VERSANTで高得点を取るのに必要なことは、「評価項目を深く知る」ことです。

当たり前ですが、試験には必ず採点基準があります。
それを知らず闇雲に学習しても、スコアアップにはつながりにくいです。

「え、そんなの知ってるよ。」

既に受験された方は、そう思うかもしれません。

しかし、「発音」では、「どのようなアクセントまで許容されるのか?」や、「語彙」は「どのリソースから選定されているのか?」など、回答できる方はいないのではないでしょうか。

この記事では、VERSANTで診断される「語彙」「文章構文」「流暢さ」「発音」4つの評価項目をより深く考察していきます。

目次
  • 情報は公式サイト、Youtubeチャンネルにあり
  • 語彙
    • VERSANTの語彙って、どんな語彙?
    • Switchboardから見る、日常語彙の盲点
    • パラフレーズ能力は必要、ただし、要約ではない
  • 文章構文
  • 発音
    • 正しい音素単位の発音
    • 単語のストレス
  • 流暢さ
    • 文中のストレス(弱く短く読む、強く長く読む単語)
    • チャンク(適切な語の固まり)
    • 音声変化(音のつながりや脱落などの省エネ発音)
    • 言いよどみや、言い直し、沈黙
  • 評価項目まとめ
Pearson Youtube

情報は公式サイト、Youtubeチャンネルにあり

日本語で書かれたVERSANTの考察記事は、あまりありません。
日経新聞社が運営する日本語版の公式サイトにも、テストの断片的な情報が記載されているのみです。

例えば、「Part F自由回答」はスコアに一切反映されないパートであり、VERSANT導入企業の人事担当者が録音された音源を聞くことができることや、全63問中、57問だけがスコア計測の材料となることなどの情報は記載されていません。

しかし、テスト制作団体Person(以下、ピアソン)が公開している、テストの妥当性を証明する「Test Description and Validation Summary(以下、Validation レポート)」や、公式のYoutubeチャンネルの動画内では、これらは明確に語られています。

英語コーチング「The Past(ザ・パスト)」では、VERSANT対策コースの開発のため、Validationレポートだけではなく、Youtubeの公式動画31本を全て翻訳することで、深くこのテストを分析しました。

これより、VERSANTの4つの評価項目の内訳を詳しくみていきます。

語彙

概要:語彙力は、構文中の日常的かつ一般的な単語を理解し、自在に表現する能力です。日常的な単語の形式と意味の理解、また関連する発言におけるそれらの用法の熟達度によりスコアが判定されます。

対象パート:

  • PART C 質問 / Short Answer Questions
  • PART E ストーリーリテリング / Story Retelling

試験で語彙力を測る箇所は上記の2箇所です。
しかし、この2つのパートで必要な語彙力はそれぞれ異なります。

パートC :アメリカで日常的に使用される語彙力
パートE:アメリカで日常的に使用される語彙力+パラフレーズ力

VERSANTの語彙って、どんな語彙?

試験毎に問われる語彙の種類(TOEIC=日常+ビジネス、TOEFL=アカデミック)があります。
VERSANTの語彙群はどこから来てるのでしょう?

その答えは、Validationレポートに書かれていました。

3.1 Vocabulary Selection
The vocabulary used in all test items and responses is restricted to forms of the 8,000 most frequently used words in the Switchboard Corpus (Godfrey & Holliman, 1997), a corpus of three million words spoken in spontaneous telephone conversations by over 500 speakers of both sexes from every major dialect of American English. In general, the language structures used in the test reflect those that are common in everyday English. This includes extensive use of pronominal expressions such as “she” or “their friend” and contracted forms such as “won’t” and “I’m.”
出典:Versant™ English Test - Test Description and Validation Summary
レポートによると、「Switchboard Corpusという、500人のアメリカ人が日常的なトピックについて通話した内容の中から、頻出する8,000語が出題範囲となります。

TOEIC900点取得に必要な語彙数が約10,000語程度と言われているので、TOEICを勉強してきた人であれば、易しめな印象を受けますが、話はそうカンタンではありません。

なぜなら、ここで選定された語彙群はビジネスを含まない、日常会話でよく使われる8,000語だからです。

具体的にどのような語彙が出てくるかを見てみましょう。

Switchboard Corpusから見る、日常語彙の盲点

Switchboardとは、543人のアメリカ人がコンピューターによって自動マッチングされた相手と、即興で話した内容をまとめた音声データベースです。
約70のトピックが用意され、そのうち50が頻繁に使われたようです。

こちらが公開されているサンプルの音声です。

男女がガーデニングと栽培期について話していて、pepper plants(ピーマンの苗), tomato, grassなどの植物に関する固有名詞がいくつかでてきました。

そして、レポートに記載されているサンプル問題には

Examples:
What is frozen water called?
How many months are in a year and a half?
Does a tree usually have more trunks or branches?

