IELTSリーディングの時間配分|時間切れの原因を3つに分解して潰す

記事の執筆者 メイソン(株式会社The Past 代表 / 椿祐輔)

VERSANT満点(90点)、CEFR C2レベルの英語力を有する。フィリピンの語学学校で10年以上にわたりカリキュラムと教材開発に従事し、述べ5,000人以上の多国籍な英語学習者(日本、中国、台湾、ベトナム、ロシア等)の学習をサポート。言語学と音声学に精通しており、現在は株式会社The Pastの代表取締役、カリキュラム開発者として、グローバルな英語教育を推進している。

IELTSリーディングの時間配分を調べると、ほぼ全ての記事が同じ答えを返します。「Passage 1 に20分、Passage 2 に20分、Passage 3 に20分」。

この配分をそのまま実行しても、時間切れは直りません。

理由は2つあります。1つは、Passage 1から3にかけて難度が上がるため、均等配分は最も難しいPassageに最も少ない余力で臨む設計になっていること。もう1つは、時間が足りない原因が人によって違うのに、配分表は原因を問わず同じ数字を返すことです。

配分表は、時間が足りている人のための道具です。足りていない人に必要なのは、なぜ足りないのかの特定です。

この記事では、時間切れの原因を返り読み・設問往復・語彙処理の3つに分解し、それぞれの診断方法と対処を示します。そのうえで、原因が潰れた人のための配分を提示します。

結論:配分を変える前に、どこで時間が溶けているかを特定する

先に結論を示します。

IELTSリーディングで時間が足りない原因は、次の3つのどれかです。

原因 症状 対処の方向
① 返り読み 1文を読むのに何度も戻る。読み終えたのに内容が残っていない チャンク単位の処理を作る
② 設問と本文の往復 該当箇所を探して本文を何度も行き来する 設問タイプ別の解法を固定する
③ 語彙処理での停止 未知語で止まる。意味を推測しようとして時間が溶ける 未知語の処理ルールを決める

この3つは、対処がまったく違います。 返り読みが原因なのに設問の解き方を練習しても、時間は縮みません。逆も同じです。

そして重要なのは、「速読の練習」はこの3つのどれにも直接効かないということです。速読とは結果であって、手段ではありません。3つのうち自分に当てはまるものを潰した結果として、速度が上がります。

IELTSリーディングで時間が足りない3つの原因。返り読み、設問と本文の往復、語彙処理での停止

前提:60分の構造を正確に把握する

まず試験の構造を確認します。

  • 3つのPassage、合計40問、60分
  • 1問1点。難問も易問も同じ1点
  • 転記時間はない。 60分がすべて

最後の点は重要です。Listeningにはペーパー版で10分の転記時間がありましたが、Readingにはもともと転記時間がありません。 「あとで整理する」余地はゼロです。

さらに2026年8月時点では、受験形式そのものが変わっています。日本国内のIELTSペーパー版は、東京都・大阪府の会場が2026年8月実施分、その他の会場が2026年6月実施分で終了しました。以後はコンピューター版のみです。

コンピューター版では、本文が画面上でスクロール表示されます。紙のように全体を俯瞰したり、余白に書き込んだりはできません。設問と本文の往復コストが、紙より高くなります。 後述する原因②の影響が、以前より大きく出ます。

原因① 返り読み ― 1文を2回読んでいる

症状と診断

返り読み(regression)は、文を読み進めながら前に戻る動きです。無意識に起きるため、自覚がないまま時間を消費します。

診断方法: 過去問のPassageを1つ選び、時間を計らずに、指で行をなぞりながら読んでください。指が戻った回数を数えます。1つのPassageで5回以上戻っているなら、返り読みが主要因です。

もう1つの診断は、読み終えた直後に、内容を日本語で3文にまとめてみることです。まとめられないなら、目は文字を追ったが処理は成立していません。これも返り読みが起きているサインです。

なぜ起きるか

返り読みの正体は、英語を日本語の語順に組み替えようとする処理です。

英語は「主語→動詞→目的語」の順に情報が並び、修飾語は後ろに付きます。日本語は逆です。日本語の語順に直そうとすると、文末まで読んでから前に戻る必要が生じます。戻ること自体が、日本語処理を続けている証拠です。

対処:チャンク単位で前から処理する

対処は、意味のかたまり(チャンク)ごとに、前から順に理解を確定させていく訓練です。戻らないことを目標にするのではなく、戻る必要がない読み方に変えるのが本質です。

具体的な手順はスラッシュリーディングのやり方にまとめています。チャンクの区切り方そのものはチャンクリーディングとはで扱っています。

注意:この訓練は、時間を計りながらやっても効果がありません。 時間制限をかけると、元の読み方に戻るからです。訓練段階では制限を外し、処理の形が変わってから速度を戻してください。

