IELTSとTOEFLの違い|目的別・能力別の正しい選び方を専門家が解説
IELTSとTOEFLのどちらを選ぶべきかは、難易度の比較では決まりません。
多くの人が「どちらが簡単か」を基準に選ぼうとします。しかしこの問いの立て方が、すでに遠回りです。2つの試験は、提出先の要件・測っている能力・解答方式が異なります。選択を間違えると、英語力そのものは足りているのに、形式に対応できずスコアを落とします。
この記事では、IELTSとTOEFLの違いを試験形式・スコア体系・測定能力の3層に分けて整理し、あなたがどちらを受けるべきかを目的別・能力別に判断できる状態を作ります。最後まで読めば、「なんとなく有名だから」ではなく、構造にもとづいて選べるようになります。
結論:違いは「難易度」ではなく「提出先要件」と「解答方式」で決まる
先に結論を示します。
IELTSとTOEFLの選択は、次の2つでほぼ決まります。
- 提出先(大学・移住先)がどちらを、何点求めているか
- 対人での会話とPC録音、自分の能力構造に合うのはどちらか
理由はシンプルです。両試験は、世界の主要な大学・機関の多くで相互に受け入れられています。つまり「TOEFLでないと出せない」「IELTSでないと出せない」というケースは、以前ほど多くありません。だからこそ、まず提出先の正確な要件を確認し、そのうえで自分の能力に合う方式を選ぶのが合理的です。
ここで重要なのは、難易度比較が選択の決め手にならない点です。難易度は受験者の背景に依存します。北米英語に慣れ、タイピングが速い人にはTOEFLが向きます。対面での会話に強く、イギリス・オーストラリア英語に触れてきた人にはIELTSが向きます。万人にとって簡単な試験は存在しません。
つまり選ぶべきは「簡単なほう」ではなく、「提出要件を満たし、かつ自分の能力構造で点を取りやすいほう」です。
IELTSとTOEFLの全体像|まず2つの試験の素性を押さえる
選び方を考える前に、2つの試験が何者かを正確に押さえます。
IELTS(International English Language Testing System)は、イギリスのBritish CouncilとオーストラリアのIDP、Cambridgeが共同運営する試験です。イギリス・オーストラリア・カナダ・ニュージーランドへの留学や移住で広く使われます。アカデミック(留学向け)とジェネラル・トレーニング(移住・就労向け)の2種類があります。
TOEFL(Test of English as a Foreign Language)は、アメリカのETS(Educational Testing Service)が運営する試験です。北米の大学を中心に、学術環境での英語運用力を測ることを目的に設計されています。
ここで2026年の重要な変更点を押さえます。TOEFL iBTは2026年1月21日から、約90分の適応型テストに刷新され、スコアもCEFRに連動した1〜6のバンド制に変わりました。従来の0〜120点スケールは、移行期間中の参考値として併記されます(出典:ETS公式 TOEFL iBT Test Content / Score Scale Update)。この記事では、現行の1〜6スケールを軸にしつつ、移行期間に必要な0〜120の換算も併記します。
つまり、両試験は「英語力を測る」という目的こそ同じですが、運営元・想定する英語圏・採点哲学が異なります。この違いが、形式とスコアのすべてに反映されています。
試験形式の違い|比較表で構造を一望する
最初に、形式の違いを一覧で示します。ここが選択の土台になります。
| 項目 | IELTS(Academic) | TOEFL iBT(2026年新形式) |
|---|---|---|
| 運営元 | British Council / IDP / Cambridge | ETS(米国) |
| 主な用途国 | 英・豪・加・NZ・欧州 | 米国中心(加・欧州でも可) |
| 解答方式 | ペーパー or PC(選択可) | PC(オンライン・適応型) |
| スピーキング | 試験官と対面(11〜14分) | PCに向かって録音 |
| リスニング発音 | 主に英・豪発音 | 主に北米発音 |
| 試験時間 | 約2時間45分 | 約90分 |
| スコア体系 | 0〜9のバンド(0.5刻み) | 1〜6のバンド(0.5刻み)※0〜120も併記 |
| 採点 | 人間(スピーキングは試験官、ライティングは採点官) | AI+ETS認定採点官の併用 |
| 結果返却 | 数日〜2週間 | 約72時間 |
(出典:British Council「IELTS test format」、ETS「TOEFL iBT Test Content, Structure and Administration」)