trunk(木の幹)や、branch(枝)などの植物に関する語彙。

さらに、自作のVERSANT模試を公開している海外のYoutuberの問題には、下記のTOEICにはおそらく出てこない動植物に関する語彙がありました。

egg yolk(黄身), hooves(ひづめ), unicycle(一輪車), lioness(メスライオン), cub(子ライオン), worms(ワーム)

これらの情報から、VERSANTで出題される語彙は、ビジネスやアカデミックではなく、「日常生活に必要な語彙群」であることが予想されます。

パラフレーズ能力は必要、ただし、要約ではない

「PART E ストーリーリテリング / Story Retelling」でも語彙力が測られます。

このパートにおいて、パラフレーズ(言い換え)が必要・不要説のどちらもありますが、英語コーチング「ザ・パスト」では、Validationレポートから、「パラフレーズは必要だが、優先順位が高いのは話の詳細」と考えています。

パラフレーズに関する記載を見てみましょう。

VERSANT English Test / Validation レポート

The Story Retelling items assess a candidate’s ability to listen and understand a passage, reformulate the passage using his or her own vocabulary and grammar, and then retell it in detail.

VERSANT Aviation English Test / Validation レポート

In this sense, the test taker’s competence at retrieving lexical items for paraphrasing is assessed.
2つ目のVERSANT Aviation English Test(管制官、パイロットが受験する航空業界のVERSANTテスト)では、明確にパラフレーズ能力が診断されると記載されています。

しかしながら、PART Eで最も重要なのは、語られたストーリーの状況、登場人物、行動、結末などの詳細を「どれほど細かく正確に再現できるか?」となります。

そのため、語彙で満点を狙わない限りは、無理にパラフレーズはせず、詳細説明に注力すると良いでしょう。

文章構文

概要:文章構文は文単位の発話の中で語句や節を理解、把握、使用できる能力です。パフォーマンスは正確な構文処理と適切な単語、フレーズ、および節の使用の熟達度により左右されます。

対象パート:

  • PART B 復唱 / Repeat
  • PART D 文の構築 / Sentence Builds
  • PART E ストーリーリテリング / Story Retelling
この評価項目を一言で言うと「中学英文法の運用能力」です。
特筆すべき点はありませんが、Part B復唱の際、三単現のSのつけ忘れや、前置詞の抜けなどはよくあるミスなので、気をつけましょう。
また、バラバラになった単語の固まりを正しい語順で並び替える、「PART D 文の構築 / Sentence Builds」は、VERSANT特有の出題形式であり、市販教材では現在、対応できません。

英語コーチング「The Past(ザ・パスト)」では、本番同様、読み上げられた単語の固まりを正しく並べ替えるトレーニングを実施しておりますので、気になる方は下記のページよりプログラムをご確認ください。

The Past、VERSANT対策プログラム

発音

概要:発音は、文脈においてネイティブ同様に子音や母音を発音し、ストレス(音の強弱)を正しく置くことのできる能力です。日常単語の音韻構造の知識によりスコアが判定されます。

対象パート:

  • PART A 音読 / Reading
  • PART B 復唱 / Repeat
  • PART E ストーリーリテリング / Story Retelling
発音で評価されるのは、次の2点です。
  1. 子音・母音
  2. 単語のストレス

正しい音素単位の発音

音素

音素(phoneme)とは、ひらたく言うと子音・母音のことです。

単語“apple/ǽp(ə)l / ”は、/ǽ/ /p/ /ə/ /l/ 4つの音素から構成されていて、さらに分類すると、2つの母音(/ǽ/と/ə/ )と2つの子音(/p/と/l/)から構成されているとも言えます。

母音、子音
音素は、IPA(国際発音記号)、Jones式など、枠組みによって子音+母音の数は変わりますが、約40個程度の音素があります。

VERSANTでは、これら全ての音素が正しく発話できているかを計測しています。
しかし、日本語の発音と同じ、または、似ている音素もたくさんあるため、日本人の苦手な22個の母音と子音を正しく発話できるようになれば良いのです。

この22個の音素については、別途、記事を作成しますので今しばらくお待ち下さい。

単語のストレス

単語のストレス

単語のストレスとは、一部の音節を強く・長く発話すること。
ストレスは必ず母音の上にのり、辞書で発音記号を調べるとチョンとストレスマークがのっています。

例えば、「〜の下に」を意味する”below” は、後半にストレスがのり、/bɪlʊ / と発音しますね。
このストレスの位置を前半のɪの上にのせると、/bílou / という音になり、billow(大波)という別の単語になってしまいます。

project

名詞:PROJ・ect (プロジェクト)
動詞:proj・ECT (…だと推測する)

また、上記のように同じ単語だけど、名詞/ 形容詞と動詞でストレスの位置が違う単語もあるので、ストレスの位置は単語を覚える際に、一緒に覚えるようにしましょう。

流暢さ

概要:流暢さは文を構築したり、読み上げたり、復唱するなかでみられるリズム、語句の切れ目、テンポの良さなどから判定されます。

対象パート:

