ChatGPTで英作文を練習する手順|生成した英文を「言える」に変える工程

記事の執筆者 メイソン(株式会社The Past 代表 / 椿祐輔)

VERSANT満点(90点)、CEFR C2レベルの英語力を有する。フィリピンの語学学校で10年以上にわたりカリキュラムと教材開発に従事し、述べ5,000人以上の多国籍な英語学習者(日本、中国、台湾、ベトナム、ロシア等)の学習をサポート。言語学と音声学に精通しており、現在は株式会社The Pastの代表取締役、カリキュラム開発者として、グローバルな英語教育を推進している。

ChatGPTに「この日本語を英語にして」と頼むと、きれいな英文が返ってきます。読めば意味は分かります。「なるほど、こう言えばいいのか」と納得もします。

そして翌週、同じ場面で同じことを言おうとして、出てきません。

これは記憶力の問題ではありません。生成した英文を、読んで終わりにしているからです。画面で理解した英文は、口には入っていません。

英作文の練習でChatGPTを使うなら、生成は入口にすぎません。この記事では、生成した英文を「言える」状態まで運ぶ4つの工程を、プロンプト全文つきで示します。

結論:生成で終わると、読める英文が増えるだけ

先に結論を示します。

ChatGPTは英作文の生成には極めて有効です。しかし生成だけを繰り返すと、読めば分かる英文のストックが増えるだけで、話すときに出てくる英文は増えません。

理由は、使われている能力が違うからです。

  • 生成を読む:意味理解の能力を使う。受け取る側の処理
  • 自分で言う:語を選び、並べ、音にする能力を使う。出す側の処理

英語学習でよくある「読めるが言えない」は、この2つを別の能力として扱っていないことから起きます(ビジネス英語の単語は「数」より「チャンク」)。

だから工程はこうなります。日本語を確定する → 生成する → 検証する → チャンクに割って音読する → 日本語から即レスする。 全5工程のうち、生成は2つ目にすぎません。

英作文を言えるに変える5工程。日本語の確定、生成、検証、チャンク音読、日本語から即レス

工程①:日本語を先に確定する

最初にやるのは英語ではありません。言いたいことを日本語で確定させることです。

いきなり英語を作らせると、AIが出した内容に自分の意図を寄せてしまいます。結果として、自分が言いたかったことではない英文を覚えることになります。

【日本語の確定メモ】 場面:定例会議で進捗が遅れていることを報告する 言いたいこと: 1. 予定より2週間遅れている 2. 原因は外部ベンダーの回答待ち 3. 来週中には巻き返せる見込み

ここで場面を書くのが要点です。同じ内容でも、会議・メール・雑談で適切な英語は変わります。場面を渡さないと、AIは無難な書き言葉を返します。

工程②:ChatGPTに出させる

日本語が固まったら、生成させます。そのまま使えるプロンプトです。

あなたは英語のライティング講師です。次の日本語を英語にしてください。 【場面】定例会議での口頭報告(社内・カジュアルすぎない) 【日本語】 1. 予定より2週間遅れている 2. 原因は外部ベンダーの回答待ち 3. 来週中には巻き返せる見込み 【出力ルール】 1. 各項目について、英文を2パターン出す A:短くて口に出しやすい版(1文12語以内) B:ややフォーマルな版 2. 各英文の下に、意味のかたまり(チャンク)で「/」を入れた版を併記する 3. 各英文に、置き換え可能な表現を1つだけ注記する 4. 日本語の直訳になっている箇所があれば指摘する 5. 解説は各項目3行以内。長い説明は不要

ルール1のA/B併記が重要です。学習者が実際に使えるのは、たいていAのほうです。Bだけを出させると、口に出せない英文を覚えることになります。

ルール2のチャンク区切りは工程④のためです。ここで一緒に出させておくと、後の作業が消えます。

工程③:出てきた英文を検証する

生成物をそのまま信用しません。3点だけ確認します。

確認項目 見方
意図が変わっていないか 日本語の確定メモと1対1で照合する。AIが「自然に」した結果、主張が弱まっていないか
自分の口で言えるか 声に出して1回読む。詰まるなら、その英文は今の自分には長い
場面に合っているか 会議で言うには硬すぎないか。メールの文体が混ざっていないか

