英語のRとLの発音の違い|舌先と緊張で作り分ける

英語を長く勉強してきた人でも、RとLだけは直らない、という状態は珍しくありません。right と light を言い分けられない。read と lead を聞き返される。「Rは巻き舌」「ゥラと言えばいい」という断片的な知識で練習してみたが、直った実感がない。

先に答えを言います。RとLの違いは、次の2点で決まります。

Lは、舌先を上の前歯の付け根(歯茎)に当てて、力まずに声を流す音です。Rは、舌先をどこにも触れさせず、舌全体を後ろに引いて力を入れ、唇を軽く丸めて出す音です。

つまり、分けるレバーは「舌先を当てるか・当てないか」と「舌に力を入れるか・入れないか」の2つだけです。巻き舌の練習は必要ありません。

ただし、作り方を知っただけでは、この2つは区別できるようになりません。日本人がRとLを混同する原因は、口ではなく「音の地図」にあるからです。日本語のラ行は、RともLとも違う第3の音であり、英語の2つの音は聞いた瞬間にこの1つのカテゴリへ吸収されます。聞き分けられない音は、自分の発音のずれも判定できません。

この記事では、RとLの違いを構造から説明し、混同の原因を日本語の音の仕組みで特定したうえで、「聞き分け→作り分け」の順で進む練習手順を提示します。記事の途中には、ミニマルペア(1音だけ違う単語のペア)を音声で聞き分け・作り分けできるトレーニングを用意しました。読み終える頃には、RとLを「なんとなく」ではなく、2つのレバーで意図的に作り分ける道筋が見えているはずです。

目次

結論 ― RとLの違いは「舌先の接触」と「舌の緊張」で決まる

まず、2つの音の対比を整理します。

L R
舌先 上の歯茎に当てる どこにも触れない
舌の緊張 力まない 舌全体を後ろに引いて力を入れる
自然なまま 軽く丸める
音の印象 澄んだ入り うなるような、こもった入り

Lの作り方はシンプルです。舌先を上の前歯の付け根に当て、当てたまま、舌の横から声を流します。日本語のラ行と決定的に違うのは「弾かない」ことです。ラ行は舌先が歯茎を一瞬叩いて離れますが、Lは接触を保ったまま音を出します。

Rは逆です。舌先はどこにも触れさせません。舌全体を後方に引き、舌の奥に力を入れて構え、唇を軽く丸めます。うなるような「ゥー」の構えから入ると、音が作りやすくなります。

ここで「Rは巻き舌では?」という疑問が出ます。巻く必要はありません。英語話者の中にも、舌先を反らせるタイプと、舌の中央を盛り上げて奥に引くタイプが併存するとされています。共通しているのは「舌先がどこにも触れない」ことと「舌に緊張がある」ことであり、巻くこと自体は本質ではないのです。

なお、RとLは英語のおよそ44音素(子音24・母音20)のうちの2つにすぎません。音素全体の地図は発音記号44音素の練習法で一覧にしています。この記事では、日本人にとって最難関のこの1ペアだけを深掘りします。

RとLを4項目で左右比較する表。舌先(Rはどこにも触れない/Lは上の歯ぐきにしっかり触れる)、舌の緊張(Rは奥に引いて緊張させる/Lは力を抜く)、唇(Rは軽く丸める/Lは丸めない)、音の印象(Rはこもった音/Lは澄んだ音)。結論「違いは舌先の接触と舌の緊張で決まる」

なぜ日本人はRとLを混同するのか ― 原因は耳ではなく「音の地図」

作り方がこれだけ違うのに、なぜ混同するのか。理由を構造で説明します。

日本語のラ行は「たたき音」― RでもLでもない第3の音

日本語のラ行は、基本的に、舌先で上の歯茎を一瞬だけ弾く「たたき音」です。当てたまま声を流すL とも、どこにも触れないR とも、調音の仕組みが異なります。

問題は、日本語ではこの1種類で足りてしまうことです。日本語話者の頭の中の音の地図には、「R」と「L」を置く場所が分かれていません。そのため、英語の /r/ と /l/ は、聞いた瞬間にどちらも「ラ行」という同じ引き出しに放り込まれます。第二言語習得の理論でも、外国語の音が母語の近い音に同化されると、新しい音のカテゴリを作るのが難しくなると整理されています。

