TOEIC S&Wは意味ないのか|受けるべき人と受けなくていい人

TOEIC Speaking & Writing Tests(TOEIC S&W)を調べると、「意味ない」という評価が目に入ります。理由は主に3つです。知名度が低い/採点が不透明/受験料が高い。

先に立場を示します。この3つはどれも事実に基づいています。知名度は TOEIC L&R とは桁が違い、素点からスコアへの換算式は公開されておらず、受験料は10,450円(税込)です。ただし、そこから「受ける意味がない」という結論は出ません。意味があるかどうかは試験の属性ではなく、受ける人が誰に何を証明したいかで決まるからです。

採点の分かりにくさについては、Speaking と Writing の両方で満点を取った発信者ですら、公式資料の記述が分かりにくいことを理由にETSの技術レポートを2本読みに行ったと発信しています(Atsueigo「【満点者が語る】TOEIC SW という試験の採点方法に謎が多いので研究してみた」)。読者が抱く疑問は、妥当なものです。

この記事では、3つの理由をIIBC公式の数字で1つずつ検証し、受けるべき人と受けなくていい人を分けます。そのうえで、受けない場合に何をすべきかまで示します。

結論 ― 「意味がない」は試験の属性ではなく、目的とのズレ

先に結論を3つ示します。

  1. 証明したい相手がいるなら、意味があります。 ただし相手は「世間一般」ではありません。社内の英語要件、団体受験を実施している勤務先、実務での役割です。
  2. 相手がいないなら、測定としてだけ意味があります。 自分の話す力・書く力が今どこにあるかを、外部の基準で数値化できます。これは価値がありますが、資格としての価値とは別物です。
  3. 試験対策だけをやるなら、意味がありません。 これがいちばん重要です。「試験対策として意味がない」のではなく、「試験対策だけをやることに意味がない」ということです。

3つ目は、この試験で満点を取った発信者自身が同じ趣旨を述べています。試験のために勉強して満点が出たのではなく、普段から英語で話す・書くを続けていて基礎的な力があったから満点が出た、という主旨です。否定的な見方の出どころにいる人が、同じ結論に立っています。

受けるべきかを目的で分ける図。左が「受ける意味が薄い」、右が「受ける意味がある」で、結論は「S&Wは訓練ではなく、測定のための試験」

「意味ない」と言われる3つの理由を検証する

①知名度が低い ― 事実。ただし見ている相手が違う

まず受験者数を確認します。TOEIC L&R の規模とは桁が違い、知名度が低いという指摘は事実です。

ただし、数字は動いています。2025年度の TOEIC Speaking の受験者は、公開テスト12,207人に対し、団体特別受験制度(IP)が36,727人でした。IPは、企業や大学が所属する社員・学生を対象に随時実施する受験制度です。

IPの推移を3年で並べると、変化がはっきりします。

年度 IP(Speaking) 前年比
2023 23,350人
2024 25,609人 +9.7%
2025 36,727人 +43.4%

1年で43.4%増、2023年度比では57.3%増です。同じ期間の公開テストは11,348人→12,207人(2年で+7.6%)と穏やかで、伸びているのは企業・学校側だとはっきり分かります。2025年度のIP 36,727人の内訳は、企業・団体26,435人/学校10,292人です。

伸びているのは Speaking です。Writing のIPは14,761人→14,158人→15,808人と横ばい寄りで、「S&W全体が伸びている」と言うと不正確になります。

出典は IIBC『2026 DATA & ANALYSIS』(2025年度の受験者数と平均スコア)です。

つまり S&W は、個人が履歴書に書くための資格である以上に、企業・団体が所属者の話す力を測るために使っている試験であり、その用途がいま急に増えています。「一般には知られていない」ことと「誰も見ていない」ことは違います。あなたの勤務先が実施しているなら、それは最も直接的に見ている相手です。