この表で最初に目が行くべきは、スピーキングの方式と試験時間です。
IELTSのスピーキングは、試験官と1対1で対面(録音あり)で行われます。相手の表情や相づちがあり、対話として進みます。一方TOEFLは、PCのマイクに向かって決められた時間内に録音します。相手はいません。この違いは、能力構造によって有利・不利が大きく分かれます。後で詳しく分解します。
試験時間も無視できません。2026年の新形式でTOEFLは約90分に短縮されました。IELTSの約2時間45分と比べると、集中の配分がまったく違います。短時間で密度の高い処理を求められるのがTOEFL、長時間の持久戦がIELTSです。

スコア体系とCEFR換算|「6.5」と「79点」は同じ場所を指す
形式の次に、スコアの読み方を揃えます。ここを誤解すると、目標設定そのものを間違えます。
IELTSは0〜9のバンドスコアで、4技能それぞれと総合を0.5刻みで表します。TOEFLは2026年から1〜6のバンドに移行し、こちらも各セクションと総合を0.5刻みで示します。移行期間中は従来の0〜120スケールも併記されます。
問題は、この2つを直接比べられないことです。そこで共通言語となるのがCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)です。CEFRはA1〜C2の6段階で、言語運用力を国際的に記述する基準です。両試験ともCEFRに対応づけられているため、CEFRを介せば位置を揃えられます。
以下は、ETSとIELTSの公式情報をもとにした対応の目安です。換算は幅を持つため、あくまで位置の把握に使います。
| CEFR | IELTS(Overall) | TOEFL iBT(0〜120・従来) | 到達イメージ |
|---|---|---|---|
| B1 | 4.0〜5.0 | 42〜71 | 基本的なやり取りができる |
| B2 | 5.5〜6.5 | 72〜94 | 多くの留学・移住のボーダー |
| C1 | 7.0〜8.0 | 95〜114 | 学術・専門環境で運用できる |
| C2 | 8.5〜9.0 | 115〜120 | ネイティブに近い運用力 |
(出典:ETS「Compare TOEFL iBT Scores」、IELTS「IELTS, your guide to scores」、CEFR対応表)
代表的な対応を具体的な数字で押さえます。
- IELTS 6.5 ≒ TOEFL 79〜93点(CEFR B2)
- IELTS 7.0 ≒ TOEFL 94〜101点(CEFR C1)
- IELTS 7.5 ≒ TOEFL 102〜109点(CEFR C1)
- IELTS 8.0 ≒ TOEFL 110〜112点(CEFR C1〜C2)
(出典:ETSとIELTSの共同concordance study)
ここで重要なのは、換算は「だいたい同じ位置」を示すだけで、片方が取れればもう片方も自動で取れる保証ではないという点です。同じCEFR B2でも、対面で詰まる人はIELTSスピーキングで落とし、PC録音が苦手な人はTOEFLで落とします。換算表は目標設定の地図であって、能力の同一性の証明ではありません。

2つの試験が測っている能力の違い|「英語力」をもう一段分解する
ここからが、椿スタイルの核心です。試験の違いを、形式ではなく測っている能力の違いとして捉え直します。
英語力という言葉は曖昧です。実際には、複数の独立した能力の組み合わせです。IELTSとTOEFLは、同じ4技能を測りながら、どの能力に負荷をかけるかが異なります。
スピーキングで測られる能力が違う
最も差が大きいのがスピーキングです。
IELTSのスピーキングは試験官との対面対話です。ここで測られるのは、相手の質問をその場で聞き取り、即座に意味を組み立て、自然な対話として返す対人での即時応答能力です。相手の反応に合わせて話を調整する力も働きます。
TOEFLのスピーキングは、画面の指示に従い、読んだ文章や聞いた講義を要約して録音します。ここで測られるのは、情報を統合して制限時間内に独力で構成する能力です。相手はいません。代わりに、複数の情報源を頭の中でまとめ、限られた秒数で論理的に出力する処理が問われます。
| 能力要素 | IELTSスピーキングで強く働く | TOEFLスピーキングで強く働く |
|---|---|---|
| 対人での即時応答 | ◎ | △ |
| 相手に合わせた調整 | ◎ | × |
| 読んだ・聞いた情報の統合 | △ | ◎ |
| 制限時間内の独力構成 | ○ | ◎ |
| 沈黙への耐性(相手がいない) | ○ | ◎ |
つまり、人と話すのは得意でも、画面に向かって一人で要約を録音するのは苦手という人がいます。逆もまた然りです。これは英語力の高低ではなく、能力構造の偏りです。
