英語の交渉フレーズ集|譲歩・条件提示・合意形成の実用表現

英語での交渉を控えて、この記事にたどり着いた方へ。この記事には、交渉の5つの場面――切り出し・条件提示・譲歩・難色と保留・合意形成――で使える26のフレーズが、すべて日本語訳つきで整理してあります。まずはそれを持ち帰ってください。

ただし、この記事の本題はその先にあります。多くの人が、交渉フレーズを覚えたのに、いざ交渉になると言葉が出てきません。会議での発言はある程度できる。それなのに、相手から値下げを要求された瞬間、切り返しが出てこない。曖昧に頷いてしまい、持ち帰ってから「なぜあの場で条件を付けなかったのか」と後悔する。この詰まりの原因は、フレーズの暗記量ではありません。

結論を先に言えば、交渉の英語は3つの型に還元できます。そして、言葉が出てこない本当の原因は、フレーズ不足ではなく、交渉の前に「何を譲れて、何を譲れないか」を言語化していないことにあります。この記事では、フレーズ集に加えて、この構造と、フレーズを本番で口から出すための練習手順まで扱います。

結論 ― 交渉英語は「フレーズの暗記量」ではなく「3つの型」で決まる

最初に結論を述べます。この記事の26フレーズの大半は、次の3つの型に還元できます。

  1. 条件提示の型 ― 提案や希望は、条件文の形で「見返りとセット」にして出す
  2. If we increased the order, could you offer a better price?(仮に発注量を増やしたら、価格を見直していただけますか)
  3. 条件付き譲歩の型 ― 譲るときは、必ず条件とセットで譲る。無条件の譲歩はしない
  4. If you could extend the deadline, we could accept the current price.(納期を延ばしていただけるなら、現行価格をお受けできます)
  5. 合意形成の型 ― 合意は「要約による確認」で固めてから、書面化につなぐ
  6. So, just to confirm: 500 units, with a five percent discount.(確認ですが、500個で5%割引、ということですね)

60個のフレーズを暗記する必要はありません。この3つの骨組みを覚え、案件に応じて中身を差し替えれば、交渉の大半の発話はカバーできます。

ただし、型には前提があります。交渉の前に、目的・譲れない条件・譲れる条件・落としどころを言語化しておくことです。ここが空のままだと、どれだけフレーズを覚えても、口に出す中身が決まらないので言葉は出ません。なぜそう言い切れるのか。次の章で、発話の仕組みから説明します。

「交渉英語は3つの型で決まる」の3ステップ図解。01条件提示の型「If we increased the order, could you offer a better price?」、02条件付き譲歩の型「If you could extend the deadline, we could accept the current price.」、03合意形成の型「So, just to confirm: 500 units, with a five percent discount.」、下部に「60個ではなく、3つの骨組みを覚える」

なぜ交渉になると英語が出てこないのか ― 発話の3ステップで分解する

まず理解したいのは、英語を話すという行為が、1つの能力ではないことです。発話は3つの処理の連鎖でできています。心理言語学者 Levelt が1989年の著書『Speaking: From Intention to Articulation』で示した発話産出モデルに準拠して、The Past ではこれを次の3ステップで捉えます。

  • 概念化 … 何を言うかを頭の中で決める
  • 文章化 … 決めた内容を、語彙と文法で英文に組み立てる
  • 音声化 … 組み立てた英文を、発音・リズムをつけて声に出す

この3つは鎖のようにつながっています。出発点の概念化が空だと、文章化・音声化はそもそも始まりません。

言葉が出ない正体は「概念化の空白」

会議での一般的な発言と、交渉の発言には、決定的な違いがあります。交渉の発言には「何を譲れるか」という判断が含まれることです。

「価格を下げてほしい」と言われたとします。返答するには、その場で「値下げに応じられるのか。応じるなら何と引き換えか。応じないなら代わりに何を出すのか」を決めなければなりません。この判断は、英語力の問題ではなく、概念化の問題です。そして、その場で考えるには重すぎる判断です。

だから、交渉で言葉に詰まる人の多くは、フレーズを知らないのではありません。譲歩ラインを事前に言語化していないため、概念化が空白のまま英語を組み立てようとして、止まっているのです。

対処はシンプルです。交渉の前に、次の4点を日本語で書き出しておきます。

  • 今日の交渉の目的(何が決まれば成功か)
  • 譲れない条件(動かせないライン)
  • 譲れる条件(引き換えに出せるカード)
  • 落としどころ(相手が譲らなかった場合の着地点)