逆に言えば、不特定多数に見せる資格としては弱いという判断は正しい。ここは正直に受け止めるべきです。

②採点が不透明 ― 一部は事実。公式で確認できる範囲を示す

公式が公開しているのは、次までです。

公開されている 公開されていない
設問名(Read a text aloud など)と問題数 素点からスコアへの換算式
設問ごとの解答時間・準備時間 設問ごとの重み付けの具体値
設問ごとの評価基準(発音、文法、内容の妥当性など) 採点者の判断プロセス
設問ごとの採点スケール(0〜3/0〜4/0〜5)

「何を見られるか」は明示されていますが、「何点になるか」の計算は公開されていません。この点で、不透明という指摘は当たっています。

一方で、第三者の解説記事はさらに当てになりません。公式は設問番号を明示していないにもかかわらず、応答問題を「Question 4-6」「Q5-7」「Q7〜Q9」と書き手ごとに違う番号で説明しています。さらに、検索上位の解説の中には、現在は出題されない「解決策を提案する問題」に見出しを割いているものもあります。

採点方法を知りたいなら、公式の「テストの形式と構成」を直接読むのが最短です。設問名・問題数・評価基準・採点スケールが1枚の表になっています。第三者の記事から情報を集めるほど、不透明感は増えます。

③受験料が高い ― 事実。ただし選択肢がある

受験料は次の2通りです。

受験形式 内容 受験料(税込)
TOEIC S&W Speaking(11問・約20分)+ Writing(8問・約60分) 10,450円
TOEIC Speaking Test Speaking のみ(11問・約20分) 6,930円

いずれも2026年8月21日時点のIIBC公式情報です。話す力だけを測りたいなら、単独受験で3,520円安くなります。

「S&Wは1万円を超えるから高い」という指摘は、S&Wセットの話です。目的が「話せるかどうかの確認」なら、そもそもWritingを受ける必要がありません。

TOEIC Speaking 2025年度の受験者内訳。公開テスト12,207人に対し団体特別受験制度(IP)が36,727人、合計48,934人で2年前より41.0%多いことを人型アイコンで示す

数字で確かめる ― この試験は「測定」として機能しているか

「意味ない」がいちばん効いてしまうのは、試験が能力を弁別できていない場合です。全員が似た点数になるなら、受ける意味はありません。そこで、公表されている平均と分布を確認します。

2025年度の公開テストの平均は、Speaking 131.5点(12,207人)/Writing 141.0点(8,770人) でした(IIBC『2026 DATA & ANALYSIS』2026年7月発行)。同じ年度を分けると、社会人が Speaking 133.7/Writing 146.2、学生が Speaking 128.2/Writing 134.5 です。

ETS は CEFR への対応で、Speaking は120点=B1の入口・160点=B2の入口としています(Writing は120点=B1・150点=B2)。この線で2025年度の公開テストを切ると、次のようになります。

B1以上 B2以上
Speaking 75.5%(120点〜) 16.1%(160点〜)
Writing 81.6%(120点〜) 53.4%(150点〜)

(IIBC公表の10点刻みの人数から累計を計算。CEFR対応は ETS「Score User Guide」p.22)

⚠ ETS自身が但し書きを付けています。「これは有識者の推奨であり、ETSは硬直的なカットスコアの使用を推奨しない」。合否の線として使うものではありません。

読み取れることは2つです。

  • 平均(131.5)はB1の中にあり、受験者の4分の3がB1以上に入る。この試験は「英語がまったくできない人」をふるいにかける道具ではありません
  • それでもB2に届くのは Speaking で16.1%。同じ受験者層の Writing は53.4%が届いています。話すほうだけが、はっきり手前で止まっている

つまり、この試験は受験者を弁別できていて、しかも Speaking と Writing で違う結果を出しています。測定として機能していないのなら、この差は出ません。同じ人たちから、書く力と話す力で3倍以上違う到達率が出ているという事実そのものが、この試験が何かを測れている証拠です。