ライティングとリーディングの負荷も違う
ライティングでも差があります。TOEFLには、読んだ文章と聞いた講義を統合して書く統合型タスクがあります。これはリーディング・リスニング・ライティングを同時に動かす複合処理です。IELTSのライティングは、グラフ記述(Task 1)とエッセイ(Task 2)が中心で、与えられた情報を独立して処理します。
リーディングは、TOEFLが学術的な語彙の多い文章を、IELTSが一般語彙中心だが分量の多い文章を扱う傾向があります。TOEFLは語彙の深さ、IELTSは処理の持久力に負荷がかかりやすい構造です。
ここまでを整理すると、TOEFLは「複数技能を統合して処理する力」に、IELTSは「各技能を対話的・持久的に運用する力」に重みがあります。同じ英語力でも、どちらの負荷が自分に合うかで取りやすさが変わります。
どっちを選ぶべきか|目的別・能力別の判断フロー
ここまでの構造を踏まえ、選び方を具体化します。判断は2段階です。まず提出先で絞り、次に能力で絞ります。
判断1:提出先の要件で絞る(最優先)
これが最優先です。自分の希望ではなく、提出先が決めます。
| あなたの目的・状況 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 英・豪・加・NZへの留学 | IELTS | 受け入れ実績が厚く、要件指定が多い |
| アメリカの大学院・大学への留学 | TOEFL寄り(要確認) | 北米大学での実績が中心。ただしIELTS可の機関も多数 |
| イギリス・オーストラリアへの移住・就労ビザ | IELTS | ビザ要件でIELTS指定が一般的 |
| 提出先がどちらも可 | 能力で選ぶ(判断2へ) | 要件で絞れないため次の基準で判断 |
ここで必ずやるべきことは、提出先の公式ページで「どの試験を、どのスコアで」求めているかを自分の目で確認することです。同じ大学でも学部・プログラムで要件が異なります。「IELTSが一般的だから」という一般論で決めず、要件の原文にあたってください。
判断2:能力構造で絞る(要件で絞れない場合)
提出先がどちらも受け入れる場合、自分の能力構造で選びます。次の問いに答えてください。
- 対面で人と話すと、相手の反応で調子が出るか、それとも緊張で詰まるか
→ 調子が出るならIELTS、一人のほうが落ち着くならTOEFL - 読んだ・聞いた情報をその場でまとめて話す・書くのは得意か
→ 得意ならTOEFL、独立した課題のほうが処理しやすいならIELTS - タイピングは速いか、手書き・口頭のほうが速いか
→ タイピングが速いならTOEFL、そうでなければIELTSのペーパー方式も選べる - 北米発音とイギリス・豪発音、どちらに耳が慣れているか
→ 北米ならTOEFLのリスニングが有利、英・豪ならIELTSが有利 - 長時間の集中と短時間の高密度、どちらが得意か
→ 短時間集中ならTOEFL(約90分)、持久戦が苦でなければIELTS
重要なのは、これらが「英語力の高さ」ではなく「能力の偏り」を見ている点です。どちらが優れているという話ではありません。自分の処理特性に合う器を選ぶという話です。

多くの日本人がつまずく共通点|どちらを選んでもスピーキングが壁になる
試験を選んだあとに残る本当の課題があります。
それは、IELTSでもTOEFLでも、日本人学習者の多くがスピーキングで止まることです。理由は試験の違いではありません。日本の英語学習が、読む・聞く・解くに偏った受信中心の設計になっているためです。
スピーキングは、入ってきた英語を理解する受信ではなく、自分の中から英語を組み立てて出す産出の能力です。受信は相手が用意した正解を処理すればよいのに対し、産出はゼロから自分で英語を作り出します。さらにスピーキングは、考える時間がほとんどありません。この処理を直接鍛えていないと、TOEICが高くてもスピーキングだけ動かない事態が起きます(参考:TOEICが高いのに話せない理由)。
ここでIELTSとTOEFLの差がもう一度効きます。IELTSは対人での即時応答、TOEFLは情報統合と独力構成。どちらを選んでも、産出の処理速度という土台は共通して必要です。試験対策を始める前に、自分のスピーキングが受信側に偏っていないかを確認することが、遠回りを防ぎます。
つまり、試験選びはスタートラインの選択にすぎません。選んだあとに鍛えるべきは、どちらの試験でも要求される産出の処理速度です。ここを能力単位で診断できるかどうかが、スコアの伸びを分けます。
まとめ
IELTSとTOEFLの違いは、難易度ではなく構造の違いです。
選択の決め手は2つです。第一に、提出先がどちらを何点求めているか。これを公式情報で確認するのが最優先です。第二に、対人での即時応答が得意か、情報統合と独力構成が得意か。自分の能力構造に合う方式を選びます。
