない」と感じることはあります。
そんなときは、回数を増やす前に、次の5つを確認してみてください。
① 今の力に対して、音源の負荷が高すぎる
英文を読んでも意味がすぐ取れない。知らない単語が多い。知っている単語でも、音になると認識できない。
この状態で長い音源を追っても、「ついていくこと」だけで精いっぱいになりがちです。
そんなときは無理に続けず、
意味を確認する → 聞こえない場所を特定する → 音と文字を照合する → 短く再現する
ところまで戻ってみましょう。
シャドーイングは、難しい音源を頑張って追うほど効果が高くなる練習ではありません。
② 「口がついていけた」と「聞き取れた」を同じだと思っている
練習した音源を滑らかに言えるようになっても、それだけで「聞けるようになった」とは限りません。
確認したいのは、音を追いながら、意味も入ってきているか。
Part 3なら、終わったあとに「何の話だったか」「何が問題だったか」を説明できるか試してみてください。
さらに、新しい問題でも以前より聞き取りやすくなっているかを見ると、練習した音源に慣れただけなのか、聞く力にも変化が出ているのかを確認しやすくなります。
③ 分からない英文を、そのまま音だけで追っている
聞き取れない原因は、耳だけとは限りません。
知らない単語がある。文の構造が分からない。読んでも意味を取るのに時間がかかる。
この場合、シャドーイングだけを繰り返しても、意味理解の問題は残ります。
読んでも意味が取れない英文を、音だけで理解するのは困難です。
今回の7日間メニューで、音声練習の前にスクリプト確認やチャンクリーディングを入れているのも、そのためです。
④ 同じところでつまずいているのに、すぐ次の音源へ進んでいる
毎日新しい教材に進んでも、同じ弱点を繰り返していては課題は残ったままです。
今回、一つの音源を7日間使うのは、「7日が最適だから」ではありません。
聞こえない場所を見つける→ 原因を確認する→ 再現する→ 音を追う→ 意味まで追う
という工程を、一つの素材で丁寧に経験するためです。
まず一つの音源を深く練習し、そのあと新しい音源でも同じことができるか試してみましょう。
⑤ 自分の間違いを確認・修正する仕組みがない
シャドーイングは一人でもできる練習ですが、自分のズレを自分で見つけることが難しい場合があります。
「ちゃんとついていけた」と思っていても、録音してみると、
- 単語が抜けている
- 毎回同じところで遅れる
- 強勢やリズムが見本と違う
- 弱くなる語をすべて強く読んでいる
といったことがあります。
ぜひ自分の音声を録音し、見本と聞き比べてみましょう。
ただし、自己チェックだけでは、
「何か違うのは分かる。でも、何が違うのか分からない」
ということもあります。
その場合は、第三者、とくに発音や音声変化、英語のリズムに詳しい講師やコーチからフィードバックを受けることが有効です。
プロのフィードバックの価値は、
どこでつまずいているのか。なぜそうなるのか。次に何を直せばよいのか。
これらの課題を切り分けてもらえることにあります。
練習量を増やす前に、どこを直すべきかを知る。これも、シャドーイングで伸びるための大切なポイントと言えます。
フィードバックのない反復練習が伸び悩む理由は、シャドーイングは意味ない?で詳しく解説しています。
記事内トレーニング ― Part 3形式の音源で1サイクル体験する(約8分)
ここまで読んだら、実際に1サイクル試してみましょう。
使うのは、TOEIC Part 3を想定した短いオリジナルのビジネス会話です。
先ほどの7日間メニューから、
聞く→ 聞こえなかったところを確認する→ 音と文字を結びつける→ 自分でも再現する
という基本の流れを、約8分で体験します。
Practice 1:まずスクリプトを見ずに聞く(約2分)
最初に、スクリプトを見ずに一度聞いてください。
【English】 Woman: Hi, did you get a chance to look at the budget report I sent you?
Man: Not yet, sorry. I’ve been tied up with the client all morning. Can you give me the highlights?
Woman: Sure. We’re about ten percent over on marketing, but sales are up, so it should balance out by the end of the quarter.
【日本語訳】 女性:あのう、送った予算レポートに目を通す時間はありましたか?
男性:いや、まだです、すみません。午前中ずっとクライアント対応に追われていて。要点だけ教えてもらえますか。
女性:もちろん。マーケティング費が10%ほど超過していますが、売上が伸びているので、四半期末までには帳尻が合うはずです。
そのあと、
- did you get a chance
- Can you give me
- should balance out
のあたりを思い出してみてください。
一語ずつ聞こえましたか。それとも、いくつかの単語がまとまって聞こえたでしょうか。
ここでの目的は、文字なら知っているのに、音では認識できなかった場所を見つけることです。
Practice 2:「なぜそう聞こえるのか」を確認する(約2分)
次にスクリプトを見ながら、同じ箇所をもう一度聞きます。
実際の会話では、単語が一語ずつ辞書に載っている形のまま発音されるとは限りません。
たとえば、アメリカ英語の発音なら、次のような音声変化が起こります。
- did you/d/ と /j/ が融合し、/dʒ/ に近い音になります。「ディヂュ」のように聞こえることがあります。
- get a chanceget の /t/ がフラップ [ɾ] になり、a も弱い /ə/ になると、「ゲラ チャンス」に近く聞こえることがあります。
- Can youcan は文中で /kən/ と弱く発音されることがあります。「キャン・ユー」と一語ずつ発音したときとは聞こえ方が変わります。
- balance outbalance の最後の /s/ と out の母音が切れずにつながり、一続きに聞こえます。
「自分はこういう音を予想していた。でも、実際にはこう聞こえる」その違いに気づくことが大切です。
なお、カタカナ表記はあくまで聞こえ方をつかむためのものです。英語の音をそのまま日本語の音に100%置き換えられるわけではありません。
Practice 3:短く聞いて、自分でも再現する(約2分)
今度は、一つのチャンクを聞いたら止め、スクリプトを見ずに繰り返します。
たとえば、
I’ve been tied up / with the client / all morning.
