英語リスニングアプリの選び方|「自分の弱点の層」で選ぶおすすめと、伸びない人の共通点
記事の執筆者 メイソン(株式会社The Past 代表 / 椿祐輔) VERSANT満点(90点)、CEFR C2レベル。フィリピンの語学学校で10年以上カリキュラム・教材開発に従事し、延べ5,000人以上の学習を支援。言語学・音声学に精通し、現在は株式会社The Pastでビジネスパーソン向けの英語コーチングを提供している。
「リスニングアプリを入れてみたが、結局どれが自分に合うのか分からないまま、なんとなく続かなくなった」
アプリ選びでよくある失敗です。結論から言います。リスニングアプリは、人気ランキングで選んではいけません。自分が「どこで詰まっているか」で選びます。
リスニングは「音声知覚・意味理解・情報保持」の3つの層でできています。アプリは、このどれかの層を鍛えるための道具です。自分が詰まっている層に合わないアプリをいくら使っても、伸びません。この記事では、アプリを層で分類し、自分に合う選び方を示します。
結論:アプリを選ぶ前に「自分の詰まり層」を特定する
やるべき順番は、アプリ選び → 使う、ではありません。詰まり層の特定 → 層に合うアプリ → 使うです。
リスニングの3層を、症状で確認します。
- 「音は流れるのに、文字にできない」 → ①音声知覚
- 「単語は拾えるのに、文の意味が追えない」 → ②意味理解
- 「短い文は分かるのに、長い話になると脱落する」 → ③情報保持

最も当てはまる層が、いま鍛えるべき場所です。診断のしかたは「英語リスニングの勉強法」で詳しく解説しています。アプリは、その層に効くものを選びます。
自己診断は30秒で終わります。 英語の音声を1分聞いて、次のどれに当てはまるか選んでください。
- スクリプトを見たら「なんだ、知っている単語じゃないか」と思う → ① 音声知覚
- 単語は拾えるのに、話の中身が頭に入ってこない → ② 意味理解
- 短い会話は分かるが、長い話の後半で脱落する → ③ 情報保持
複数当てはまる場合は、番号の小さいほうからです。①が弱いまま②③を鍛えても、土台が抜けたままになります。
【層別】タイプで選ぶおすすめリスニングアプリ
層ごとに、向いているアプリのタイプを示します。個別のアプリ名より先に、機能で絞ってください。 アプリは入れ替わりますが、層と機能の対応は変わりません。
| 詰まり層 | 必須の機能 | あると良い機能 | 不要な機能 |
|---|---|---|---|
| ① 音声知覚 | ディクテーション入力・0.5〜0.8倍速 | 音声変化の解説・部分リピート | 長尺コンテンツ |
| ② 意味理解 | 英語字幕の表示/非表示切替・和訳 | 1文単位のシーク・語彙保存 | ディクテーション |
| ③ 情報保持 | 5分以上の連続音声・速度調整 | 章立て・ブックマーク | 1文単位の機能 |
「字幕が常時表示で消せない」アプリは②の練習になりません。消せるかどうかが分かれ目です。同様に、①の人が長尺アプリを入れても、処理が追いつかず消化不良になります。
なお料金や最新機能は変わるため、最終的には各公式サイトで確認してください。

①音声知覚で詰まる人|ディクテーション系+スロー再生
音は流れるのに文字にできない人は、聞こえた音を書き取るディクテーションが最も効きます。書けなかった箇所が、そのまま聞き取れていない音だからです。
-
ディクトレ:ディクテーションに特化。音声知覚の弱点を炙り出すのに向きます。
-
スタディサプリENGLISH/abceed:ディクテーション機能を備え、TOEICなどの教材で取り組めます。
速度を落とせる機能があるものを選び、まずゆっくりで聞き取れる音を増やしてください。
進め方:0.7倍速で書き取り → 答え合わせ → 書けなかった箇所だけ通常速度で再確認、を1日10分。書き取れない箇所は「知らない単語」ではなく「音として結びついていない既知語」であることが大半です。
次の層へ移る目安:0.7倍速で8割書き取れるようになったら、通常速度に上げます。通常速度で8割に届いたら、①は卒業です。
②意味理解で詰まる人|字幕付き動画系・精聴
単語は拾えるのに意味が追えない人は、字幕で意味を確認しながら、英語の語順のまま処理する練習が向いています。
- VoiceTube:動画に英語字幕・和訳が付き、1文ずつ確認できます。聞く→意味を取る→確認のループを回せます。
字幕は「答え合わせ」に使い、まず音だけで聞くのが原則です。
進め方:字幕オフで1回 → 英語字幕で確認 → もう一度字幕オフ、の3周。和訳は最後の手段にしてください。先に和訳を見ると、英語の語順で処理する練習になりません。
次の層へ移る目安:1〜2分の素材を字幕なしで大意が取れるようになったら、素材を長くします。
③情報保持で詰まる人|長尺多聴系
短文は分かるのに長い話で脱落する人は、長めの音声を、文脈を保持しながら聞く訓練が必要です。
- Audible(オーディオブック)/TED:まとまった長さの英語を聞けます。速度調整で負荷を抑えながら、最後まで内容を追う力を鍛えます。