受けるべき人 ― 証明したい相手がいる場合

社内要件・団体受験がある

勤務先がIPを実施している、または昇進・異動の要件にS&Wのスコアがある場合です。この場合、意味があるかどうかを議論する余地はありません。基準がそのまま目標になります。

実務で英語を使う立場を示したい

公式のスコアレンジ別評価で「一般の職場にふさわしい継続的な会話ができる」という水準の記述が与えられるのは、Speaking 160点以上の帯です。2026年7月19日実施回では、160点以上は871人中111人(上位12.7%)でした。

社内で英語を使う役割に手を挙げるとき、この数字は根拠になります。「話せます」という自己申告より、外部基準の数値のほうが通ります。

自分の現在地を数字で把握したい

S&Wの公式認定証には、総合評価とは別に Pronunciation(発音)が3段階、Intonation and Stress(イントネーションとアクセント)が3段階で単独表示されます。

発音とイントネーションが独立した項目として結果に出る試験は、多くありません。「なんとなく通じにくい」を、どの項目の問題なのかまで切り分けたい人にとって、この2項目は使えます。

受けなくていい人 ― 3つの類型

① TOEIC L&Rが600点に届いていない

語彙と文法の土台が薄い状態で産出技能を測っても、出るのは予想どおりの結果です。測定にお金を払う前に、土台を作るほうが先です。

② 証明する相手がいない

誰に見せる予定もなく、ただ「英語力を測ってみたい」だけなら、10,450円は割高です。測定手段は他にもあります。知名度の観点で S&W が弱いという判断は、この場合に限れば正しい。

③ 試験対策だけをやろうとしている

これが本記事の核です。「S&Wの点を上げるために、S&Wの問題形式を練習する」という発想は、測定を訓練と取り違えています。

体重計に毎日乗っても体重は減りません。測定は現在地を教えるだけで、能力を上げるのは別の作業です。設問形式に慣れれば数点は動きますが、それは測定誤差を潰しただけで、話す力が上がったわけではありません。

他の試験と比べてどうか

「S&Wより他の試験のほうがいいのでは」という疑問は、この面でよく出ます。実際、検索上位に残っている Q&A では、回答者が「S&Wを受けるなら TOEFL iBT のほうがいい」と答えています。

比較の軸を「知名度」だけに置くと判断を誤ります。見るべきは3つです。

確認すること
何を測るか 話す力だけか、4技能か。産出技能をどう評価するか
どこで使えるか 社内要件・出願要件・転職での通用度
いくらか 受験料と、受験にかかる時間

たとえば TOEFL iBT は4技能を測り、海外大学院の出願要件として通用します。ただし受験料も所要時間も S&W より大きく、「社内で話せることを示したい」という目的には過剰です。

同じ「話す力を測る試験」でも、測り方が違えば出る数字も、使える場面も変わります。TOEIC と VERSANT がそれぞれ何を測っているのかを試験の設計から比べたい方は、TOEICとVERSANTの違いで、測定対象と使いどころの差を整理しています。

受験の前提そのもの(設問数・試験時間・受験料・日程)を先に押さえたい方は、TOEIC Speakingとは|11問20分の内容・採点・受験料にまとめています。何点を目標に置けばいいのかを分布から決めたい方は、TOEIC S&Wのスコア目安|平均点と分布から目標を決めるで、年度の平均・累計・CEFR対応を1枚に整理しています。

The PAST式 ― 測定と訓練を分ける

受けるかどうかの判断がついたところで、いちばん大事な整理をします。S&Wは測定であって、訓練ではありません。

この区別を外すと、「スコアが伸びない → S&Wの対策が足りない → 問題形式をもっと練習する」という循環に入ります。しかし、スコアが伸びない原因はたいてい設問形式ではありません。

