ChatGPTで英検の面接練習はできるか|採点基準を埋め込む手順
英検の二次試験対策で、面接の相手が見つからない。ChatGPTに面接官役をやってもらえないか。
やってもらえます。ただし「英検の面接官になって練習相手をして」と頼んだ場合、返ってくるのは英検の面接ではありません。
AIは英会話の練習相手としては優秀です。質問を投げ、こちらの答えに反応し、会話を続けてくれます。しかし英検の二次試験は会話ではなく測定です。評価の観点が決まっており、その観点に照らして採点されます。
基準を渡さずに練習すれば、AIは「良い会話」を目指します。良い会話と高得点の解答は、一致しません。
この記事では、英検の評価観点をプロンプトに埋め込み、AIに基準準拠の採点をさせる手順を示します。同時に、AIには原理的に判定できない観点も明確にします。ここを混同すると、練習した気になって本番で落ちます。
英作文の添削でAIをどこまで信用してよいかはChatGPTの英語添削は信用してよいかで扱っています。本記事は英検の評価観点への接続に絞ります。
結論:AIが判定できるのは5観点のうち3つだけ
先に結論を示します。
英検準1級の二次試験で評価対象とされているのは、次の5つです。
| 観点 | 見られている内容 | テキストのAIで判定できるか |
|---|---|---|
| ナレーション | 4コマの流れを論理的に、時制正しく述べられるか | できる |
| 応答内容 | 質問に適切に答え、根拠を示せているか | できる |
| 語彙・文法 | 表現の多様性と正確性 | できる |
| 発音 | 明瞭さ・聞き取りやすさ | できない(音声情報が必要) |
| アティチュード | 積極的に伝えようとする姿勢、明瞭な発声 | できない(対面・音声の情報が必要) |
つまり、テキストでAIと練習して整えられるのは5分の3です。
そして厄介なのは、残りの2つが、日本語話者にとって落としやすい観点だということです。内容を完璧に準備しても、声が小さく、詰まったまま黙っていれば、そこは評価されません。
したがって、正しい使い方は次のようになります。
- AIで「内容・構成・語彙文法」を基準まで引き上げる(テキストで完結する)
- 音声化の練習は、AIとは別に自分で行う(録音して自己確認する)
この2つを混ぜないでください。AIに「発音も見て」と頼めば、AIは何か答えます。しかしその答えに情報の裏づけはありません。

なぜ「面接練習して」では機能しないのか
プロンプトの前に、失敗する理由を押さえます。
「英検準1級の面接官になってください」と頼むと、AIは面接らしい質問を出してきます。一見それらしく進みますが、次の3つが起きます。
① 質問の形式が本番とずれる
英検準1級の二次試験は、形式が固定されています。1分の考慮時間のあと、4コマイラストのナレーションを2分。そのあとNo.1〜No.4の質問。この構造を指定しなければ、AIは自由な質疑応答を作ります。
② 評価が「良かったです」で終わる
基準を渡していないので、AIは一般的な感想を返します。「よく答えられていますね。もう少し具体例があるとさらに良いです」といった返答は、どの観点で何点相当なのかを示していません。
③ AIが会話を成立させようとして、こちらの不足を補ってしまう
これが最も危険です。答えが曖昧でも、AIは意図を汲んで会話を続けます。本番の面接官は汲んでくれません。 汲んでもらった状態で練習を重ねると、通じている感覚だけが育ちます。
原因はすべて同じで、判定の基準を渡していないことです。 基準を渡せば、判定は再現します。
使う前に:英検の評価観点を確認する
プロンプトに埋め込む材料を整理します。
二次試験(面接)
準1級は約8〜10分の面接で、流れは次のとおりです。
- 入室・簡単な日常会話
- 問題カードを見て1分間の考慮
- 4コマイラストのナレーションを2分
- No.1:イラストに関連した質問(カードを見ながら回答可)
- No.2・No.3:カードのトピックに関連した、受験者の意見を問う質問
- No.4:社会性のある質問
評価対象は前述の5観点(ナレーション/応答内容/語彙・文法/発音/アティチュード)です。
2級は、パッセージと3コマのイラストが印刷された問題カードを使い、音読・パッセージについての質問・イラストの説明・受験者自身の意見という流れになります。評価対象として公式に挙げられているのは、音読・質問への応答・アティチュードです。
注意:観点ごとの細かい配点は公表されていません。 「この観点が何点」という数字をAIに答えさせても、それは根拠のない数字です。使うのは観点であって、配点ではありません。
一次試験(ライティング)
英作文は級によって構成が異なります。2024年度のリニューアル以降、1級・準1級・2級では意見論述と要約の2題が出題されます。
| 級 | 意見論述の語数目安 | 要約の語数目安 |
|---|---|---|
| 2級 | 80〜100語 | 45〜55語 |
| 準1級 | 120〜150語 | 60〜70語 |
| 1級 | ― | 90〜110語 |