つまり、RとLの混同は「2つの音を1つのカテゴリで受け取っている」というカテゴリの問題です。耳の性能の問題ではありません。

聞き分けられないのは、努力不足でもない

このカテゴリの壁は、学習歴では自動的に越えられないことが報告されています。Goto(1971年)は、日本人成人が米国人話者の音声でもLとRを聴覚的に識別できなかったこと、そして英語力が高く発音が比較的良い人でも、聞き分けは悪いままだったことを報告しました。

ここから導ける実務的な結論は2つです。第1に、聞き分けられないのはあなたの努力不足ではなく、カテゴリが未形成なだけだということ。第2に、聞き分けられない状態では、自分の発音がRとLのどちらに寄っているかも自分では判定できないということです。誤った音は、本人には正しく聞こえます。

出口はある ― ミニマルペア訓練でカテゴリは作り直せる

一方で、カテゴリは訓練で作り直せることも報告されています。Logan ら(1991年)は、多様な話者・多様な単語の自然音声を使ったミニマルペアの識別訓練で、日本人のR/Lの聞き分けが改善したと報告しました。この形式は、のちに高変動音声訓練(HVPT)と呼ばれる標準的な手法の原型になっています。

さらに Bradlow ら(1997年)は、聞き分けの訓練だけを受けた日本人話者の発音(産出)も改善したと報告しています。聞き分けと作り分けは連動している、と考えるのが自然です。

したがって、練習の順序はこう決まります。先に「聞き分け」でカテゴリを分け始め、そこに「作り分け」を重ねる。口真似から入るのではなく、耳と口を往復させながらカテゴリを作り直すのです。

「なぜ日本人はRとLを混同するのか」を課題→解決の2列で示す図。課題側:聞いた瞬間にラ行という同じ引き出しに放り込まれる/Goto 1971年:LとRを聴覚的に識別できなかった/聞き分けられない状態では自分の発音がどちらに寄っているかも判定できない。解決側:Logan ら1991年:ミニマルペアの識別訓練で聞き分けが改善/Bradlow ら1997年:聞き分けの訓練だけで産出も改善/先に聞き分けでカテゴリを分け、そこに作り分けを重ねる。結論「耳の性能ではなくカテゴリの問題」

よくある3つの失敗 ― 口真似から入ると直らない

原因がカテゴリにあると分かると、よくある練習法のどこが不十分かも見えてきます。

① 「Rは巻き舌」と覚えて、舌を巻きすぎる

巻き舌の形態模写から入ると、多くの場合、巻きすぎます。舌を強く反らせすぎると母音までこもって不自然になり、そもそも速い発話の中で毎回巻いている余裕はありません。

必要なのは巻くことではなく、「触れない」と「引いて力を入れる」の2つです。この2レバーなら、会話のスピードでも再現できます。

② カタカナの語呂合わせで済ませる

「right は『ゥライト』」といったカタカナの補助は、入口としては機能します。しかし、カタカナで近似した瞬間に、音は日本語の音節構造へ引き戻されます。ラ行のたたき音の癖、つまり「舌先で弾く」動きそのものは、カタカナでは消えません。

カタカナは補助輪です。最終的には「舌先を当てたか・触れなかったか」という身体の感覚で区別する必要があります。

③ 聞き分けを飛ばして、口だけ練習する

最も見落とされやすい失敗がこれです。聞き分けが立っていない段階で発音練習だけを重ねると、ずれた音を熱心に反復することになりかねません。誤った音は本人には正しく聞こえるため、ずれに気づく手段がないからです。誤りが繰り返しで固まる現象は「化石化」と呼ばれ、独学の発音練習が止まる中心的な理由です。この構造は英語発音の矯正で詳しく扱っています。

とくに、聞きながら同時に発声するシャドーイングは、この段階の学習者には負荷が高く、音に注意を向ける余力を奪います。The Past がシャドーイングを初中級者の主軸に置かない理由は、シャドーイングは意味ない?で根拠とともに詳述しています。主軸に置くべきは、「聞く→止める→言う」を分離できる Listen & Repeat です。

The PAST式 ― RとLを作り分ける手順

ここからは、2レバーを使った具体的な手順です。順序は「聞き分け→単音→語→文」。単音の作り方はLから固めます。

Step 1:Lを作る ― 舌先を「当てて、力まない」

舌先を、上の前歯のすぐ裏の膨らみ(歯茎)に当てます。そして当てたまま、舌の横側から声を流し続けます。「ルー」と言いながら舌先を離さない、と意識すると感覚が掴めます。ラ行のように弾いて離した瞬間、それは日本語の音に戻ります。

