ChatGPTの英語添削を信用してよいか|採点基準を埋め込むプロンプトと検証手順

記事の執筆者 メイソン(株式会社The Past 代表 / 椿祐輔)

VERSANT満点(90点)、CEFR C2レベルの英語力を有する。フィリピンの語学学校で10年以上にわたりカリキュラムと教材開発に従事し、述べ5,000人以上の多国籍な英語学習者(日本、中国、台湾、ベトナム、ロシア等)の学習をサポート。言語学と音声学に精通しており、現在は株式会社The Pastの代表取締役、カリキュラム開発者として、グローバルな英語教育を推進している。

英文を書いてChatGPTに「添削して」と投げると、きれいな修正版が返ってきます。文法の誤りは直り、表現も洗練されます。

問題は、その修正が自分にとって必要だったのか判断できないことです。返ってきた英文は確かに自然ですが、なぜ元の文が駄目だったのか、試験なら減点されたのかは分かりません。結果として、直された文をそのまま覚えるだけになります。

さらに厄介なのは、AIが直さなくてよい箇所まで直すことです。「より自然に」と頼めば、元の意図とずれた文が返ってくることもあります。この上書きに気づかないまま提出すると、試験では別の減点を受けます。

この記事では、AI添削を信用してよい範囲を切り分け、採点基準を埋め込んだプロンプトと、返ってきた修正を検証する手順を示します。

結論:「自然にして」ではなく「基準で判定して」と頼む

先に結論を示します。

ChatGPTの添削が使えないのではありません。頼み方が曖昧だから、返ってくる答えも曖昧になるだけです。

「もっと自然にして」と頼むと、AIは自然さを最大化しようとします。その結果、元の文の意図を変えたり、試験では使えない口語表現を混ぜたりします。判定の基準を渡していないので、AIが勝手に基準を決めている状態です。

一方、「IELTS Writing の Task Response と Coherence の観点で、減点される箇所を指摘して」と頼めば、AIは基準に沿って答えます。基準を渡せば、判定は再現します。

AI添削の信用度を領域別に示した表。文法・綴りは高い、設問適合・論理は低い

AI添削が得意なこと・苦手なこと

領域 信用度 理由
文法の誤り(時制・冠詞・一致) 高い 規則が明確で、判定に文脈依存が少ない
綴り・語形 高い 同上
collocation(語の相性) 頻度は反映するが、分野固有の慣用には弱い
語順・情報構造 自然さは判定できるが、なぜ不自然かの説明が浅くなりがち
設問要求への適合 低い 設問を渡さない限り判定できない。渡しても解釈がぶれる
論理の一貫性 低い 部分的な修正で全体の筋を壊すことがある

上から2つは、そのまま信用してよい領域です。 逆に下2つは、AIに任せきると試験で減点されます。

「文法は合っているのに点が伸びない」という状態は、下2つが原因であることが多い。AIが直せない領域だから残っている、とも言えます。

採点基準を埋め込むプロンプト

そのままコピーして使えます。冒頭の基準部分を、自分が受ける試験に差し替えてください。

あなたは英語試験の採点者です。以下の英文を、次の4基準で評価してください。 【採点基準】 1. Task Response(設問要求に答えているか/論点の過不足) 2. Coherence and Cohesion(論理の流れ/接続の自然さ) 3. Lexical Resource(語彙の適切さ・幅) 4. Grammatical Range and Accuracy(文法の正確さと多様性) 【出力形式】 各基準について、次の3点を出してください。 – 該当箇所(原文から引用) – なぜ減点対象か(基準のどの観点に照らして) – 修正案(元の意図を変えないこと) 最後に、修正版の全文を1つだけ提示してください。 **元の文で問題のない箇所は、変更しないでください。** 【設問】 [ここに設問文] 【英文】 [ここに自分の英文]

このプロンプトが効く理由

「元の文で問題のない箇所は変更しない」を明示している。 これを入れないと、AIは全体を書き直します。書き直された文は自然ですが、どこが自分の弱点だったのかが消えます。

「原文から引用」を求めている。 引用させると、指摘が具体的な箇所に紐づきます。「全体的に不自然です」のような使えない答えが返らなくなります。

「なぜ減点対象か」を基準に紐づけている。 理由が基準に対応していれば、次回同じ誤りを避けられます。修正版だけ受け取っても、次に活きません。

返ってきた添削を検証する3つの観点

AIの指摘をそのまま受け入れないでください。次の3つで検証します。

AI添削の結果を検証する3観点。意図が変わっていないか、直しすぎていないか、試験で使える表現か

① 意図が変わっていないか

最も多い事故がこれです。「より自然に」した結果、主張が弱まることがあります。

例:I disagree with this idea.I would argue that there might be some concerns.