採点は「内容・構成・語彙・文法」の4観点です(準2級・3級のEメール問題は「内容・語彙・文法」の3観点)。
語数は必ずプロンプトに入れてください。 AIは指定しなければ自由な長さで書きます。語数の逸脱は減点対象です。
プロンプト① 面接シミュレーション(準1級・二次試験)
まず、本番の構造を再現させます。採点はさせません。 質問を出させるだけです。
▼ 以下のプロンプトをそのままコピーして使えます
「フォローアップを返すな」と明示しているのがポイントです。これを入れないと、AIは会話を成立させようとして、こちらの答えを整理して返してきます。本番の面接官は無言で次に進みます。
プロンプト② 応答を基準で採点させる
面接が終わってから、別のプロンプトで採点させます。同じチャットで続けて構いません。
▼ 以下のプロンプトをそのままコピーして使えます
このプロンプトが効く理由
「判定不可」と明記させている。 これを入れないと、AIは発音についても何か言います。もっともらしい指摘が返りますが、音声情報がない以上、それは推測です。 推測を受け取ると、直す必要のないものを直すことになります。
点数を禁止している。 英検は観点別の配点を公表していません。AIに「準1級なら○点相当」と言わせても、その数字には根拠がありません。数字があると人は安心してしまうので、あえて禁じます。
原文の引用を求めている。 引用させると、指摘が具体的な箇所に紐づきます。「全体的に説明が浅いです」のような使えない答えが返らなくなります。
「問題のない箇所は書き換えるな」と指示している。 これがないとAIは全体を書き直します。書き直された解答は自然ですが、自分の弱点がどこだったかが消えます。
プロンプト③ ライティングを4観点で採点させる
一次試験の英作文でも、同じ設計が使えます。
▼ 以下のプロンプトをそのままコピーして使えます
語数の確認を最初にやらせているのが実務上の要点です。内容が良くても語数が目安から外れていれば、そこが最初の失点になります。AIは指示しないと語数を数えません。
返ってきた採点を検証する
AIの指摘を、そのまま受け入れないでください。次の3つで検証します。

① 立場や内容が変わっていないか
最も多い事故がこれです。「より自然に」した結果、主張が弱まることがあります。
英検のライティングでも二次試験でも、自分の意見を明確に示すことが評価対象です。I think we should ban it. を It might be worth considering some restrictions. に直されたら、それは自然になった代わりに立場が消えています。
② 直さなくてよい箇所まで直していないか
元の解答と修正版を並べて、変更点を数えてください。 10文の英作文で修正が30箇所あるなら、それは添削ではなく書き直しです。書き直された文からは学べません。
③ 級のレベルに合っているか
AIは指示しないと、難易度の高い表現を提案します。 2級の解答に1級レベルの語彙を入れられても、本番で自分が使える保証はありません。
うろ覚えの語を使って誤用すれば、語彙の観点で加点どころか減点材料になります。 「自分が確実に使える範囲で言い換えて」と追加指示するのが安全です。
AIで代替できない部分をどうするか
冒頭で示したとおり、発音とアティチュードはAIでは扱えません。 ここを空白のまま本番に行くと、内容の準備が点に変わりません。
発音
やることは自己録音です。プロンプト①で生成した質問に対し、書くのではなく声に出して答え、録音してください。
そのうえで、自分の音声を聞き直します。確認するのは3点です。
- 母音が日本語の母音に置き換わっていないか
- 強勢の位置が正しいか(語レベル・文レベル)
- リズムが平坦になっていないか
この3層で直す手順は英語の発音が通じない原因にまとめています。
補足すると、自分で発音できる音は聞き取りやすくなります。 二次試験では面接官の質問を聞き取る必要もあるため、発音の練習はそのまま聞き取りにも効きます。
アティチュード
評価されるのは、積極的に伝えようとする姿勢と、明瞭な発声です。入室から退室までが対象になります。
ここで失点する典型は、答えが浮かばずに黙ってしまうことです。沈黙は評価材料になりません。
対処は、詰まったときに黙らないための表現を用意しておくことです。
これらをとっさに出る状態にしておけば、考える時間を作りながら発話を継続できます。知っているだけでは出ません。 声に出して繰り返し、口の動きとして入れてください。
なお、自分ひとりで発話の瞬発力を鍛える方法は英語の独り言トレーニングで扱っています。
AI練習の限界を、正しく理解しておく
最後に、この方法の射程を明確にしておきます。
AIは、基準に照らした指摘を返せます。 基準を渡せば、内容・構成・語彙・文法については実用的な精度で判定します。ここは代替可能です。
一方、AIは「本番の緊張下で、これができるか」を測れません。 テキストで書けば整った答案が作れても、面接室で1分の考慮時間しかない状況で同じものが出るとは限りません。