発話の産出は、Levelt (1989) の整理では 概念化(何を言うかを決める)→ 文章化(言語形式に変換する)→ 音声化(音にする) の3段階で進みます。The PAST がスピーキングを3ステップで分解しているのも同じ枠組みです。スコアが止まるのは、この3段階のどこかが詰まっているからです。

そして S&W の評価基準は、この段階と対応する形で累積します。音読問題では発音とイントネーション・アクセントだけが見られ、写真描写問題ではそこに文法・語彙・一貫性が加わり、応答問題以降ではさらに内容の妥当性・完成度が加わります。設問が進むほど、下の段階の弱点が効いてきます。

数字でも確認できます。2026年7月19日実施回で、発音の評価が HIGH だったのは20.0%(871人中174人)、イントネーションとアクセントが HIGH だったのは17.9%(156人)でした。8割はMEDIUM以下です。そして大半が MEDIUM に固まっており、LOW は1割弱にとどまります。

MEDIUMからHIGHへの移動は、受験回数では起きません。音素・強勢・リズムを明示的に扱い、フィードバックを受けて修正する過程が要ります。ここを飛ばして受験を重ねるのが、「意味がない」と感じる状態の正体です。

設問タイプごとに何が点になるのかを、実際に解きながら確かめたい方は、TOEIC S&W対策|完全模試19問・正解音声・解説付きで、本番と同じ時間配分の模試と、採点基準に沿った解説を用意しています。

測定と訓練を分けた比較図。左が体重計のイラストで測定(TOEIC S&W)、右がダンベルのイラストで訓練(日々の練習)、結論は「受けるだけでは伸びない。測ってから鍛える」

記事内トレーニング ― 「測る前に動くか」を確かめる(約7分)

受けるかどうかを決める前に、いま自分の口がどこまで動くかを確認します。7分で終わります。

以下の英文はこの記事用に書き下ろしたオリジナルです(TOEIC公式のサンプル問題とディレクションはETSに著作権があり、複製できません)。

Practice 1:職場での30秒の説明を聞く(約1.5分)

同僚に「プロジェクトの状況を手短に教えて」と聞かれた場面です。まず音声を通して聞き、結論 → 事実 → 意外な発見 → 次の一手という順番を確認してください。

【English】 Sure. We finished the first round of user interviews last week, and we’re now going through the results. The main finding so far is that people get stuck at the sign-up screen, not at checkout, which is the opposite of what we expected. I’ll send you a short summary by Thursday, and if the pattern holds, I’d like to talk about changing the sign-up flow before we start the next sprint.

【日本語訳】 はい。先週、1回目のユーザーインタビューが終わり、いまその結果を確認しているところです。現時点での主な発見は、利用者がつまずいているのは決済画面ではなく登録画面だという点で、これは私たちの予想とは逆でした。木曜までに短いまとめをお送りします。この傾向が変わらなければ、次のスプリントに入る前に登録の流れを変更する件を相談したいと考えています。

Practice 2:スローで音をほどく(約2分)

スロー版音声(0.7倍速)で、次の3か所を確認してください。ここは発音とイントネーションの評価に直結します。

  • get stuck at the sign-up screen … stuck と at がつながり、sign-up に山が来ます
  • the opposite of what we expected … opposite の第1音節に山、of what we が弱く縮みます
  • before we start the next sprint … before we が縮み、next と sprint に強勢が続きます

Practice 3:チャンクで止めて反復する(約2分)

音声が1チャンクを読んだら止め、聞こえたとおりに繰り返します。文字を見ずに、音だけを頼りにしてください。

The main finding so far / is that people get stuck / at the sign-up screen, / not at checkout, / which is the opposite / of what we expected.

