IELTSリーディングの時間配分|時間切れの原因を3つに分解して潰す
IELTSリーディングの時間配分を調べると、ほぼ全ての記事が同じ答えを返します。「Passage 1 に20分、Passage 2 に20分、Passage 3 に20分」。
この配分をそのまま実行しても、時間切れは直りません。
理由は2つあります。1つは、Passage 1から3にかけて難度が上がるため、均等配分は最も難しいPassageに最も少ない余力で臨む設計になっていること。もう1つは、時間が足りない原因が人によって違うのに、配分表は原因を問わず同じ数字を返すことです。
配分表は、時間が足りている人のための道具です。足りていない人に必要なのは、なぜ足りないのかの特定です。
この記事では、時間切れの原因を返り読み・設問往復・語彙処理の3つに分解し、それぞれの診断方法と対処を示します。そのうえで、原因が潰れた人のための配分を提示します。
結論:配分を変える前に、どこで時間が溶けているかを特定する
先に結論を示します。
IELTSリーディングで時間が足りない原因は、次の3つのどれかです。
| 原因 | 症状 | 対処の方向 |
|---|---|---|
| ① 返り読み | 1文を読むのに何度も戻る。読み終えたのに内容が残っていない | チャンク単位の処理を作る |
| ② 設問と本文の往復 | 該当箇所を探して本文を何度も行き来する | 設問タイプ別の解法を固定する |
| ③ 語彙処理での停止 | 未知語で止まる。意味を推測しようとして時間が溶ける | 未知語の処理ルールを決める |
この3つは、対処がまったく違います。 返り読みが原因なのに設問の解き方を練習しても、時間は縮みません。逆も同じです。
そして重要なのは、「速読の練習」はこの3つのどれにも直接効かないということです。速読とは結果であって、手段ではありません。3つのうち自分に当てはまるものを潰した結果として、速度が上がります。

前提:60分の構造を正確に把握する
まず試験の構造を確認します。
- 3つのPassage、合計40問、60分
- 1問1点。難問も易問も同じ1点
- 転記時間はない。 60分がすべて
最後の点は重要です。Listeningにはペーパー版で10分の転記時間がありましたが、Readingにはもともと転記時間がありません。 「あとで整理する」余地はゼロです。
さらに2026年8月時点では、受験形式そのものが変わっています。日本国内のIELTSペーパー版は、東京都・大阪府の会場が2026年8月実施分、その他の会場が2026年6月実施分で終了しました。以後はコンピューター版のみです。
コンピューター版では、本文が画面上でスクロール表示されます。紙のように全体を俯瞰したり、余白に書き込んだりはできません。設問と本文の往復コストが、紙より高くなります。 後述する原因②の影響が、以前より大きく出ます。
原因① 返り読み ― 1文を2回読んでいる
症状と診断
返り読み(regression)は、文を読み進めながら前に戻る動きです。無意識に起きるため、自覚がないまま時間を消費します。
診断方法: 過去問のPassageを1つ選び、時間を計らずに、指で行をなぞりながら読んでください。指が戻った回数を数えます。1つのPassageで5回以上戻っているなら、返り読みが主要因です。
もう1つの診断は、読み終えた直後に、内容を日本語で3文にまとめてみることです。まとめられないなら、目は文字を追ったが処理は成立していません。これも返り読みが起きているサインです。
なぜ起きるか
返り読みの正体は、英語を日本語の語順に組み替えようとする処理です。
英語は「主語→動詞→目的語」の順に情報が並び、修飾語は後ろに付きます。日本語は逆です。日本語の語順に直そうとすると、文末まで読んでから前に戻る必要が生じます。戻ること自体が、日本語処理を続けている証拠です。
対処:チャンク単位で前から処理する
対処は、意味のかたまり(チャンク)ごとに、前から順に理解を確定させていく訓練です。戻らないことを目標にするのではなく、戻る必要がない読み方に変えるのが本質です。
具体的な手順はスラッシュリーディングのやり方にまとめています。チャンクの区切り方そのものはチャンクリーディングとはで扱っています。
注意:この訓練は、時間を計りながらやっても効果がありません。 時間制限をかけると、元の読み方に戻るからです。訓練段階では制限を外し、処理の形が変わってから速度を戻してください。
原因② 設問と本文の往復 ― 探す時間が本体になっている
症状と診断
読むこと自体は問題ないのに、答えの場所を探すのに時間がかかるタイプです。
診断方法: Passageを1つ、時間を計って解いてください。そのうえで、「本文を読んでいた時間」と「設問と本文を行き来していた時間」を体感で分けてみます。 後者が半分を超えているなら、これが主要因です。
もう1つの診断は、正答率は高いのに時間が足りないという状態です。読解力は足りていて、探索コストだけが問題になっています。
なぜ起きるか
原因は、設問タイプごとの解法が固定されていないことです。