2つ目が最も重要です。読めても言えない英文は、覚えても出てきません。 詰まったら、AIに「もっと短く、1文8語以内で」と頼み直します。

なお、添削として使う場合の信用度の切り分けはChatGPTの英語添削は信用してよいかで領域別に整理しています。文法・綴りは信用してよく、設問適合や論理は任せない、という切り分けです。

工程④:チャンクに割って音読する

ここからが「言える」に変える工程です。

英文を単語単位ではなく、意味のかたまり(チャンク)で処理します。

We're / about two weeks behind schedule / because we're still waiting / for the vendor's response.

なぜチャンクかというと、話すときに単語を1つずつ組み立てる時間はないからです。3〜5語のかたまりを1つの部品として出せるようにしておくと、組み立ての負荷が下がります。この考え方は読解でも同じで、チャンクリーディングとして整理しています。

音読の手順(1文につき10回)

回数 やり方 目的
1〜3回目 チャンク区切りを見ながら、区切りごとに止めて読む 区切り位置を身体に入れる
4〜6回目 区切りを意識しつつ、止めずに通して読む つながりを作る
7〜10回目 英文を見ずに言う 出す側の処理に切り替える

7回目からが本体です。見ながら読んでいる間は、まだ受け取る側の処理です。見ずに言った瞬間に、初めて出す側の能力を使います。

音声素材がある場合は、スクリプトを見ながら音声に重ねて読むオーバーラッピング、または1チャンクずつ聞いて止めて反復するListen & Repeatを使います。音声を影のように追いかけるシャドーイングは、この段階では認知負荷が高すぎて、音にも意味にも注意が向きません(シャドーイングは意味ない?)。

工程⑤:日本語から即レスする

最後の工程です。日本語を見て、2秒以内に英語を出す。

【即レスの型】 1. 工程①の日本語メモだけを見る(英文は隠す) 2. 1項目につき2秒以内で英語を言う 3. 出てこなかった項目に印をつける 4. 印のついた項目だけ、工程④の音読を5回追加する

2秒という基準に意味があります。会話で許される沈黙はおよそ2秒です。それを超えると相手が話し始めるか、こちらが日本語に戻ります。

この工程を飛ばすと、「音読はしたが会話では出てこない」状態になります。音読は口の準備で、即レスは呼び出しの練習です。別の能力なので、両方要ります。

瞬間英作文との違いを聞かれることがありますが、原理は同じです。違いは素材で、市販教材の例文ではなく自分が実際に言う内容を使う点にあります。設計上の注意は瞬間英作文は効果あるのかで扱っています。

1日15分の配分

1日15分の週の配分例。月水金は新規、火木は即レス、土は総ざらい

毎日この5工程を全部やる必要はありません。新規と復習を分けます。

曜日 やること 時間
月・水・金 工程①〜④(新しい素材を3項目作って音読まで) 各15分
火・木 工程⑤のみ(月水金でやった項目の即レス) 各5分
その週の全項目を即レス。出てこないものだけ音読を追加 15分

新規の日と即レスの日を分ける理由は、作った直後は誰でも言えるからです。1日空けてから呼び出せるかどうかが、実際の定着です。

やってはいけないこと

  • 1回に10項目以上作る:音読と即レスが追いつかず、生成物が溜まるだけになります。1回3項目が上限です
  • 長い英文を採用する:1文12語を超えると、7〜10回目の「見ずに言う」で崩れます。短い版を選んでください
  • 和訳を作って満足する:訳せることと言えることは別です。工程⑤までやらないと呼び出せません
  • 毎回新しい話題にする:素材が毎回変わると、どれも呼び出せるようになりません。同じ場面を2週間使い回して構いません

記事内トレーニング|1項目だけ通してやる

所要3分です。ここで1項目だけ、工程①〜⑤を通してみてください。

Step 1:日本語を1つ決める(30秒)

自分の仕事で、来週英語で言う可能性がある内容を1つ書きます。

場面: 言いたいこと:

Step 2:短い英文を作る(1分)

12語以内で英語にします。AIを使っても、自力でも構いません。

例: – 日本語:予定より2週間遅れている – 英語:We’re about two weeks behind schedule.(7語)

Step 3:チャンクに割って5回音読(1分)

We're / about two weeks behind schedule.