再現できなかったチャンクを1つだけ選び、そこだけ3回繰り返します。

Practice 4:自分の仕事に置き換えて30秒話す(約1.5分)

同じ構成で、自分が今かかわっている仕事を説明します。紙に書かず、口だけで行ってください。

  1. いま何が終わったか
  2. 何が分かったか(数字が1つ入れば強い)
  3. 次に何をするか、いつまでに

ここで詰まった場所が、あなたの詰まりです。何を言うか決まらなければ概念化、日本語では言えるのに英語にならなければ文章化、英語は浮かぶのに口が回らなければ音声化です。S&Wを受けても、返ってくるのは同じ診断です。

実践例 ― 受けるかどうかを3つの質問で決める

ここまでを3つの質問にまとめます。順に答えてください。

① 証明したい相手はいるか。 社内要件・IP実施・実務での役割のいずれかに当てはまるなら、受ける。当てはまらないなら、資格としての価値は期待しない。

② TOEIC L&Rは600点を超えているか。 超えていないなら、土台が先。産出技能の測定は、語彙と文法が一定量そろってから意味を持つ。

③ 受けたあと何をするか、決まっているか。 決まっていないなら、まだ受けなくていい。測定は次の行動を決めるための材料で、それ自体が目的にはならない。

3つとも通ったなら、受ける価値があります。Practice 4 で詰まった段階が、受験後に取り組む対象です。

まとめ

  • 「意味ない」と言われる3つの理由は、いずれも事実に基づく。知名度は L&R と桁違い、素点からスコアへの換算式は非公開、受験料は10,450円(Speaking単独は6,930円・2026年8月21日時点)
  • ただし見ている相手は存在し、しかも増えている。2025年度の Speaking は公開12,207人+IP36,727人=48,934人で、2年前より41.0%多いIPだけで1年に43.4%増(Writingは横ばい寄り)
  • 受けるべきなのは、証明したい相手がいる人。Speaking 160点以上は上位16.1%=CEFR B2の入口(2025年度・公開テスト)で、実務水準を示す根拠になる
  • 測定としては機能している。2025年度公開テストの平均は Speaking 131.5/Writing 141.0。同じ受験者でB2到達率が Writing 53.4%・Speaking 16.1%と3倍以上違う=話す力だけが手前で止まることを、この試験は拾えている
  • 受けなくていいのは、L&R 600点未満/証明する相手がいない/試験対策だけをやろうとしている人
  • S&Wは測定であって訓練ではない。発音がHIGHは20.0%、イントネーションとアクセントは17.9%で、8割はMEDIUM以下。ここは受験回数では動かない
  • L&R 900点以上でも Speaking の平均は150.5点(約19年の累計・アンケート回答者)。160点以上に届くのは16.1%(2025年度・公開テスト)。母集団は別だが、どちらから見てもL&Rを上げて届く数字ではない

「意味ない」かどうかは、試験ではなく使い方が決めます。測定として使い、訓練は別に設計する。この分け方をした瞬間に、この試験は使える道具になります。

「結局なぜ話せないのか」が残ったなら

受けるかどうかを決めたあとにも、多くの人に同じ問いが残ります。「結局、自分はなぜ話せないのか」です。

これは感覚の話ではなく、公式データに出ています。IIBC は、TOEIC L&R のスコア帯ごとに TOEIC S&W の平均スコアを集計しています。

🔴 この表だけ、母集団が単年度ではありません。アンケートに回答した Speaking受験者の累計348,302人(公開テスト2007年1月〜2026年3月/IPテスト2008年6月〜2026年3月)が対象で、約19年分の合算です。しかもL&Rのスコアは、本人が申告した「もっとも最近に受験したL&R」の範囲なので、S&Wと同時期に取ったスコアとは限りません。

TOEIC L&R S&W Speaking 平均
900点以上 150.5
800〜895点 131.4
700〜795点 121.1

🔴 L&R 900点以上の層でも、Speaking の平均は150.5点です。Speaking は200点満点で、公式のスコアレンジ別評価が「職場で継続的なやりとりができる」水準として記述するのは160点以上の帯です。L&Rの最上位層の平均が、その手前で止まっています。