後者は自然な英語ですが、立場が曖昧になっています。 IELTSのTask Responseでは、立場が不明確なことが減点対象です。自然さを取って基準を落とす、という取り違えが起きています。

② 直さなくてよい箇所まで直していないか

AIは「変更しないで」と指示しても、しばしば全体を整えます。元の文と修正版を並べて、変更点を数えてください。 5文の英文で修正が20箇所あるなら、それは添削ではなく書き直しです。

書き直された文からは学べません。自分が何を間違えたかが埋もれるためです。

③ 試験で使える表現か

AIは口語表現を混ぜます。会話では自然でも、アカデミックライティングでは不適切なものがあります(a lot of stuff kind of など)。

用途を明示していない限り、AIは用途を推測します。 プロンプトに「アカデミックライティング用」と書いていなければ、この事故は起きます。

記事内トレーニング|検証を1回やってみる

次の英文とAI修正版を見比べて、受け入れてよい修正と、拒否すべき修正を分けてください(2分)。

【元の英文】 I think online education is better than traditional classes because students can study at their own pace and it is cheaper. 【AIの修正版】 It could be argued that online education may offer certain advantages over traditional classroom settings, as learners are afforded the flexibility to progress at their individual pace, and the associated costs tend to be comparatively lower.

受け入れてよいstudents can study at their own pacelearners are afforded the flexibility to progress at their individual pace(語彙の幅が広がっている)

拒否すべきI think ... is betterIt could be argued that ... may offer certain advantages

元の文は「オンライン教育のほうが良い」と明確に主張しています。修正版は「そう論じることもできるかもしれない」と後退しています。Task Response では立場の明確さが評価対象なので、この修正は点を下げます。

自然さと得点は、一致しないことがあります。

同じ考え方をTOEICの問題づくりに持ち込むと、どこまで通用してどこで崩れるかはChatGPTでTOEIC対策はできるのか|AI生成問題の限界にまとめています。

まとめ

ChatGPTの英語添削を信用してよいか。答えは「領域による」です。

  • 文法・綴り:そのまま信用してよい
  • 語彙・語順:参考にしてよいが、用途を明示する
  • 設問適合・論理:AIに任せない。基準を渡し、返ってきた指摘を検証する

そして、頼み方を変えるだけで結果は変わります。「自然にして」ではなく「基準で判定して」。「全部直して」ではなく「問題のない箇所は変えないで」。

添削を受けた英文は、そこで終わりにせず声に出して10回読んでください。 書いて直しただけでは、話すときには出てきません(ChatGPTで英会話練習はできるのか)。

自分の英文の弱点が、どの基準に当たるか知りたい方へ

AI添削で難しいのは、指摘の取捨選択です。返ってきた修正のうち、どれが自分にとって重要で、どれが無視してよいかは、基準を理解していないと判断できません。

すべて受け入れると、自分の書き方が消えます。すべて拒否すると、直りません。

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FAQ

Q. ChatGPTの添削は、人間の添削の代わりになりますか?

A. 文法・綴りの領域では代わりになります。設問適合や論理の一貫性では、まだ差があります。特に「なぜこの構成では読み手が納得しないか」という判断は、基準を渡しても揺れます。

Q. 無料版でも添削の精度は十分ですか?

A. 文法・綴りの指摘であれば十分です。基準に沿った判定を求める場合は、モデルの推論能力が効くため差が出ます。ただし本記事のプロンプト設計を守るほうが、モデルを上げるより効果が大きい場面が多いです。

Q. 添削結果を丸暗記してもいいですか?

A. 勧めません。修正版を覚えても、次に別の設問が来ると応用できないためです。なぜ減点だったかを基準に紐づけて覚えるほうが、次に活きます。

Q. IELTS以外の試験でも同じプロンプトが使えますか?

A. 【採点基準】の4項目を、その試験の基準に差し替えれば使えます。基準が公開されていない試験の場合は、「設問要求への適合/論理/語彙/文法」の4分類で代用してください。

参考情報・出典

  • IELTS Writing の評価4基準(Task Response / Coherence and Cohesion / Lexical Resource / Grammatical Range and Accuracy)は公式の公開基準に基づく
  • 詳細は IELTSライティングのテンプレート集 でも扱っています