日本語で構いません。概念化さえ済んでいれば、本番の頭の容量を文章化と音声化に回せます。逆に言えば、この4点を持たずに交渉に入ることは、フレーズを何個覚えていても、丸腰で入ることと同じです。

フレーズは「骨組み+スロット」で呼び出す

では、文章化の側はどう鍛えるか。ここで交渉フレーズ集の正しい使い方が決まります。

流暢に話せる人は、文法規則から毎回文を組み立てているわけではありません。Pawley と Syder が1983年の論文で論じたように、母語話者の自然で途切れない発話は、記憶済みの「文の骨組み」(定型表現)を呼び出し、必要な部分だけ差し替えることに支えられていると示唆されています。

つまり、交渉フレーズは「読んで覚える例文」ではなく、「骨組み+差し替えスロット」として持つべき部品です。

If you could [extend the deadline], we could [accept the current price]. ([納期を延ばして] いただけるなら、[現行価格をお受け] できます)

太字部分がスロットです。ここに自分の案件の語を差し込めば、1つの骨組みが何十通りもの譲歩案になります。

もう1つ、交渉フレーズに could / would が多い理由にも構造があります。英語は、時制を過去にずらすことで「現実との距離」を作り、その距離が丁寧さ・間接性になる言語です。We can agree(同意できる)より We could agree(条件次第では同意できる)の方が、断定を避けた交渉向きの距離感になります。この距離感の使い分けは英語の依頼表現マトリクスで体系的に解説しています。

「言葉が出ない正体は概念化の空白」の課題→解決図解。課題は概念化が空白のまま止まる・何と引き換えかを決められない・フレーズを知っていても使い所が決まらないの3点、解決は目的・譲れない条件・譲れる条件・落としどころを日本語で言語化する等の3点、下部に「概念化が空白のまま、止まっている」

場面別 英語交渉フレーズ集26選(日本語訳つき)

ここから、交渉の進行順にフレーズを並べます。各場面の冒頭に「その場面の型」を示すので、フレーズはその型の具体例として読んでください。

① 交渉を切り出す・論点を共有する(4フレーズ)

この場面の型:本題に入る前に、今日決めたいことと自社の関心を明示する。

  • There are two things we’d like to discuss today: the price and the delivery schedule. (本日ご相談したいことが2点あります。価格と納期です)
  • Before we go into the details, could we confirm what we both want to achieve today? (詳細に入る前に、本日お互いに何を達成したいかを確認させてください)
  • Our main concern is the timeline. (弊社が最も重視しているのはスケジュールです)
  • We see this as a long-term partnership, not a one-off deal. (私たちはこれを単発の取引ではなく、長期的なパートナーシップと考えています)

論点を先に共有するのは、儀礼ではなく実利です。自分の概念化(今日の目的)を相手と揃えることで、以降の条件提示が噛み合います。

② 条件を提示する・提案する(6フレーズ)

この場面の型:希望は Ideally / prefer で「希望」として出し、打診は Would you be open to…? で相手の可動域を探る。

  • We’d like to propose the following terms. (以下の条件をご提案したいと思います)
  • Ideally, we’d like the delivery by the end of March. (理想としては、3月末までの納品を希望します)
  • We would prefer a two-year contract. (弊社としては2年契約が望ましいと考えています)
  • Would you be open to a volume discount? (数量割引をご検討いただく余地はありますか)
  • What did you have in mind regarding the payment terms? (支払条件については、どのようにお考えですか)
  • Could you walk us through the pricing structure? (価格の内訳についてご説明いただけますか)

Ideally を文頭に置くと、「これは要求ではなく希望であり、交渉の余地がある」という信号になります。逆に、絶対条件を Ideally で出してはいけません。譲れない条件は This is a firm requirement for us.(これは弊社として動かせない条件です)と、希望と区別して伝えます。

③ 譲歩する ― 必ず条件とセットで(6フレーズ)

この場面の型:譲歩は単独で出さない。If / provided that で「相手の譲歩」と交換する。

  • If you could extend the deadline, we could accept the current price. (納期を延ばしていただけるなら、現行価格をお受けできます)
  • We could agree to that, provided that the delivery date is guaranteed. (納期が保証されるのであれば、その条件に同意できます)
  • We’re willing to meet you halfway on this. (この点については、歩み寄る用意があります)
  • Suppose we increased the order volume ― could you offer a better price? (仮に発注量を増やした場合、価格を見直していただけますか)
  • That’s not something we can move on, but we do have flexibility on the schedule. (そこは動かせませんが、スケジュールには柔軟に対応できます)
  • As a compromise, how about splitting the shipping costs? (妥協案として、送料を折半するのはいかがでしょうか)