実際、160点以上に届いている受験者は多くありません。2025年度の公開テストで Speaking 160点以上だったのは16.1%(12,207人中1,966人)です。L&Rを取り切った層が平均150.5点で、全体の16.1%しか160点に届いていない。この2つの数字が並ぶと、L&Rを上げれば話す点も上がるという発想が成り立たないことが分かります。

しかもこの試験を受けているのは、L&Rを取り切った層です。⚠ ここで母集団がまた累計に戻ります。アンケートに回答した S&W受験者の累計349,926人(公開テスト2007年1月〜2026年3月/IPテスト2008年6月〜2026年3月)でL&R構成を見ると、900点以上が12.1%、800〜895点が21.7%。この約19年の累計で、33.8%がL&R 800点以上です。「L&Rは取れたのに話せない」は、その層の平均値そのものです。

これは努力量の問題ではありません。鍛えてきた回路が受容側に偏っているために起きます。読んで意味が取れる状態と、自分で内容を立ち上げて音にする状態のあいだには、訓練しなければ埋まらない距離があります。

TOEICで高得点を持ちながら話せない状態がなぜ起きるのか、そこから何を鍛え直せばいいのかを構造から知りたい方は、TOEICは高得点なのに話せない人に起きていることで、詰まりの正体と次の一手を解説しています。

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参考情報・出典

  • 公開テスト 平均スコア・スコア分布 一覧(IIBC公式・2026年7月19日実施回のスコア分布および発音・イントネーション分布・2026-08-21確認) https://www.iibc-global.org/toeic/official_data/sw.html
  • ETS「TOEIC® Speaking & Writing Tests Score User Guide (Computer-delivered testing)」p.22(CEFR対応の最低スコア。ETSは硬直的なカットスコアの使用を推奨しないという但し書きつき) https://www.ets.org/toeic/test-takers/speaking-writing/about.html
  • IIBC『2026 DATA & ANALYSIS』(2025年度の受験者数と平均スコア。IP・公開テストの受験者数と平均スコア、2025年度公開テストのスコア分布、およびTOEIC L&Rスコア帯別のTOEIC S&W平均スコア)。L&Rスコア帯別の集計だけ期間と母集団が異なる(公開テスト2007年1月〜2026年3月とIP2008年6月〜2026年3月の累計。いずれもアンケート回答者のみ。Speaking平均の母数は Speaking受験者の累計348,302人、L&R構成比の母数は S&W受験者の累計349,926人L&Rスコアは本人の申告値
  • テストの形式と構成(IIBC公式・設問名/問題数/解答時間/準備時間/評価基準/採点スケール) https://www.iibc-global.org/toeic/test/sw/about/format.html
  • TOEIC Speaking & Writing Tests(IIBC公式・受験料10,450円・2026-08-21確認) https://www.iibc-global.org/toeic/test/sw.html
  • TOEIC Speaking Test(IIBC公式・単独受験の受験料6,930円・2026-08-21確認) https://www.iibc-global.org/toeic/test/speaking.html
  • 公式認定証・デジタル公式認定証の形式(IIBC公式・発音3段階/イントネーションとアクセント3段階の単独表示) https://www.iibc-global.org/toeic/test/sw/guide04/score01.html
  • スコアレンジ別評価一覧表(IIBC公式・Score Range Descriptors) https://www.iibc-global.org/toeic/test/sw/guide04/score01/descriptor.html
  • Atsueigo「【満点者が語る】TOEIC SW という試験の採点方法に謎が多いので研究してみた」(採点方法の分かりにくさおよび「試験のための勉強ではなく普段の運用が土台になる」という主旨の言及。同動画が示す配点表・換算式は非公式であり、本記事では採用していない) https://www.youtube.com/watch?v=8mzFpgjTeOE
  • Levelt, W. J. M. (1989). Speaking: From Intention to Articulation. MIT Press.(発話産出の3段階モデル) https://direct.mit.edu/books/monograph/4300/SpeakingFrom-Intention-to-Articulation