原因② 設問と本文の往復 ― 探す時間が本体になっている

症状と診断

読むこと自体は問題ないのに、答えの場所を探すのに時間がかかるタイプです。

診断方法: Passageを1つ、時間を計って解いてください。そのうえで、「本文を読んでいた時間」と「設問と本文を行き来していた時間」を体感で分けてみます。 後者が半分を超えているなら、これが主要因です。

もう1つの診断は、正答率は高いのに時間が足りないという状態です。読解力は足りていて、探索コストだけが問題になっています。

なぜ起きるか

原因は、設問タイプごとの解法が固定されていないことです。

IELTSリーディングの設問形式は限られています。True/False/Not Given、見出し選択(Matching Headings)、要約完成、情報のマッチング、多肢選択などです。それぞれ、本文のどこを、どう探すかが違います。

たとえば見出し選択は段落全体の主題を問うため、各段落の冒頭と末尾を見るのが基本です。一方、要約完成は特定の語を探す作業で、本文の該当箇所は連続しています。

この違いを意識せず、毎回「最初から読み直して探す」と、往復回数が跳ね上がります。

対処:設問タイプごとに探索の手順を決める

対処は、設問形式を見た瞬間に、どこを探すかが決まっている状態を作ることです。形式別の具体的なアプローチはIELTSリーディングの解き方で解説しています。

加えて、順序の設計が効きます。設問は本文の流れとほぼ同じ順で並んでいる形式が多いため、前の設問の解答箇所から先を探せば、戻る必要が減ります。ただし見出し選択やマッチング形式はこの限りではありません。先にこの形式を処理してから、順序どおりの設問に入ると往復が減ります。

原因③ 語彙処理での停止 ― 未知語で止まっている

症状と診断

診断方法: Passageを時間無制限で解き、全問正解できるかを確認します。時間さえあれば正解できるなら、読解力そのものは足りています。

そのうえで、未知語に印を付けながらもう一度読んでください。 1段落に3語以上の未知語があるなら、語彙処理が主要因です。

なぜ起きるか

未知語に出会ったとき、多くの受験者はその場で意味を推測しようとして止まります。 推測自体は有効な技術ですが、すべての未知語で立ち止まると、処理が破綻します。

さらに厄介なのは、「知らない語だから読めなかった」のか「知っている語だが処理が追いつかなかった」のかを、本人が区別できないことです。

対処:未知語の処理ルールを先に決めておく

対処は、語彙を増やすことだけではありません。本番で未知語に出会ったときの行動を、事前に決めておくことです。

判断基準はシンプルです。

  • 設問に関係しない語:飛ばす。意味を取らない
  • 設問の該当箇所にある語:前後の文から役割だけを取る(プラスかマイナスか、原因か結果か)
  • 繰り返し出てくる語:キーワードなので、初出時に前後から役割を確定させる

「全部の語を理解する」ことは目標ではありません。 設問に答えるのに必要な情報が取れれば足ります。

語彙量そのものの底上げが必要な場合は、必要語数から逆算して設計してください(IELTSの単語の覚え方)。ただし、語彙学習は数か月単位の投資です。受験日が近いなら、まず処理ルールを固めるほうが即効性があります。

3つを1回で切り分けるセルフテスト

原因を特定するために、次の手順で1つのPassageを使ってください。所要時間は約40分です。

時間切れの原因を切り分けるセルフテストの4ステップ

ステップ1:時間を計って解く(20分)

まず本番と同じ条件で1 Passage分を解きます。何問解き終えたか、正答は何問かを記録します。

ステップ2:時間無制限で続きを解く(時間は計るが止めない)

止めずに最後まで解き、追加でかかった時間を記録します。ここで全問正解に近づくなら、読解力は足りており、速度だけが問題だと確定します。

ステップ3:原因を切り分ける

ステップ2の結果 判定
時間無制限でも正答が伸びない 読解力・語彙の問題(原因③、または能力不足)
時間無制限なら正解できる/読み直しが多かった 原因①(返り読み)
時間無制限なら正解できる/探すのに時間がかかった 原因②(設問往復)

ステップ4:同じPassageをもう一度、時間を計って解く

内容を知っている状態で、20分以内に解けるかを確認します。内容を知っていても時間内に終わらないなら、それは純粋な処理速度の問題です。原因①の可能性が高くなります。

このテストは、原因を1つに絞るためのものです。複数当てはまることもありますが、最も時間を消費している1つから潰してください。

原因が潰れた人のための配分

ここまでの3原因に対処したうえで、はじめて配分の話に意味が出ます。

均等配分が誤りである理由

Passage 1から3にかけて、難度は上がります。 Passage 3は語彙も構文も抽象度が高くなります。

均等に20分ずつ割ると、最も処理コストの高いPassage 3に、疲労した状態で最も少ない余力を割り当てることになります。これは設計として逆です。

推奨する配分

Passage 時間 考え方
Passage 1 15〜16分 最も易しい。ここで時間を貯める
Passage 2 19〜20分 標準
Passage 3 24〜25分 最も難しい。貯めた時間を投入する

