英文が読めない原因を診断する|単語も文法も分かるのに読めない人へ

単語帳は一通り終えた。文法書も読んだ。それなのに、TOEIC の長文や仕事の英文メールになると意味が取れない。1文ずつ調べれば分かるのに、続けて読むと崩れる。

この記事は、その「読めない」の原因を切り分ける記事です。想定読者はTOEIC の勉強や英文メールで英語を読む社会人で、大学受験の長文読解(構文分析・設問の先読み)は扱いません。

先に結論を言うと、単語も文法も分かるのに読めない場合、足りないのは知識ではありません。知っている語と文法を、英語の語順のまま前から処理する力が未訓練なだけです。処理の未訓練は症状ごとに原因が違い、やるべき訓練も違います。

ここでやるのは、48語の英文を1回読んで症状を判定し、次に読む記事(訓練)へ振り分けることだけです。対処法は各記事が担当します。

結論|「読めない」は知識不足と処理の未訓練の2種類がある

まず理解したいのは、「英文が読めない」には2つの別の原因があることです。

  1. 知識の不足:語彙が足りない、文法・構文を知らない
  2. 処理の未訓練:知っている語と文法を、前から順に、時間内に、意味として保持しながら処理できない

「単語を増やす」「文法をやり直す」は1の人には正しい対策です。しかし、単語も文法も分かるのに読めない人は2に当たり、知識を増やしても症状は動きません。

この構造は、リスニングの「単語は知っているのに聞き取れない」と同じです。あの原因は語彙の量ではなく、文字で覚えた語彙が音として認識できないことです(単語は知っているのに聞き取れない理由)。リーディングも同じで、「意味を知っている」と「文の中で処理できる」は別の能力です。

処理の力は、もう少し分解できます。

  • 順序:英語の語順のまま、前から意味を確定できるか(戻らずに読めるか)
  • 速度:その処理が、時間内に終わる速さで自動化されているか
  • 保持:処理した意味を、次の文・次の段落まで抱えていられるか

どこが未訓練かで症状が変わります。次の診断で特定します。

「読めない」を知識不足と処理の未訓練の2種類に分け、処理を順序・速度・保持に分解した図

記事内診断|48語の英文を1回読んで、症状を特定する

診断は2段階です。まず知識側に穴が無いかを確かめ、無ければ処理側の3症状のどれかを判定します。

手順

次の英文を、いつもの読み方で1回だけ黙読してください。読み始める前に時計を見て、時間を計ります。

Thanks for sending the revised proposal. Before we share it with the client, I’d like you to check whether the delivery dates in the second section still hold, since the supplier told us yesterday that the parts we ordered in July will arrive two weeks later than planned.

読み終えたら、英文を見ずに次の3つに答えてください。

  1. 知らない語はあったか。 あったなら何語か(hold は「有効である」という意味です。この意味を知らなかった場合も、知らない語に数えてください)
  2. 読んでいる途中で、視線が前に戻ったか。 特に whether 以降で、文末まで行ってから戻らなかったか
  3. 英文を見ずに、次の2つを日本語で言えるか。「相手に何を確認してほしいのか」「なぜか」
訳と問い3の答え(3つの問いに答えてから開いてください)

|修正版の提案書を送ってくれてありがとうございます。クライアントに共有する前に、第2セクションの納期がまだ有効かどうかを確認してほしいのです。7月に発注した部品が予定より2週間遅れて届くと、昨日サプライヤーから連絡があったからです。

問い3の答え|確認してほしいのは「第2セクションの納期がまだ有効か」。理由は「7月に発注した部品が2週間遅れるとサプライヤーから昨日連絡があった」。

3つに答えたら、同じ英文をもう一度、今度は声に出して読んでください。

  1. 音読にかかった時間は、さきほどの黙読と比べてどうだったか。 音読は2回目の読みで、意味はすでに取れている分、有利です。それでも黙読が音読と同じか、音読のほうが速かったなら、②の疑いです。

判定

問い1で知らない語が2語以上あった人は、知識側の穴が先です。読解の研究では、テキストの語の98%を知っていることが理解の目安とされています(Hu & Nation 2000)。48語なら知らない語1語で約98%、2語以上ならその線を割ります。語彙が足りない場合は、英単語の覚え方で埋めてから、もう一度この診断をやり直してください。

知らない語が1語以下で、それでも読めなかった人は処理側の可能性があります。ただし、知らない語が1語以下でも、時間をかけて訳が組めない人は文法が先です(よくある質問の1問目で確かめてください)。文法にも穴が無ければ、問い2〜4の答えで症状が分かれます。