6つのうち4つに if / provided that / suppose の条件表現が入っていることに注目してください。これが冒頭で述べた「条件付き譲歩の型」です。5つ目のフレーズのように、譲れない点(not something we can move on)と譲れる点(flexibility on the schedule)をセットで出すのも、同じ型の変形です。

④ 難色を示す・保留する・断る(5フレーズ)

この場面の型:難色・保留・断りは別の行為として、言葉で区別して伝える。

  • I’m afraid we can’t accept those terms as they are. (恐れ入りますが、その条件のままではお受けできません)
  • That would be difficult for us, to be honest. (率直に申し上げて、それは弊社には難しい条件です)
  • We’re not in a position to decide that today. (本日その決定を下せる立場にありません)
  • Could we get back to you on that by Friday? (その点については、金曜日までにご回答する形でもよろしいでしょうか)
  • Let me take this back to my team and discuss it internally. (この件は一度持ち帰り、社内で検討させてください)

as they are(そのままでは)という語尾は重要です。「現状の条件では No だが、条件が変われば交渉の余地がある」という信号になり、断りを次の条件提示につなげられます。

⑤ 合意を形成する・確認する(5フレーズ)

この場面の型:合意は「要約→確認→書面化の予告」の3点で固める。

  • Let me summarize what we’ve agreed on so far. (ここまでの合意事項を整理させてください)
  • So, just to confirm: the price stays the same, and the deadline moves to April 10th. (確認ですが、価格は据え置き、納期は4月10日に変更、ということですね)
  • Are we on the same page? (この内容で認識は一致していますか)
  • We have a deal. (それで合意です)
  • We’ll put this in writing and send it over by tomorrow. (この内容を書面にして、明日までにお送りします)

合意形成は「雰囲気がまとまったら終わり」ではありません。数字と期日を要約して読み上げ、相手の Yes を取り、書面化を予告する。ここまでが1セットです。書面化の実務は英語の議事録の書き方で扱っています。

日本人がやりがちな3つの失敗

フレーズを手に入れても、使い方を誤ると交渉は崩れます。日本人ビジネスパーソンに典型的な失敗を、「なぜダメか」と「必要な型」のセットで解剖します。

① 無条件で譲歩してしまう

場の空気をまとめようとして、見返りなしに「分かりました、値下げします」と応じてしまう失敗です。

なぜダメか。無条件の譲歩は、相手に「押せばまだ下がる」という学習をさせるからです。譲歩のたびに交渉の基準線が下がり、次の要求を呼び込みます。誠意を見せたつもりが、構造的には逆の信号を送っています。

必要なのは条件付き譲歩の型です。譲る内容そのものは同じでも、If you could increase the order, we could lower the price.(発注量を増やしていただけるなら、値下げできます)と条件文に載せるだけで、譲歩は「後退」ではなく「交換」になります。

② 難色を伝えたつもりが、伝わらない

難しい要求に対し、沈黙や曖昧な笑顔、あるいは It might be difficult…(難しいかもしれません…)という弱い表現で不同意を示したつもりになる失敗です。

なぜダメか。日本語の商習慣では「難しいですね」は事実上の断りとして通じますが、英語の交渉では、明確な No が出ない限り「まだ交渉中」と解釈されるのが自然だからです。伝えたつもりの難色は、相手には届いていません。

必要なのは、難色・保留・断りを言葉で区別する型です。難しいが交渉余地はあるなら That would be difficult for us(弊社には難しい条件です)、決められないなら We’re not in a position to decide that today(本日は決定できません)、断るなら I’m afraid we can’t accept those terms as they are(そのままではお受けできません)。曖昧さを残したいときほど、行為そのものは明確な言葉に載せる必要があります。

③ 口頭合意のまま交渉を終える

話がまとまった安堵感で、要約確認と書面化の予告を飛ばして交渉を締めてしまう失敗です。

なぜダメか。口頭の合意は、双方が「自分に都合のよい解釈」を持ち帰るからです。後日「言った・言わない」になった時点で、合意そのものが崩れます。

必要なのは合意形成の3点セットです。Let me summarize(要約)→ Are we on the same page?(確認)→ We’ll put this in writing(書面化の予告)。この1分の手続きが、交渉の成果を確定させます。

The PAST式 ― 交渉フレーズを「使える状態」にする覚え方

ここまでで、フレーズと型は揃いました。残る問題は、それを本番で口から出す方法です。The Past では、発話の3ステップに対応させて、次の3つで準備します。

第一に、概念化の準備。 案件ごとに、目的・譲れない条件・譲れる条件・落としどころの4点を日本語で書き出します。フレーズの暗記より先に、これをやってください。概念化が埋まっていれば、本番で使う英語は3つの型に収まります。