1つだけ注意があります。feel や well のような語末のLは、舌先を当てたまま響きが「ウ」に近い暗い音になります。light のLと同じ音を出そうとして明るく発音すると、かえって不自然になります。語末は「暗く沈むL」で正常です。

Step 2:Rを作る ― 舌先を「触れさせず、引いて力を入れる」

舌先をどこにも触れさせないまま、舌全体を口の奥へ引きます。このとき舌の奥に力が入っている感覚があれば正解です。唇を軽く丸め、うなるような「ゥー」の構えを作ってから “right” と言うと、Rの入りが作れます。

セルフチェックの基準は接触です。発音の最中に舌先がどこかに当たったら、それはRではありません。鏡よりも「当たったかどうか」の感覚のほうが確実な判定材料になります。

Step 3:位置で難度が変わる ― 語頭から順に広げる

同じRとLでも、単語の中の位置によって難しさが変わります。練習は次の順で広げます。

  • 語頭(right / light)… 構えを作る時間があり、最も練習しやすい
  • 子音のあと(crowd / cloud、pray / play)… 前の子音から素早く移行する必要がある
  • 語末・母音のあと(fear / feel、car)… Rは母音に溶け込み、Lは暗く沈む。判別も産出も最難関

一度に全部やる必要はありません。1日に扱うのは1〜2ペアで十分です。ペアを絞って「当てたか・触れなかったか」を確認しながら反復するほうが、大量の単語を流すより確実に定着します。

「位置で難度が変わる」の3ステップ図。01語頭(right / light、構えを作る時間があり最も練習しやすい)→02子音のあと(crowd / cloud、pray / play、前の子音から素早く移行する必要がある)→03語末・母音のあと(fear / feel、car、Rは母音に溶け込みLは暗く沈む、判別も産出も最難関として強調)。結論「1日に扱うのは1〜2ペアで十分」

記事内トレーニング ― ミニマルペアで「聞き分け→作り分け」を体験する

ここまでの手順を、約8分で体験します。題材はミニマルペア6組と、ビジネス場面の短文2文です。ミニマルペアの識別訓練は、日本人のR/Lの聞き分けを改善したと報告されている形式です。各Practiceの冒頭に「いまどの能力を鍛えているか」を1行で示します。

Practice 1:ペアを聞き比べる(約1.5分)

鍛える能力:音の識別 ― RとLを別の音として聞き取れているか。

下のペア表を見ながら、上の音声を1回通して聞いてください。各ペアが「別の音に聞こえたか」「同じに聞こえたか」を判定し、同じに聞こえたペアの数を数えておきます。これが、あなたの知覚の現在地です。

【Minimal Pairs】 1. right(正しい・右)/ light(光・軽い) 2. read(読む)/ lead(率いる) 3. rock(岩)/ lock(鍵) 4. correct(正しい・訂正する)/ collect(集める) 5. crowd(群衆)/ cloud(雲) 6. fear(恐れ)/ feel(感じる)

Practice 2:スローで「入り」の違いを聞く(約2分)

鍛える能力:音の識別 ― Rのこもった入りと、Lの澄んだ入りを認識する。

上のスロー版音声で、各ペアの「最初のひと呼吸」に集中してください。Rの語は、舌を引いた構えから始まるため、うなるようにこもった入りになります。Lの語は、舌先が歯茎に当たった澄んだ音から始まります。対比を確かめたら、もう一度 Practice 1 の通常速度に戻り、聞こえ方が変わったかを確認します。

Practice 3:2レバーで作り分けて反復する(約2.5分)

鍛える能力:調音 ― 舌先の接触と舌の緊張の2レバーで作り分ける。

上のリピート用音声では、1語流れるごとに反復用のポーズが入ります。ポーズの間に、その語を声に出して反復してください。反復のたびにセルフチェックするのは2点だけです。Lの語では「舌先が歯茎に当たったか」。Rの語では「舌先がどこにも触れず、舌の奥に力が入ったか」。

6ペアを終えたら、仕上げの短文2文も同じ要領で反復します。音声に重ねて同時に発声はせず、必ず「聞く→止める→言う」の順で行ってください。

【English】 S1: I’ll read the report and lead the meeting. S2: Please collect the correct data.