症状診断で起きたこと未訓練の処理送り先
① 1文が長くなると崩れる問い2で戻った。whether 以降を文末まで見てから訳し直した順序(返り読み・チャンク処理)スラッシュリーディング/チャンクリーディング
② 読むのが遅い問い2は戻らず問い3にも答えられたが、問い4で黙読が音読と同じか、それより遅かった速度(処理の自動化)リーディング速度
③ 読んでいるのに頭に残らない問い2は戻らなかったが、問い3に答えられなかった保持(意味の保持・要約)要約/チャンクの蓄積

複数当てはまった人は、①を最優先してください。①が残っている限り、②と③は①の結果として起きるからです。②と③の両方に当てはまる場合は、③を先にしてください(全体の順番は「まとめ」で示します)。

4つの問いから3つの症状へ振り分ける診断図

症状①|1文が長くなると崩れる人──返り読み・チャンク処理の未訓練

問い2で視線が戻った人の症状です。短い文は読めるのに、whethersince で文が伸びた途端に意味が消える。

なぜ起きるのか

理由はシンプルです。英語は「主語→動詞→目的語」の順で意味が流れ、日本語は動詞が最後に来ます。このずれを埋めるために文末まで目を走らせ、後ろの情報を前に戻して訳文を組み立てる。これが返り読みです。

問題は、1文が長くなると戻すべき情報の量が、頭に抱えておける量を超えることです。人が一度に抱えられる意味のかたまりは、およそ4±1個とされています(Cowan 2001)。診断の第2文は42語あり、1語ずつ抱えて文末まで運べば上限を大きく超え、文末に着いた時点で前半が消えます。

短い文で読めていたのは、抱える量が上限に収まっていたからです。知識は足りています。足りないのは、前から意味を確定して戻らない処理です。

自分で確かめる

診断の第2文を、意味のまとまりごとに前から読んでください。1区切りずつ意味を確定し、前には戻らない。右の日本語は訳文ではなく、その区切りで確定する意味です。

区切りその場で確定する意味
Before we share it with the client,クライアントに共有する前に
I’d like you to check確認してほしい
whether the delivery dates in the second section第2セクションの納期が
still hold,まだ有効かどうかを
since the supplier told us yesterdayサプライヤーが昨日言ってきたので
that the parts we ordered in July7月に発注した部品が
will arrive届く
two weeks later than planned.予定より2週間遅れて

区切って読めば意味が取れた人は、症状①で確定です。知識は足りているという証拠が、いま自分で取れました。

送り先

区切って前から読む手順と、戻らずに読み切る訓練は、スラッシュリーディングのやり方が担当しています。区切る単位である「チャンク」をどう認識し、どう手持ちを増やすかは、チャンクリーディングとはが担当です。①の人は、この順で読んでください。

症状②|読むのが遅い人──処理速度が未訓練

問い2で戻らず問い3にも答えられたが、問い4で黙読が音読と同じかそれより遅かった人の症状です。意味は取れるが、時間が足りない。

ここでは入口だけを示す

この症状は、順序の処理はできているのにその処理が自動化されていない状態です。何が速度を縛っているかの分解は、次の記事に委ねます。

問い2で戻った人は、②ではなく①から始めてください。

送り先

速度を落としている読み方の癖の分解と、時間を計って速度を上げる訓練の設計は、英語のリーディング速度を上げる方法が担当しています。

症状③|読んでいるのに頭に残らない人──意味の保持が未訓練

問い2で戻らず、問い3で「何を確認してほしいのか」「なぜか」が言えなかった人の症状です。読んでいる間は分かった気がするのに、残らない。

なぜ起きるのか

原因は、処理した結果を「訳文」の形で保持しようとしていることにあります。

読みながら「修正版の提案書を送ってくれてありがとう、クライアントに共有する前に……」と日本語の文を頭の中に作っていた人は、48語分の訳文を抱えようとしていたことになります。訳文は語数が多く、意味のかたまりとしては粗い。4±1個の枠には入りきりません。

残すべきなのは訳文ではなく意味の骨格です。この英文なら「納期の確認依頼」と「理由は部品の2週間遅延」の2点で、抱える単位は2個で済みます。読みながら骨格を作る操作、つまり要約が未訓練だと、読んだ端から意味がこぼれます。

