TOEICリスニングの勉強法|「形式テク」と「聞く力」を分けてPart3・4の頭打ちを抜く
記事の執筆者 メイソン(株式会社The Past 代表 / 椿祐輔) VERSANT満点(90点)、CEFR C2レベル。フィリピンの語学学校で10年以上カリキュラム・教材開発に従事し、延べ5,000人以上の学習を支援。言語学・音声学に精通し、現在は株式会社The Pastでビジネスパーソン向けの英語コーチングを提供している。
「先読みも覚えた。シャドーイングもやった。それでもPart3・4で取りこぼして、リスニングが頭打ちになる」
TOEIC700点前後でよく聞く悩みです。最初に結論を述べます。Part3・4の頭打ちは、テクニック不足ではありません。「聞く力」そのものの不足です。 そして、テクニックと聞く力は別物です。混同したまま「とにかくシャドーイング」を続けても、穴は塞がりません。
この記事では、TOEICリスニングを「①形式攻略テク」と「②聞く力の訓練」に分け、両輪で回す方法を示します。
結論:TOEICリスニングは「形式テク」×「聞く力の訓練」の両輪
TOEICリスニングの勉強は、性質の違う2つを分けて考えると整理できます。
- 形式攻略テク(先読み・設問予測・Part別の型)= 取りこぼしを減らし、短期でスコアを底上げする
- 聞く力の訓練= 音声知覚・意味理解・情報保持の3層を鍛え、根本から聞けるようにする

500〜700点まではテクの習得で伸びます。しかし700点を越えるあたりから、テクだけでは頭打ちになります。理由は後述しますが、そこから先は「聞く力」の問題だからです。なお、TOEICに限らない一般的なリスニングの組み立ては「英語リスニングの勉強法」で解説しています。
形式攻略テク|Part別に取りこぼしを減らす
まずは短期で効くテクニックです。これは「英語を聞き取る力」とは別に、TOEICという形式に慣れて取りこぼしを減らすためのものです。
Part1(写真描写)|主語と動詞を予測する
写真から「誰が・何をしているか」を予測してから音声を聞きます。受動態(is being 〜)の引っかけ、写っていない動作を述べる選択肢に注意します。
Part2(応答)|冒頭の疑問詞(WH)を絶対に取る
Part2は設問が印刷されないため、先読みできません。「聞く力」一本の勝負です。冒頭の疑問詞(Where / When / Why / How)を取り逃すと、全体が崩れます。Yes/Noで答えない間接応答が難所です。
Part3・4(会話・説明文)|先読みで「何を聞くか」を仕込む
最大のテクが先読みです。会話が流れる前に設問を読み、「何を聞き取るべきか」を先に決めておきます。Part4はアナウンス・留守電・ツアー案内など定型フォーマットが多く、展開を予測できます。
ここまでがテクニックです。取りこぼしは確実に減ります。しかし、これだけではPart3・4で頭打ちになります。 なぜでしょうか。
なぜPart3・4で頭打ちになるのか|聞く力の3層
頭打ちの正体は「聞く力」の不足です。リスニングは3つの層でできています。どこで詰まっているかで、症状が変わります。

- ①音声知覚:音そのものが拾えない。
Did youが「ディヂュ」、put theがつながって別の音に聞こえる。 - ②意味理解:音は拾えるのに、意味化が追いつかない。長い会話で理解が遅れ、置いていかれる。
- ③情報保持:Part3・4の後半で取りこぼす。これがワーキングメモリ(短期記憶)の限界です。 聞いた内容を保持しきれず、最後の設問で記憶が抜けます。
「集中が切れて後半を落とす」のは、根性の問題ではありません。保持できる量を超えているという構造的な問題です。第二言語のリスニングにおいて、ワーキングメモリの容量は聞き取りの成否を左右する強力な要因だと、研究でも指摘されています。
ここで重要な気づきがあります。先読みが効くのは、この③情報保持の負荷を下げるからです。 先に設問を読むと「保持すべき情報」が絞られ、ワーキングメモリの負担が軽くなります。先読みは「テク」であると同時に、保持層への介入なのです。だから、保持する力そのものが弱いと、先読みだけでは限界が来ます。
3層別の訓練|頭打ちを根本から抜く処方
自分が詰まっている層に対応した訓練を行います。
①音声知覚で詰まる|ディクテーション+オーバーラッピング
聞こえた音を書き取るディクテーションで、拾えていない音(連結・弱形)を可視化します。さらに、スクリプトを見ながら音声に重ねて読むオーバーラッピングで、音と口を同期させます。
②意味理解で詰まる|Listen & Repeat+チャンク
1かたまり聞いて止め、正確に繰り返すListen & Repeatで、意味化の速度を上げます。英語の語順のまま、前からかたまりで処理する感覚を養います。
③情報保持で詰まる|先読み+メモ+要約
先読みで負荷を下げ、最小限のメモで要点を保持し、聞いた内容を一言で要約する練習をします。Part3・4の後半まで意識を持たせる力を鍛えます。
なお、上位の対策記事の多くは、Part3・4の万能策としてシャドーイングを勧めます。しかしシャドーイングは、初中級者が主軸にすると、音を処理しながら同時に発声するため、肝心の処理が破綻しやすい練習です。初中級者の主軸にはしません(理由は「シャドーイングは意味ない?」で解説)。まずは上記の処方で土台を作ってください。
記事内ミニ練習|Part2で「冒頭WH+弱形」を取る
実際にPart2を1問やってみます。冒頭の疑問詞と、崩れる音を取る練習です。
Q: Where did you put the quarterly report? (A) By Friday. (B) On your desk. (C) It’s a new model.
Practice 1:通常速で聞く【①音声知覚】
冒頭の Where を取れたかが勝負です。did you put は「ディヂュ・プッ」のように崩れて聞こえます。正解は (B) On your desk.(場所=Whereへの応答)。(A) は時間、(C) は無関係です。
Practice 2:スローで答え合わせ【①音声知覚→②意味理解】
ゆっくりで Where did you put の崩れを確認します。冒頭のWHを外すと、応答の正誤判断ができなくなります。Part2は先読みできない=聞く力がそのまま出るパートです。
スコア帯別の進め方
- 〜500点:まず土台(語彙・音声知覚)。テクより基礎を優先します。
- 500→700点:先読みなどテクを習得し、取りこぼしを減らす段階。最も伸びやすい時期です。
- 700→900点:テクは一巡しています。頭打ちは聞く力=3層の訓練、とくに情報保持で抜きます。
まとめ|テクと訓練を、両輪で回す
- TOEICリスニングは「形式テク(短期の底上げ)」と「聞く力の訓練(根本)」の両輪
- Part3・4の頭打ちの正体は、情報保持(ワーキングメモリ)切れ
- 先読みは情報保持の負荷を下げるテク。だが保持する力そのものは訓練で育てる
- 自分が詰まっている層に対応した訓練を選ぶ
先読みを増やすより、自分の「聞く力」のどこが詰まっているかを見極める。これが、頭打ちを抜ける最短ルートです。
テクは尽くしたのに頭打ち、という方へ
先読みもトレーニングもやったのに伸びない場合、自分のボトルネックの層を自分で見極めるのが難しいことがほとんどです。
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