【日本語訳】 S1: 私がレポートを読み、会議をリードします。 S2: 正しいデータを集めてください。

Practice 4:識別クイズ(約2分)

鍛える能力:音の識別 ― 単語を聞いた瞬間にRかLかを判定する。

Practice 1 のペア表を手で隠し、6組の中から1語ずつ、順番を入れ替えて声に出してください。1語言うごとに、表を見る前に「いま出したのはRかLか」を声に出して判定します。判定の根拠は、舌先が歯茎に当たったか、それとも触れずに舌の奥に力が入ったかの1点です。判定を言い終えたらペア表を開き、綴りと照合してください。全6問です。

終わったら、Practice 1 で「同じに聞こえた」ペアの数と比べてください。判定できる単語が1つでも増えていれば、カテゴリが分かれ始めた証拠です。全問正解できなくても正常です。カテゴリの作り直しは1回の練習で終わる作業ではなく、日をまたいだ反復で進みます。

実践例 ― 仕事の現場でR/Lの混同が起きる場面

この区別は、実務のどこで効くのか。2つの場面で確認します。

会議 ― read と lead は「役割の宣言」が変わる

“I’ll lead the meeting.”(私が会議を率います)と “I’ll read the meeting notes.”(議事録を読みます)では、引き受けている役割がまったく違います。lead が read に聞こえると、主導するという宣言が「目を通す」程度に格下げされて伝わります。動詞のR/Lを言い分けることは、責任範囲を正確に宣言することと同じです。

指示・確認 ― correct と collect は作業内容が変わる

“Please correct the data.”(データを訂正してください)と “Please collect the data.”(データを集めてください)は、依頼している作業が別物です。会話の中では文脈が補ってくれることも多いのですが、電話やチャットの読み上げのように単語単発で確認が飛ぶ場面では、文脈の支えがありません。そこでは音の区別が、そのまま伝達の精度になります。

逆に言えば、単語レベルでRとLの区別が立つと、文脈に頼らずに話せるようになります。「通じるか不安だから言い換える」という回避行動が減ることが、この練習の実務上のリターンです。

まとめ ― RとLは「2レバー」と「順序」で区別できるようになる

最後に、この記事で押さえた構造を整理します。

  • RとLの違いは、舌先の接触(Lは当てる・Rは触れない)と舌の緊張(Lは力まない・Rは引いて力を入れる)の2レバーで決まる。巻き舌は必須ではない
  • 混同の原因は、日本語のラ行(たたき音)という1つのカテゴリに英語の2音が吸収されることにある。耳の性能や努力の問題ではない
  • 聞き分けの困難は英語力が高くても残ると報告されている一方、ミニマルペアの識別訓練で聞き分けが改善し、その効果が発音にも転移したという報告がある
  • 練習の順序は「聞き分け→単音→語→文」。位置は「語頭→子音のあと→語末」の順で広げ、1日1〜2ペアに絞る

短期間で終わる作業ではありません。しかし、直らない原因がカテゴリにあると分かっていれば、練習は「気合いの反復」ではなく「カテゴリの作り直し」という明確な工程になります。

ただし、1つだけ独学では埋めにくい難所が残ります。自分の発音がRとLのどちらに寄っているかは、自分の耳では判定できないという点です。

あなたの発音の「聞こえていない音」を特定する

誤った音は、本人には正しく聞こえます。だから発音のずれは、聞き分けの訓練が進むまで自分では検出できず、ずれたまま反復すれば化石化します。ここが、R/Lに限らず発音の独学に共通する構造的な限界です。

The Past の無料カウンセリングでは、あなたの発音を能力単位で分解し、R/Lを含む「聞こえていない音・ずれている音」を特定したうえで、どの音から・どの順序で直すべきかを設計します。練習の方向を構造で定めたい方は、一度ご相談ください。

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参考情報・出典

  • Goto, H. (1971). Auditory perception by normal Japanese adults of the sounds “L” and “R.” Neuropsychologia, 9(3), 317–323. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/5149302/
  • Logan, J. S., Lively, S. E., & Pisoni, D. B. (1991). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: A first report. Journal of the Acoustical Society of America, 89(2), 874–886. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2016438/
  • Bradlow, A. R., Pisoni, D. B., Akahane-Yamada, R., & Tohkura, Y. (1997). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/: IV. Some effects of perceptual learning on speech production. Journal of the Acoustical Society of America, 101(4), 2299–2310. https://pubs.aip.org/asa/jasa/article/101/4/2299/558452/
  • Thomson, R. I. (2018). High Variability [Pronunciation] Training (HVPT): A proven technique about which every language teacher and learner ought to know. Journal of Second Language Pronunciation. https://www.jbe-platform.com/content/journals/10.1075/jslp.17038.tho
  • Flege, J. E. (1995). Second Language Speech Learning: Theory, Findings, and Problems. In W. Strange (Ed.), Speech Perception and Linguistic Experience.