so it should balance out / by the end of the quarter.
のように、意味のまとまりごとに反復します。
単語を一つずつ読むのではなく、
- どこが強いか
- どこが弱いか
- どこまでが一つのまとまりか
を意識して、見本の音の流れをまねしてみましょう。
うまく言えなければ、もう一度聞いて確認します。必要なら録音して、どこで音が抜けたりリズムが崩れたりしたかを見てみてください。
Practice 4:オーバーラッピングする(約2分)
最後はスクリプトを見ながら通常速度の音声と同時に読んでみます。
ここでも大切なのは、すべての単語を同じ強さで読むのではなく、実際の音声の強弱やリズムをそのまままねることです。
英語では、伝えたい情報を持つ内容語が比較的目立ち、文法的な働きをする機能語は弱く短く発音されることがあります。
たとえばこの会話でも、
- BUDget REPORT
- CLIENT
- TEN percent
- MARketing
- SALES
- END of the QUARter
など、情報の中心になる部分が目立って聞こえます。
一方、a、to、can、the、of などは、文脈によって弱く短くなります。
ただし、「内容語は必ず強く、機能語は必ず弱く」と機械的には決まりません。実際の強勢は、話者が何を伝えたいかによって変わります。まずは見本の音声をよく聞き、実際に聞こえた音を見本にするのがポイントです。
ここまでが、全スコア帯で行いたい基本のサイクルです。
余裕があればシャドーイングまで
ここから先は、今の力に合わせます。
600点未満なら、Practice 3・4をもう一度行い、最初に聞こえなかった音が前より聞こえるかを確認します。
600〜780点なら、十分に練習した1〜2文だけシャドーイングしてみましょう。
780点以上なら、会話全体でプロソディ・シャドーイングを行い、余裕があれば内容にも意識を向けます。
最後に、
最初より聞こえる音が増えたか。英語の強弱が分かりやすくなったか。音を追いながら意味も入ってきたか。
を確認してみてください。
この短いサイクルを、一つの音源でもっと丁寧に行うのが、先ほど紹介した7日間メニューです。
まとめ ― TOEICシャドーイングは「スコア帯に合わせて使い分ける」
本記事でお伝えしたかったのは、シャドーイングを「やる・やらない」で考えるのではなく、今の段階に合わせて使い方を変えることです。
スコア帯は、そのための実践上の目安です。
まだ長い音源を追うのが難しければ、ディクテーションやListen & Repeat、オーバーラッピングから始める。
音を追えるようになったら、プロソディ・シャドーイングへ。
さらに余裕が出てきたら、音を追いながら意味まで取るコンテント・シャドーイングへ進みます。
大切なのは、まずは英文の内容を確認した上で
→ 聞こえない場所を見つける→ 文字と実際の音を結びつける→ 音の流れを再現する→ 音を追う→ 音を追いながら意味まで取る
という順番で、一段ずつ負荷を上げていくことです。
シャドーイングの効果を引き出す鍵は、今の自分に合った使い方をすることです。スコア帯を目安に現在地を見極め、必要な練習から一段ずつ進めていきましょう。
シャドーイング一般の手順は正しいやり方、研究で報告されている効果については効果を研究から検証でも詳しく解説しています。
リスニング全体について原因を整理したい方は、英語リスニングが伸びない5つの原因もあわせてご覧ください。
あなたのスコアに合う進め方を診断する
ここまで紹介した手順は、一人でも実践できます。
一方で、独学では判断しにくいことがあります。
それは、
「なぜ、自分はここが聞けないのか」「自分の音のどこがずれているのか」
という原因の切り分けです。
同じ「聞こえない」でも、語彙や意味理解が原因の場合もあれば、知っている単語を音として認識できていない場合、弱形や音のつながり、強勢やリズムが影響している場合もあります。
録音して見本と比べても、
「何か違う。でも、何を直せばいいのか分からない」
ということもあります。
そんなときに、英語の音声を専門的に見られる講師やコーチからフィードバックを受ける意味があります。プロはあなたが
どこでつまずいているのか。なぜそうなるのか。今、何を優先して練習すればよいのか。
を明確にします。
The Pastの無料カウンセリングでは、現在のスコアだけでなく、リスニングのどこで処理が止まっているのかを確認し、今の段階に合った練習方法を提案します。
「シャドーイングを続けているけれど、これで合っているのか分からない」「読めば分かるのに、音になるとなぜか分からない」
という方は、一度現在地を確認してみてください。