IELTSリーディングの設問形式は限られています。True/False/Not Given、見出し選択(Matching Headings)、要約完成、情報のマッチング、多肢選択などです。それぞれ、本文のどこを、どう探すかが違います。
たとえば見出し選択は段落全体の主題を問うため、各段落の冒頭と末尾を見るのが基本です。一方、要約完成は特定の語を探す作業で、本文の該当箇所は連続しています。
この違いを意識せず、毎回「最初から読み直して探す」と、往復回数が跳ね上がります。
対処:設問タイプごとに探索の手順を決める
対処は、設問形式を見た瞬間に、どこを探すかが決まっている状態を作ることです。形式別の具体的なアプローチはIELTSリーディングの解き方で解説しています。
加えて、順序の設計が効きます。設問は本文の流れとほぼ同じ順で並んでいる形式が多いため、前の設問の解答箇所から先を探せば、戻る必要が減ります。ただし見出し選択やマッチング形式はこの限りではありません。先にこの形式を処理してから、順序どおりの設問に入ると往復が減ります。
原因③ 語彙処理での停止 ― 未知語で止まっている
症状と診断
診断方法: Passageを時間無制限で解き、全問正解できるかを確認します。時間さえあれば正解できるなら、読解力そのものは足りています。
そのうえで、未知語に印を付けながらもう一度読んでください。 1段落に3語以上の未知語があるなら、語彙処理が主要因です。
なぜ起きるか
未知語に出会ったとき、多くの受験者はその場で意味を推測しようとして止まります。 推測自体は有効な技術ですが、すべての未知語で立ち止まると、処理が破綻します。
さらに厄介なのは、「知らない語だから読めなかった」のか「知っている語だが処理が追いつかなかった」のかを、本人が区別できないことです。
対処:未知語の処理ルールを先に決めておく
対処は、語彙を増やすことだけではありません。本番で未知語に出会ったときの行動を、事前に決めておくことです。
判断基準はシンプルです。
- 設問に関係しない語:飛ばす。意味を取らない
- 設問の該当箇所にある語:前後の文から役割だけを取る(プラスかマイナスか、原因か結果か)
- 繰り返し出てくる語:キーワードなので、初出時に前後から役割を確定させる
「全部の語を理解する」ことは目標ではありません。 設問に答えるのに必要な情報が取れれば足ります。
語彙量そのものの底上げが必要な場合は、必要語数から逆算して設計してください(IELTSの単語の覚え方)。ただし、語彙学習は数か月単位の投資です。受験日が近いなら、まず処理ルールを固めるほうが即効性があります。
3つを1回で切り分けるセルフテスト
原因を特定するために、次の手順で1つのPassageを使ってください。所要時間は約40分です。

ステップ1:時間を計って解く(20分)
まず本番と同じ条件で1 Passage分を解きます。何問解き終えたか、正答は何問かを記録します。
ステップ2:時間無制限で続きを解く(時間は計るが止めない)
止めずに最後まで解き、追加でかかった時間を記録します。ここで全問正解に近づくなら、読解力は足りており、速度だけが問題だと確定します。
ステップ3:原因を切り分ける
| ステップ2の結果 | 判定 |
|---|---|
| 時間無制限でも正答が伸びない | 読解力・語彙の問題(原因③、または能力不足) |
| 時間無制限なら正解できる/読み直しが多かった | 原因①(返り読み) |
| 時間無制限なら正解できる/探すのに時間がかかった | 原因②(設問往復) |
ステップ4:同じPassageをもう一度、時間を計って解く
内容を知っている状態で、20分以内に解けるかを確認します。内容を知っていても時間内に終わらないなら、それは純粋な処理速度の問題です。原因①の可能性が高くなります。
このテストは、原因を1つに絞るためのものです。複数当てはまることもありますが、最も時間を消費している1つから潰してください。
原因が潰れた人のための配分
ここまでの3原因に対処したうえで、はじめて配分の話に意味が出ます。
均等配分が誤りである理由
Passage 1から3にかけて、難度は上がります。 Passage 3は語彙も構文も抽象度が高くなります。
均等に20分ずつ割ると、最も処理コストの高いPassage 3に、疲労した状態で最も少ない余力を割り当てることになります。これは設計として逆です。
推奨する配分
| Passage | 時間 | 考え方 |
|---|---|---|
| Passage 1 | 15〜16分 | 最も易しい。ここで時間を貯める |
| Passage 2 | 19〜20分 | 標準 |
| Passage 3 | 24〜25分 | 最も難しい。貯めた時間を投入する |
Passage 1で20分使い切るのは、貯められたはずの4〜5分を捨てているのと同じです。ここを速く抜けられるかどうかが、Passage 3の余力を決めます。
なお、この配分はコンピューター版でも紙でも変わりません。ただしコンピューター版はスクロール操作の分だけ探索コストが上がるため、練習段階から画面で解いておく必要があります。