もう1つ、読む前に目的を決めていないことも保持を妨げます。「相手は自分に何をしてほしいのか」と決めて読めば、I'd like you to check に着いた時点で骨格の1点目が立ちます。目的が無いと、全部の語が同じ重さになります。

自分で確かめる

同じ英文をもう一度、今度は「相手は自分に何をしてほしいのか」を決めてから読んでください。読み終えて骨格の2点が言えたなら、症状③で確定です。保持の操作だけが抜けています。

送り先

読んだ内容を骨格に圧縮する操作は、英語の要約のやり方が「5つの圧縮操作」として手順化しています。③の人はまずここです。保持する単位そのものを大きくする、つまり語ではなくチャンクで抱える力は、チャンクリーディングとはの「チャンクの蓄積」の節が担当です。

よくある質問

Q. 文法をやり直すべきか、単語を増やすべきか、読む量を増やすべきか

A. 順番は診断で決まります。問い1で知らない語が2語以上なら語彙が先です。知っている語で組まれた文を、時間をかけても訳せないなら文法が先です。たとえば次の文をゆっくり読んでも意味が取れない場合です。

Had the supplier informed us earlier, we could have adjusted the schedule. (サプライヤーがもっと早く知らせてくれていたら、日程を調整できたでしょう)

時間をかければ読めるなら、知識は足りています。その場合、読む量を増やす前に処理を作ってください。 処理が無いまま量を読んでも、返り読みの回数が増えるだけです。知っている文法を「処理できる」状態に変える工程は英語の精読のやり方が、多読がどんな条件で効くかは英語の多読の効果が担当しています。

Q. 返り読みは直せるのか

A. 直せます。返り読みは性格や癖ではなく、前から処理する訓練を受けていないだけです。意味のまとまりで1かたまりずつ提示して処理させる訓練で、日本人学習者の語の統合処理が4週間で改善しうるという報告があります(Kosaka 2024)。単一の研究なので期間は目安です。

Q. 頭の中で音読してしまうのは直すべきか

A. 症状によります。②の人は直す対象です(理由はリーディング速度の記事を参照)。①の人には、区切って声に出して前から読む練習が、戻らない処理を体に入れる手段になります。まず①を消してください。

Q. 初見の英文がスラスラ読める人は何が違うのか

A. 知識の量ではなく、処理が自動化されている点です。チャンクで抱え、前から意味を確定し、訳文を作らず骨格だけを残す。この3つが意識せずに動いています。どれも訓練の対象です。

まとめ|自分の症状から次にやることを決める

判定原因次に読む記事
知らない語が2語以上知識(語彙)語彙を埋めてから再診断
時間をかけても訳せない知識(文法)英語の精読のやり方
① 長い文で戻る処理・順序スラッシュリーディングのやり方 → チャンクリーディングとは
② 黙読が音読と同じ速さ処理・速度英語のリーディング速度を上げる方法
③ 読み終えると残らない処理・保持英語の要約のやり方 → チャンクリーディングとは

複数当てはまった人の順番は、知識 → ① → ③ → ② です。①が残っている限り②③は①の結果として起き、②は最後に計って詰めます。

複数の症状が当てはまるときに取り組む順番(知識→順序→保持→速度)を示した図

症状が1つに絞れない方へ

①と③の両方が当てはまる人は少なくありません。処理の未訓練は複数が同時に出ることが多いからです。

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参考情報・出典

  • Cowan, N. (2001). The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity. Behavioral and Brain Sciences, 24(1), 87–114.(意味のかたまりの保持上限 4±1)
  • Hu, M., & Nation, I. S. P. (2000). Unknown vocabulary density and reading comprehension. Reading in a Foreign Language, 13(1), 403–430.(既知語カバレッジ98%)
  • Kosaka, T. (2024). The effects of chunk reading strategy training on the word chunking skills of L1-Japanese English learners. System (Elsevier).(チャンク読み訓練・4週間)
  • 診断用英文(48語)と例文は The Past の書き下ろしです。症状①〜③と原因の対応は、上記の研究と The Past のリーディング指導に基づく整理です

記事の執筆者 メイソン(株式会社The Past 代表 / 椿祐輔)

VERSANT満点(90点)、CEFR C2レベルの英語力を有する。フィリピンの語学学校で10年以上にわたりカリキュラムと教材開発に従事し、述べ5,000人以上の多国籍な英語学習者(日本、中国、台湾、ベトナム、ロシア等)の学習をサポート。言語学と音声学に精通しており、現在は株式会社The Pastの代表取締役、カリキュラム開発者として、グローバルな英語教育を推進している。