中級以上向けです。初心者がいきなり長尺に挑むと脱落するので、短い素材から始めてください。
進め方:聞き終わったあとに、内容を3文で要約する。これができないなら、聞けていても保持できていません。メモを取りながら聞くのも有効です(英語の要約のやり方)。
負荷の上げ方:3分 → 5分 → 10分と、要約できる範囲を保ったまま伸ばします。長さを先に上げると、ただ流しているだけになります。
迷う人・初心者|包括型+スロー機能
自分の層がまだ分からない人や初心者は、広く触れられる包括型から始め、どこでつまずくかを探ります。
- スタディサプリENGLISH/レシピー:講義・ディクテ・多聴などを一通り試せます。
初心者は、再生速度を落とせる機能が必須です(理由は「英語リスニングは「ゆっくり」から始める」で解説)。
これは別軸|発音・シャドーイング・ニュースのアプリ
リスニングと混同されやすいアプリは、目的が違います。
- 発音アプリ(ELSA など):発音は音声知覚の土台になりますが、リスニングそのものとは別軸です。選び方は発音アプリの記事に譲ります。
- シャドーイングアプリ(シャドテン など):シャドーイングは、初中級者が最初の主軸にする練習ではありません(音をまだ処理できない段階では空回りしやすい)。上級者が発話の精度を確認するのには有効です。立場の詳細は「シャドーイングは意味ない?」をご覧ください。
- 英語ニュース(BBC Learning English・LissN など):情報保持の層を鍛える素材のひとつです。媒体ごとの使い分けはニュースの記事で扱います。
アプリで伸びない人の共通点
アプリを入れても伸びない人には、共通点があります。
- 自分の詰まり層に合わないアプリを使っている:多聴が必要なのにディクテばかり、など。診断なしで選ぶと起きます。
- 聞き流してBGMにしている:注意が英語に向かず、音が雑音として流れていきます。
- レベルが合っていない:難しすぎる音源は「意味のない音」、簡単すぎる音源は伸びません。
- 基礎の語彙・文法が不足している:スクリプトを読んでも分からない場合は、リスニング以前の問題です。
- 強制力がなく続かない:アプリ単体では習慣化が難しく、三日坊主になりがちです。
この5つのうち、最も多いのは1と2です。
1が起きる理由は、アプリのレビューやランキングが「良いアプリか」で書かれていて、「誰に効くか」で書かれていないからです。評価の高いディクテーションアプリを情報保持で詰まっている人が使っても、伸びません。悪いアプリだからではなく、課題と道具がずれているだけです。
2が起きる理由は、アプリが「再生できてしまう」ことにあります。紙の教材と違い、聞き流しても手が止まりません。注意が向いていない状態で流れた音は、処理されずに消えます。The Past が聞き流しを主軸に置かない理由もここにあります(英語の聞き流しは効果ある?)。
つまり、アプリは手段にすぎません。効かせるには「診断」と「正しい使い方」が必要です。
アプリを「効かせる」使い方
どのアプリでも、効果を出す原則は同じです。
- 聞き流さず、必ず「聞き取ろう」として聞く — 注意を向けていない音は処理されません。ながら聞きは復習にはなっても、新しく聞ける音は増えません
- 聞いた後、スクリプトで答え合わせをする — 答え合わせのない聴取は、間違ったまま定着します。聞けなかった箇所を特定して初めて練習になります
- 自分のレベルに合った素材を選ぶ — 目安は「スクリプトを読めば8割わかる」音源です。読んでも分からないなら語彙・文法が先、読めば全部わかるなら易しすぎます
- 1日10分でも、毎日続ける — 週末に60分より、平日10分×5のほうが効きます。音の処理は反復頻度で自動化されるためです
やってはいけない使い方が2つあります。ひとつは、複数のアプリを同時に入れること。層が分散して、どれも中途半端になります。もうひとつは、スコアやランクを目的にすること。アプリ内の指標が伸びても、実際の聞き取りが伸びているとは限りません。判断は「同じ素材を1週間前より聞き取れるか」で行ってください。
本格的な訓練の組み立ては「英語リスニングの勉強法」、聞く瞬間の即効テクは「英語リスニングのコツ」で解説しています。
まとめ|アプリは「層」で選ぶ
- アプリは人気順ではなく、自分が詰まっている層で選ぶ
- 診断(どの層か)が先、アプリ選びは後
- 音声知覚=ディクテ系/意味理解=字幕動画系/情報保持=長尺多聴系
- アプリは手段。土台は学習法で作る
「どれが人気か」ではなく「自分のどこを鍛えるか」。これが、アプリ選びで失敗しない唯一の基準です。
※ 本記事に掲載したアプリ名・画面・ロゴは、各社の商標および著作物です。画面は紹介・比較を目的に各公式サイト等から引用しています。
どのアプリを・どう使えば自分に効くか迷う方へ
アプリ選びでつまずくのは、「自分がどの層で詰まっているか」を自分では判断しにくいからです。
The Past の無料eBook『シャドーイングを今すぐ捨てよ』(LINE登録)では、効かない練習に時間を使わないための学習法を構造で解説します。アプリを入れては続かない、を繰り返している方に向いています。