時計の見方を決めておく
配分を決めても、確認するタイミングを決めていなければ機能しません。
見るのは2回だけで足ります。
- Passage 1を解き終えた時点:16分を超えていたら、Passage 2で巻く
- Passage 2を解き終えた時点:36分を超えていたら、Passage 3で捨てる問題を決める
頻繁に時計を見るのは逆効果です。 確認するたびに読解が中断し、返り読みの原因になります。
捨てる判断をルール化する
40問はすべて1点です。難問1問に5分かけることは、易問5問を捨てるのと同じです。
捨てる基準を、事前に決めておいてください。
基準:1問に2分以上かけない。 2分経っても該当箇所が見つからないなら、推測で埋めて次に進みます。
IELTSリーディングに減点はありません。空欄にするメリットはゼロです。分からない問題も必ず何かを書いてください。特にTrue/False/Not Givenは3択なので、埋めるだけで期待値があります。
そして、捨てた問題に戻らないでください。 戻ると、また同じ場所で止まります。最後に時間が余ったときだけ、まとめて見直します。
まとめ
IELTSリーディングの時間配分は、配分表を写しても改善しません。
- 時間切れの原因は①返り読み ②設問往復 ③語彙処理での停止の3つ。対処はまったく違う
- 「速読の練習」はどれにも直接効かない。速度は3つを潰した結果として上がる
- 原因の特定は、時間を計って解く → 時間無制限で続ける → もう一度計って解くの3ステップで切り分けられる
- 配分は均等ではなく、Passage 1で貯めてPassage 3に投入する(15〜16分/19〜20分/24〜25分)
- 時計を見るのは2回だけ。頻繁な確認は読解を中断させる
- 1問2分で見切る。 減点はないので必ず埋め、捨てた問題には戻らない
配分表が効くのは、原因が潰れている人だけです。まず自分の原因を1つに絞ってください。
自分の原因が3つのどれか、判断できない方へ
この記事のセルフテストは、原因を絞るための最低限の手順です。ただし、返り読みは自覚しにくいという難しさがあります。
読んでいる本人には、戻っている感覚がありません。「難しい文だから丁寧に読んだ」としか感じられない。だから「もっと速く読もう」という誤った対策に向かい、処理の形は変わらないまま、雑に読むだけになります。
The Past の無料eBook『シャドーイングを今すぐ捨てよ』(LINE登録)では、英語力を能力単位に分解し、症状から原因を特定する考え方を解説しています。過去問をもう1セット買う前に、一度読んでみてください。
▶ 無料eBook『シャドーイングを今すぐ捨てよ』を受け取る
FAQ
Q. Passageを解く順番は変えたほうがいいですか?
A. 原則として1→2→3の順で解いてください。難度は後ろほど上がるため、易しいものから処理するほうが時間を貯められます。ただし、Passage 1に苦手な設問形式(見出し選択など)が集中している場合、その形式だけ後回しにする判断は有効です。
Q. 先に設問を読むべきですか、本文を読むべきですか?
A. 設問を先に見てください。ただし全部を読み込むのではなく、形式と探すべきキーワードを把握する程度で十分です。設問の細部まで読み込むと、それ自体が時間を消費します。
Q. 時間無制限なら全問正解できます。速く読む練習をすべきですか?
A. 「速く読む練習」ではなく、返り読みが起きているかを先に確認してください。時間無制限で正解できるなら読解力は足りており、処理の形(前から確定させているか)が問題である可能性が高い。雑に速く読んでも正答率が落ちるだけです。
Q. 未知語が多すぎて時間内に終わりません。
A. 1段落に3語以上の未知語があるなら、語彙が主要因です。この場合、時間配分の工夫では解決しません。必要語数から逆算した語彙学習が先になります。ただし本番までの時間が短いなら、設問に関係しない未知語は飛ばすというルールだけでも失点は減ります。
Q. コンピューター版と紙で、時間配分は変えるべきですか?
A. 配分そのものは変えません。ただしコンピューター版はスクロール操作の分だけ探索に時間がかかるため、練習段階から画面で解いて操作に慣れておく必要があります。日本国内は2026年9月以降コンピューター版のみです。
Q. 見直しの時間は取るべきですか?
A. 全問解き終えることが優先です。見直しに5分を残すより、その5分で未解答の問題を減らすほうが期待値が高い。空欄は確実に0点、推測は0点ではありません。
参考情報・出典
- Reading の形式(3 Passage・40問・60分、転記時間なし、1問1点):IELTS公式が公開する試験形式
- ペーパー版終了:公益財団法人 日本英語検定協会「2026年6月から8月にかけたIELTSペーパー版の順次提供終了およびIELTSコンピューター版での提供継続」(2026年3月27日)
- 記載の時間配分は、上記の試験構造と難度の傾斜にもとづく設計です
- 試験仕様は2026年7月31日時点の情報に基づきます