3回は見ながら、2回は見ずに言ってください。

Step 4:日本語だけ見て2秒で言う(30秒)

英文を隠し、「予定より2週間遅れている」だけを見て言います。

出てきましたか。出てこなければ、Step 3の「見ずに言う」回数が足りていません。5回では足りない人が多いので、その場合は10回に増やしてください。

出てくるまでの秒数を測っておくと、次回との比較ができます。

生成した英文を試験対策に流用したい場合、TOEIC形式で何ができて何ができないかはChatGPTでTOEIC対策はできるのか|AI生成問題の限界にまとめています。

まとめ

ChatGPTで英作文を練習するとき、生成は入口にすぎません。

  • 生成だけを繰り返すと、読める英文が増えるだけ。使う能力が違う
  • 工程は5つ:①日本語を確定 ②生成(A/B併記・チャンク区切りつき) ③検証(意図・言えるか・場面) ④チャンク音読10回 ⑤日本語から2秒で即レス
  • 音読の7〜10回目、英文を見ずに言う部分が本体。見ている間は受け取る側の処理
  • 即レスは音読とは別の能力。呼び出しの練習なので、飛ばすと会話で出てこない
  • 1回3項目まで。新規の日と即レスの日を分ける

生成された英文は、そのままでは資料です。チャンクに割って、見ずに言って、日本語から呼び出せて、初めて自分の英語になります。

自分の英文が「使える範囲」に収まっているか不安な方へ

この手順を回していくと、必ずぶつかる問題があります。自分が作れる英文の範囲が、いつまでも広がらないことです。

言える範囲で言い続けると、その範囲は固定されます。広げるには、今の自分より少し上の表現を意図的に入れる必要がありますが、その「少し上」がどこかは自分では判定しにくい。AIに聞いても、基準がないので答えは揺れます。

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FAQ

Q. 英作文の添削として使うのと、何が違いますか?

A. 添削は「書いた英文を直す」工程で、本記事は「直った英文を口に入れる」工程です。添削で終えると、直された英文を読んで納得するところで止まります。添削の信用度については別記事で領域別に整理しています。

Q. 自分で英作文してからAIに直させるのと、最初からAIに作らせるのは、どちらがいいですか?

A. 自分で書いてから直させるほうが残ります。自分で作った時点で、出す側の処理を一度使っているためです。ただし時間がかかるので、量を稼ぎたい日はAI生成から入って構いません。工程④⑤があれば、どちらでも定着します。

Q. 1文12語以内という基準は厳しすぎませんか?

A. 話す用の基準です。書く場合はこの制限は要りません。会話では、長い文は途中で崩れて言い直しになるため、短い文を確実に出せるほうが通じます。

Q. 音読10回は多いと感じます。減らせますか?

A. 減らすなら、7〜10回目の「見ずに言う」を優先して残してください。1〜6回目の「見ながら読む」を減らすほうが、影響は小さくなります。

Q. 発音が正しいか分からないまま音読して大丈夫ですか?

A. 崩れたまま反復すると固定されるため、音声つきの素材を併用してください。AIの音声認識は多少の崩れを文脈で復元するので、判定には使えません。

参考情報・出典

  • チャンク(意味のかたまり)単位での処理が発話の負荷を下げることは、定型表現・formulaic sequences の研究(Wray 2002)の枠組みによる
  • 発話を①概念化②文章化③音声化に分ける整理は、Levelt の発話産出モデル(Speaking: From Intention to Articulation, 1989)による
  • 添削としての使い方はChatGPTの英語添削は信用してよいか、会話練習としての使い方はChatGPTで英会話練習はできるのかで扱っています