第二に、フレーズの部品化。 26フレーズを1語ずつ暗記するのではなく、意味のかたまり(チャンク)のまま覚えます。If you could ― / we could ― / provided that ― / just to confirm ― という骨組みを固定し、スロットに自分の案件の語(納期・数量・価格・仕様)を差し込む練習をします。かたまりで覚えると記憶の負担が下がり、呼び出しも速くなります。チャンク単位の覚え方はビジネス英語の単語は「数」より「チャンク」で詳しく解説しています。

第三に、音声化とセットにする。 黙読で作れるのは「知っている」状態までです。「出てくる」状態は、音声を聞き、声に出す練習でしか作れません。具体的な手順を、このまま次のトレーニングで体験してください。

「交渉フレーズを使える状態にする」の3ステップ図解。01概念化の準備(目的・譲れない条件・譲れる条件・落としどころ)、02フレーズの部品化(26フレーズをチャンクのまま覚え骨組みのスロットに差し込む)、03音声化とセット、下部に「知っているで終わらせず、出てくるまで仕上げる」

記事内トレーニング ― 条件付き譲歩を口から出す(約8分)

ここまで読んだ「型」を、約8分で身体に落とし込みます。題材は、海外サプライヤーとの価格・数量のミニ交渉(A=買い手、B=売り手)です。各Practiceの冒頭に「いまどの能力を鍛えているか」を1行で示します。

Practice 1:まず聞く(約1.5分)

鍛える能力:音声知覚 ― 商談スピードの英語をどれだけ正確に捉えられるか。

下のスクリプトと日本語訳はまだ見ないでください。音声を通常速度で一度通して聞き、「AとBは、何を、どんな条件で合意したか」を答えられるか試します。聞き取れなかった箇所が「音の問題」なのか「意味の問題」なのかも意識してください。

Practice 2:スローで確認し、答え合わせする(約2分)

鍛える能力:音声知覚と意味理解 ― つながる音をほどき、内容を確定する。

上のスロー版(0.7倍速)で、than we(ザンウィ)、offer a(オファラ)のようなつながる音に注目して聞き直します。次にもう一度 Practice 1 の通常速度に戻し、聞こえ方が変わるか確かめてください。ここで初めて、下のスクリプトで答え合わせをします。

【English】 A: Thank you for the proposal. To be honest, the price is higher than we expected. B: I understand. However, it’s difficult for us to lower the price at this volume. A: I see. If we increased the order to 500 units, could you offer a better price? B: Yes, in that case, we could offer a five percent discount. A: That works for us. So, just to confirm: 500 units, with a five percent discount.

【日本語訳】 A: ご提案ありがとうございます。率直に申し上げると、価格が想定より高めです。 B: 承知しました。ただ、この数量では値下げは難しいのです。 A: なるほど。仮に発注を500個に増やしたら、価格を見直していただけますか? B: はい、その場合は5%の割引をご提示できます。 A: それで結構です。では確認ですが、500個で、5%割引ということですね。

この短い対話の中に、条件提示(If we increased…)、条件付き譲歩(in that case, we could…)、要約確認(just to confirm)の3つの型がすべて入っています。

Practice 3:交渉チャンクを口に戻す(約2.5分)

鍛える能力:文章化の部品づくり ― 型の骨組みをチャンクのまま記憶に入れる。

まず、チャンク(意味のかたまり)の区切りを確認します。

【Chunked】 To be honest, / the price is higher / than we expected. If we increased the order / to 500 units, / could you offer / a better price? Yes, / in that case, / we could offer / a five percent discount. That works for us. / So, just to confirm: / 500 units, / with a five percent discount.

上のリピート用音声では、1チャンク流れるごとにポーズ(無音)が入ります。1チャンク聞いたら、ポーズの間にそのチャンクを正確に声に出して反復してください。全チャンクを反復できたら、最後に If we increased the order to 500 units, could you offer a better price? を一息で言ってみます。音声に重ねて同時に発声はせず、必ず「聞く→止める→言う」の順で行ってください。

Practice 4:条件付き譲歩を即答する(約2分)

鍛える能力:概念化と文章化 ― 譲歩の条件を一瞬で決め、If の型に載せる。

仕上げです。下の【要求とモデル解答】は、→ 以下のモデル解答を手で隠した状態で使います。交渉相手の要求を1問ずつ読み、答えを見る前に4秒以内で、まず日本語で「譲る条件」を一瞬で決め(例:「数量を増やしてくれるなら」)、それを If の型に載せて声に出してください。言い終えたらモデル解答を開いて照合します。