Passage 1で20分使い切るのは、貯められたはずの4〜5分を捨てているのと同じです。ここを速く抜けられるかどうかが、Passage 3の余力を決めます。

なお、この配分はコンピューター版でも紙でも変わりません。ただしコンピューター版はスクロール操作の分だけ探索コストが上がるため、練習段階から画面で解いておく必要があります。

時計の見方を決めておく

配分を決めても、確認するタイミングを決めていなければ機能しません。

見るのは2回だけで足ります。

  • Passage 1を解き終えた時点:16分を超えていたら、Passage 2で巻く
  • Passage 2を解き終えた時点:36分を超えていたら、Passage 3で捨てる問題を決める

頻繁に時計を見るのは逆効果です。 確認するたびに読解が中断し、返り読みの原因になります。

捨てる判断をルール化する

40問はすべて1点です。難問1問に5分かけることは、易問5問を捨てるのと同じです。

捨てる基準を、事前に決めておいてください。

基準:1問に2分以上かけない。 2分経っても該当箇所が見つからないなら、推測で埋めて次に進みます。

IELTSリーディングに減点はありません。空欄にするメリットはゼロです。分からない問題も必ず何かを書いてください。特にTrue/False/Not Givenは3択なので、埋めるだけで期待値があります。

そして、捨てた問題に戻らないでください。 戻ると、また同じ場所で止まります。最後に時間が余ったときだけ、まとめて見直します。

まとめ

IELTSリーディングの時間配分は、配分表を写しても改善しません。

  • 時間切れの原因は①返り読み ②設問往復 ③語彙処理での停止の3つ。対処はまったく違う
  • 「速読の練習」はどれにも直接効かない。速度は3つを潰した結果として上がる
  • 原因の特定は、時間を計って解く → 時間無制限で続ける → もう一度計って解くの3ステップで切り分けられる
  • 配分は均等ではなく、Passage 1で貯めてPassage 3に投入する(15〜16分/19〜20分/24〜25分)
  • 時計を見るのは2回だけ。頻繁な確認は読解を中断させる
  • 1問2分で見切る。 減点はないので必ず埋め、捨てた問題には戻らない

配分表が効くのは、原因が潰れている人だけです。まず自分の原因を1つに絞ってください。

自分の原因が3つのどれか、判断できない方へ

この記事のセルフテストは、原因を絞るための最低限の手順です。ただし、返り読みは自覚しにくいという難しさがあります。

読んでいる本人には、戻っている感覚がありません。「難しい文だから丁寧に読んだ」としか感じられない。だから「もっと速く読もう」という誤った対策に向かい、処理の形は変わらないまま、雑に読むだけになります。

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FAQ

Q. Passageを解く順番は変えたほうがいいですか?

A. 原則として1→2→3の順で解いてください。難度は後ろほど上がるため、易しいものから処理するほうが時間を貯められます。ただし、Passage 1に苦手な設問形式(見出し選択など)が集中している場合、その形式だけ後回しにする判断は有効です。

Q. 先に設問を読むべきですか、本文を読むべきですか?

A. 設問を先に見てください。ただし全部を読み込むのではなく、形式と探すべきキーワードを把握する程度で十分です。設問の細部まで読み込むと、それ自体が時間を消費します。

Q. 時間無制限なら全問正解できます。速く読む練習をすべきですか?

A. 「速く読む練習」ではなく、返り読みが起きているかを先に確認してください。時間無制限で正解できるなら読解力は足りており、処理の形(前から確定させているか)が問題である可能性が高い。雑に速く読んでも正答率が落ちるだけです。

Q. 未知語が多すぎて時間内に終わりません。

A. 1段落に3語以上の未知語があるなら、語彙が主要因です。この場合、時間配分の工夫では解決しません。必要語数から逆算した語彙学習が先になります。ただし本番までの時間が短いなら、設問に関係しない未知語は飛ばすというルールだけでも失点は減ります。

Q. コンピューター版と紙で、時間配分は変えるべきですか?

A. 配分そのものは変えません。ただしコンピューター版はスクロール操作の分だけ探索に時間がかかるため、練習段階から画面で解いて操作に慣れておく必要があります。日本国内は2026年9月以降コンピューター版のみです。

Q. 見直しの時間は取るべきですか?

A. 全問解き終えることが優先です。見直しに5分を残すより、その5分で未解答の問題を減らすほうが期待値が高い。空欄は確実に0点、推測は0点ではありません。

参考情報・出典

  • Reading の形式(3 Passage・40問・60分、転記時間なし、1問1点):IELTS公式が公開する試験形式
  • ペーパー版終了:公益財団法人 日本英語検定協会「2026年6月から8月にかけたIELTSペーパー版の順次提供終了およびIELTSコンピューター版での提供継続」(2026年3月27日)
  • 記載の時間配分は、上記の試験構造と難度の傾斜にもとづく設計です
  • 試験仕様は2026年7月31日時点の情報に基づきます