スコアはCEFRを介して比較できます。IELTS 6.5はTOEFL 79〜93点、ともにCEFR B2に位置します。ただし換算は位置を示すだけで、片方が取れればもう片方も取れる保証ではありません。
そしてどちらを選んでも、日本人学習者の多くが直面するのはスピーキングの壁です。これは試験の違いではなく、産出の処理速度が未訓練であることから来ます。試験を選んだら、次に確認すべきは自分の能力構造の偏りです。
TOEICとVERSANTの違いを能力構造から整理した記事もあります。試験ごとに測る能力がどう違うかをさらに理解したい方はTOEICとVERSANTの違いも参考にしてください。
どちらの試験が自分に合うかを能力単位で知りたい方へ
IELTSとTOEFLの選択でつまずく最大の理由は、難易度比較に気を取られ、自分の能力構造を見ないまま選んでしまうことです。対人が得意なのにTOEFLを選ぶ、情報統合が得意なのにIELTSで苦戦する。こうしたミスマッチは、英語力ではなく選択の問題です。
The Pastの無料カウンセリングでは、現在の英語の処理特性を能力単位で分解し、どちらの試験が取りやすいか、そのうえで何を鍛えるべきかを設計します。試験選びと対策を構造で進めたい方は、一度ご相談ください。
FAQ
Q. IELTSとTOEFL、結局どちらが簡単ですか?
A. 万人にとって簡単な試験はありません。難易度は受験者の背景に依存します。対面での会話に強く英・豪発音に慣れた人にはIELTS、北米発音に慣れタイピングが速い人にはTOEFLが取りやすい傾向があります。簡単さで選ぶより、提出先要件と自分の能力構造で選ぶのが合理的です。
Q. IELTS 6.5はTOEFLでいうと何点ですか?
A. 従来の0〜120スケールで約79〜93点、CEFRではB2に相当します。2026年からのTOEFL新スケール(1〜6)でも対応づけが示されますが、換算には幅があるため、正確な目標は提出先の要件に合わせて確認してください。
Q. 提出先がどちらも受け入れる場合、何で決めればいいですか?
A. 能力構造で決めます。対面で人と話すと調子が出るならIELTS、画面に向かって情報をまとめて話すほうが落ち着くならTOEFLが向きます。発音の慣れ(北米か英・豪か)とタイピング速度も判断材料になります。
Q. TOEFLは2026年に変わったと聞きました。何が変わったのですか?
A. 2026年1月21日から、TOEFL iBTは約90分の適応型テストに刷新され、スコアがCEFR連動の1〜6バンドに変わりました。移行期間中は従来の0〜120スケールも併記されます。試験時間が短縮され、リーディングとリスニングが適応型になった点が大きな変更です。
Q. どちらの試験でもスピーキングが苦手です。どうすればいいですか?
A. スピーキングの停滞は、試験の違いではなく産出の処理速度が未訓練であることから来ます。受信(読む・聞く)の学習を増やしても解消しません。自分の言葉を即座に組み立てて出す訓練が必要です。まずどの能力が足を引っ張っているかを特定することを推奨します。
参考情報・出典
- British Council「IELTS test format」 https://takeielts.britishcouncil.org/take-ielts/test-format
- IELTS「IELTS Academic format: Speaking」 https://ielts.org/take-a-test/test-types/ielts-academic-test/ielts-academic-format-speaking
- ETS「TOEFL iBT Test Content, Structure and Administration」 https://www.ets.org/toefl/institutions/ibt/about/content-structure.html
- ETS「TOEFL iBT Score Breakdown – What Your Scores Mean」 https://www.ets.org/toefl/test-takers/ibt/scores/understand-scores.html
- ETS「Compare TOEFL iBT Scores」 https://www.ets.org/toefl/institutions/ibt/compare-scores.html
- Council of Europe「Common European Framework of Reference for Languages (CEFR)」 https://www.coe.int/en/web/common-european-framework-reference-languages