【要求とモデル解答】 Q1: Could you give us a discount?(割引をお願いできますか) → If you could increase the order, we could offer a discount.(発注量を増やしていただけるなら、割引をご提示できます) Q2: We need the delivery by the end of this month.(今月末までに納品してほしいのですが) → If you could accept a partial delivery, we could meet that deadline.(分納をご了承いただけるなら、その期日に間に合わせられます) Q3: Could you extend the payment deadline?(支払期限を延ばしていただけますか) → We could extend it, provided that the first payment is made this week.(今週中に初回のお支払いをいただけるのであれば、延長できます)

完璧な英文である必要はありません。「条件→譲歩」の順で口から出せたかだけを確認してください。それができていれば、型は動き始めています。

実践例 ― 商談1本の流れにフレーズを配置する

最後に、この記事のフレーズが実際の商談でどう並ぶかを、流れとして確認します。

  1. 切り出し:There are two things we’d like to discuss today.(本日ご相談したいことが2点あります)― 論点と目的を共有する
  2. 条件提示:Ideally, we’d like the delivery by the end of March. Would you be open to discussing the schedule?(理想は3月末納品です。スケジュールについてご相談の余地はありますか)― 希望と打診で相手の可動域を探る
  3. 譲歩の交換:If you could guarantee the delivery date, we could accept the current price.(納期を保証していただけるなら、現行価格をお受けします)― 譲歩は必ず条件とセットで
  4. 合意確認:Let me summarize what we’ve agreed on. We’ll put this in writing by tomorrow.(合意事項を整理します。明日までに書面にしてお送りします)― 要約と書面化の予告で固める

この流れで見ると、交渉は特殊な技術ではなく、会議での発言の延長線上にあることが分かります。会議進行の汎用フレーズは英語会議で即実践!フレーズ20選に、賛成・反対の立場を明確にする表現は英語で意見を主張するフレーズ20選に整理してあるので、交渉の前後の場面はそちらで補強してください。

まとめ ― 26フレーズは3つの型に還元できる

ここまでを整理します。

  • 交渉の英語は、条件提示・条件付き譲歩・要約による合意形成という3つの型に還元できる。26フレーズは型の具体例であり、骨組み+スロットとして覚えれば応用が利く
  • 交渉で言葉が出ない原因はフレーズ不足ではなく、概念化の空白にある。交渉前に、目的・譲れない条件・譲れる条件・落としどころの4点を日本語で言語化しておく
  • 日本人の典型的な失敗は、無条件の譲歩・伝わらない難色・口頭合意のままの終了。いずれも型で防げる
  • フレーズを「出てくる」状態にするには、チャンクのまま音声とセットで覚え、条件付き譲歩を即答する練習まで行う

読む前のあなたにとって、交渉フレーズは「覚えるべき長いリスト」だったはずです。いまは、3つの型と4点の概念化に整理された「準備できる構造」に変わっています。次の商談の前に、4点の言語化と Practice 4 の即答練習だけでも実行してください。

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この記事のトレーニングは、汎用素材で「型を動かす」ところまでです。しかし、実際の商談は案件ごとに違います。扱う商材、相手との力関係、譲れる条件と譲れない条件。概念化の中身が違えば、準備すべき英文も変わります。

そして、独学には構造的に埋めにくい難所が2つあります。1つ目は、自分の案件に合わせた概念化と英文準備です。汎用フレーズを自分の商材・条件に翻訳する作業は、正解が手元にないまま一人で行うことになります。2つ目は、産出へのフィードバックです。自分の英語が相手にどう響くか――失礼になっていないか、譲歩の意図が正しく伝わる形になっているか――は、自分では判定できません。ここが崩れたまま量を積むと、誤った形のまま定着します。

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参考情報・出典

  • Levelt, W. J. M. (1989). Speaking: From Intention to Articulation. MIT Press.(発話産出の段階モデル) https://direct.mit.edu/books/monograph/4300/SpeakingFrom-Intention-to-Articulation
  • Pawley, A., & Syder, F. H. (1983). Two puzzles for linguistic theory: Nativelike selection and nativelike fluency. In J. C. Richards & R. W. Schmidt (Eds.), Language and Communication. Longman.(定型表現が流暢さを支えるとする古典的論考)
  • The Past メソッド「スピーキングの3ステップ」(社内カリキュラム資料)
  • The Past メソッド「チャンクとスラッシュリーディング」(社内カリキュラム資料)