  • PART A 音読 / Reading
  • PART B 復唱 / Repeat
  • PART D 文の構築 / Sentence Builds
  • PART E ストーリーリテリング / Story Retelling

日本語版のVERSANTレポートには、上記概要が記載されていますが、Validation レポートはこう記されています。

  1. response latency … 応答までにかかる時間
  2. speaking rate … 喋る速度
  3. continuity in speech flow … 一定量の文を途切れずに話す能力

この3つの評価項目を言い換えると、下記となります。

  1. 文中のストレス(弱く短く読む、強く長く読む単語)
  2. チャンク(適切な語の固まり)
  3. 音声変化(音のつながりや脱落などの省エネ発音)
  4. 言いよどみや、沈黙

ひとつひとつ見ていきましょう。

文中のストレス(弱く短く読む、強く長く読む単語)

強形・弱形
英語らしいリズムは、この文中のストレスから生まれます。
例えば、She’s so beautifulというフレーズは、so(副詞)とbeautiful(形容詞)にストレスがのり、「シズソビューリフォ」のように、「ソビュー」の部分が強く、長く発話されます。

「とても」、「美しい」のように、文中の大事な要点を説明する品詞を「内容語」と呼び、ストレスをのせ、長く、強く発話します。
反対に、「彼女(人称代名詞)」などの機能を表す品詞は「機能語」と呼び、ストレスはのらず、短く、弱く発話します。

VERSANTでは、ネイティブと受験者の音声サンプルを比較し、この英語のリズムが再現できているかを評価します。

チャンク(適切な語の固まり)

With one exception,/ all members of the board / seemed satisfied.

ひとつの例外を除いて / 全ての役員 / 満足しているように見えた
チャンクとは2~10語程度の意味の固まりです。
長文読解の際に、スラッシュリーディングをしている方も多いと思います。

VERSANTでは、最長20語程度の文章を発話します。
ネイティブの1チャンクは、私たちの固まりより広いため、原則、カンマの位置で区切り、それ以外の箇所はまとめて読むように努めましょう。

With one exception,/ all members of the board / seemed satisfied.
With one exception,/  all members of the board seemed satisfied.

音声変化(音のつながりや脱落などの省エネ発音)

音声変化(おんせいへんか)とは、音のつながりや脱落など、ネイティブが使う省エネ発音のこと。

“I have a lot of things to do.”という文をネイティブが自然に読むと、”have a lot of ” がつながって、アメリカ発音では「ハバロロブ」のように発話されることがあります。

「この国の音声変化を使いなさい!全ての子音と母音をつなげなさい!」

という事ではありませんが、評価項目の”speaking rate(話す速度)”を高めるためには、音声変化の体得が必要だと言えるでしょう。

音声変化

言いよどみや、言い直し、沈黙

これらの項目も「流暢さ」で評価されます。

しかし、Pearson公式の動画で「言いよどみや、沈黙があるのは自然なこと。頻繁でなければ、減点対象とならない。」と明言されています。

具体的な回数こそ明示されていないものの、当然、少ないほうが良いでしょう。
沈黙については、次の動画の後半で重要な指標が語られています。

話のラリーにおける、平均沈黙時間は最大で約0.5秒であることがわかっています。

受験者が約0.5秒または1秒以内に聞いたことに応答しない場合、話者が話し続ける可能性があります。彼らは沈黙に不快感を覚えるか、他の誰かが会話に飛び込んで、その人の代わりに答えてしまいます。

したがって、受験者がタイムリーかつ適切な方法で返信できることが非常に重要です。

抜粋:Versant Tests - How does this compare to a typical interview-style test?
つまり、「1秒以上の沈黙は減点対象となる可能性が高い」ということです。

評価項目まとめ

ここまでお読みいただきありがとうございます。

6,000文字にわたる本分析を、一度で理解しきるのは難しいと思います。
つまづいた時に振り返りができるよう、ブックマークをご利用ください。

下記に評価項目の要点をまとめましたので、ご確認の上、VERSANT対策にお役立てください。

Sub Score 対象パート 要点
語彙
  • PART C 質問 
  • PART E ストーリーリテリング 
  • 8,000語の日常語彙
  • TOEICで出題されにくい、動植物の語彙も出てくる
文章構文
  • PART B 復唱 
  • PART D 文の構築
  • PART E ストーリーリテリング 
  • 中学英文法の運用能力
  • 三単現のSや前置詞の抜け等に注意
発音
  • PART A 音読 
  • PART B 復唱 
  • PART E ストーリーリテリング
  • 音素単位の発音
  • 単語のストレス
流暢さ
  • PART A 音読
  • PART B 復唱
  • PART D 文の構築
  • PART E ストーリーリテリング
  • 文中のストレス
  • チャンク
  • 音声変化
  • 言いよどみや、沈黙に注意

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