したがって、練習の最終段階では必ず時間制限をかけてください。 プロンプト①を使うとき、考慮時間は本当に1分で区切り、ナレーションは2分で打ち切る。制限のない練習は、本番の予測になりません。
そして、AIが汲んでくれないように指示することの重要性を、もう一度強調しておきます。「フォローアップを返すな」「補うな」という指示がなければ、AIは常にこちらを助けます。助けられた状態での成功体験は、本番では再現しません。
まとめ
ChatGPTで英検の面接練習はできます。ただし条件があります。
- 評価対象5観点のうち、テキストのAIで判定できるのは「ナレーション・応答内容・語彙文法」の3つ
- 発音とアティチュードは判定できない。 AIに「判定不可」と明記させ、推測させない
- 「面接官になって」だけでは機能しない。形式・観点・禁止事項をプロンプトに埋め込む
- 採点させるときは点数を出させない。 英検は観点別配点を公表していない
- 原文の引用を求め、問題のない箇所は書き換えさせない
- ライティングは語数の確認を最初にやらせる(準1級の意見論述120〜150語/要約60〜70語、2級は80〜100語/45〜55語)
- 発音とアティチュードは、自己録音と、詰まったときの表現の準備で別途埋める
AIが使えないのではありません。頼み方が曖昧だから、返ってくる答えも曖昧になるだけです。基準を渡せば、判定は再現します。
自分の弱点がどの観点に当たるか、判断できない方へ
この記事の手順は、AIの指摘を取捨選択できることを前提にしています。
ところが、ここが最も難しい。返ってきた10個の指摘のうち、どれが自分の合否を分ける1つで、どれが無視してよいものかは、基準を理解していないと判断できません。 すべて受け入れると自分の書き方が消え、すべて拒否すると直りません。
そして、AIは「あなたにとって何が最優先か」を知りません。優先順位はAIには出せないのです。
The Past の無料eBook『シャドーイングを今すぐ捨てよ』(LINE登録)では、英語力を能力単位に分解し、効かない練習に時間を使わないための考え方を解説しています。次の受験申込の前に、一度読んでみてください。
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FAQ
Q. ChatGPTの音声機能を使えば、発音も見てもらえますか?
A. 音声で会話する機能を使えば、AIは音声を受け取ります。ただし、英検の「発音」の観点に照らした判定ができるかは別問題です。返ってくるのは一般的な印象であり、どの音がどう外れているかの特定には至らないことが多い。自己録音を自分で聞き直し、母音・強勢・リズムの3層で確認するほうが確実です。
Q. 無料版でも十分ですか?
A. 本記事のプロンプト設計を守るほうが、モデルを上げるより効果が大きい場面が多いです。ただし、長い面接シミュレーションを1つのチャットで通す場合、文脈の保持能力で差が出ます。
Q. AIが作った4コマの情景は、本番の問題と似ていますか?
A. 形式は再現できますが、実際の問題の傾向とは異なります。過去問の4コマを使うほうが精度が上がります。 その場合、プロンプト①の手順1を飛ばし、過去問の情景を自分で入力してください。
Q. 2級でも同じプロンプトが使えますか?
A. 使えます。ただし2級の二次試験は音読・パッセージについての質問・イラスト説明・受験者自身の意見という流れなので、プロンプト①の手順を2級の形式に書き換えてください。評価観点も「音読・質問への応答・アティチュード」に差し替えます。
Q. AIの採点結果を信じて、本番でも同じ点が出ますか?
A. 出るとは限りません。AIが判定しているのは内容・構成・語彙・文法だけで、発音とアティチュードは含まれていません。 また、本番は時間制限と緊張がかかる環境です。AIの評価は「準備の完成度」の目安であって、本番スコアの予測ではありません。
Q. 面接練習の相手は、AIより人間のほうがいいですか?
A. 発音とアティチュードを見てもらう段階では、人間が必要です。一方、内容・構成・語彙文法を詰める段階では、AIのほうが回転数が上がります。工程で使い分けてください。 内容をAIで固めてから、人に見てもらうほうが、人の時間を有効に使えます。
参考情報・出典
- 英検準1級 二次試験の形式(約8〜10分、1分の考慮時間、2分のナレーション、No.1〜No.4)および評価対象(ナレーション/応答内容/語彙・文法/発音/アティチュード):公益財団法人 日本英語検定協会および公式対応教材の公開情報
- 英検2級 二次試験の評価対象(音読/質問への応答/アティチュード):同上
- 2024年度リニューアルによる英作文2題化(意見論述+要約/準2級・3級はEメール):日本英語検定協会「2024年度 実用英語技能検定 問題形式リニューアル」
- 語数の目安および採点4観点(内容・構成・語彙・文法):公開されている問題形式情報
- 観点ごとの配点は公表されていません。本記事でも点数化は行いません。
- 試験仕様は2026年7月31日時点の情報に基づきます。受験前に公式サイトで最新の形式をご確認ください。