英語のリエゾンとは|5つの音声変化と段階別の聞き取り練習
「リエゾン」って聞いたことありますか?
英語学習の本やYouTubeで「リエゾンを意識すると聞こえる」「リエゾンで自然な英語になる」といった説明を見たことがあるかもしれません。しかし、リエゾンとは正確に何を指すのかと聞かれて、自信を持って答えられる人はそう多くありません。
最初に用語を整理します。
リエゾン(liaison)はもともとフランス語の音声学用語で、本来は前の語の末尾子音が次の母音で発音される現象を指します。英語の音声学では同じ現象を linking または catenation(連結)と呼びます。日本の英語教育では、この連結を中心に、周辺の音声変化(脱落・同化・弱形・フラッピング)まで含めて「リエゾン」と総称することが一般化しています。本記事もこの広義の通称として「リエゾン」を用います(厳密には「リエゾン=連結」であり、その他は連結に伴って起こる関連現象です)。
英語音声学ではこれらを connected speech(連結発音)の枠組みで扱います。連結(catenation/linking)・脱落(elision)・同化(assimilation)・弱形(weak forms / vowel reduction)が中核で、これに加えてアメリカ英語では母音間の /t/ /d/ が弾音化する フラッピング(flapping / tapping) が高頻度で起こります。なお、母音が連続する箇所に /j/ /w/ /r/ が入る intrusion(挿入)も観察されますが、これは連結(linking)の一種として扱われます。
日本人ビジネスパーソンが実務上押さえるべきは、最初の5つ(連結/脱落/同化/弱形/フラッピング)です。それぞれを後のセクションで構造として説明します。
💡 音声変化全般の体系的な解説をお探しの方は、英語の音声変化4種完全ガイド|連結・脱落・弱形・ラ行化を聞き取るもあわせてご覧ください。本記事は「リエゾン」というキーワードで検索する読者向けに、用語の整理から段階別練習までを通しでまとめています。
シャドーイングを半年続けているのに会議の英語が聞き取れない。発音は単語単位では悪くないのに、自分が話すと棒読みになる。こうした停滞のほとんどは、リエゾンを構造として理解していないことに起因します。
聞き取れない原因は「ネイティブ並みの耳がないから」ではなく、The Past リスニング3ステップ(音声知覚→意味理解→情報保持)のどの段階で処理が破綻しているかにあります。リエゾン環境では、ほとんどの日本人学習者が第1ステップ「音声知覚」でつまずきます。
この記事では、リエゾン5分類を構造から整理し、日本人が詰まる原因を3ステップで分解した上で、知覚→産出→転移の段階別練習設計を提示します。
結論:リエゾンは「ネイティブ風の飾り」ではなく聞き取り・発話の中核
最初に結論を出します。
英語のリエゾンは、5つの音声変化(連結・脱落・同化・弱形・フラッピング)を束ねた概念です。これは「自然に話すための装飾」ではなく、英語の音声が常時動いているデフォルト状態です。リエゾンを処理できなければ、自然発話のリスニングは原理的に成立しません。
理由はシンプルです。ネイティブの英語発話は、語境界が物理的にほとんど存在しません。Cutler (2012) が示すように、母語話者は音素・音節・リズム・韻律・文脈の多層手がかりを統合して語を切り出しています。一方、英語を読んで学んできた日本人学習者は単語単位で英語を処理しており、語境界が消えるリエゾン環境で破綻します。
ここで重要なのは、リエゾンが原因で詰まる「音声知覚」の層を、さらに細かく分解することです。次の3つのどこで詰まっているかで、必要な練習がまったく違います。
- 音そのものを聞き分けられない(音素レベル:/r/ と /l/、/æ/ と /ʌ/ などが同じに聞こえる)
- 語の切れ目が見えない(境界レベル:音は聞こえるが、どこから次の単語か判定できない)
- 処理が間に合わない(速度レベル:音素も境界も分かるが、意味処理が追いつかない)
多くの日本人は2番目「語の切れ目が見えない」で詰まっています。そして上位記事のほとんどは、この分解を提示せず「シャドーイングを続けましょう」で締めています。それでは伸びる人と伸びない人の差が説明できません。
この記事の構造は次の通りです。リエゾンを5分類で整理し、日本人が詰まる原因を音声学の研究で根拠づけ、よくある誤学習を修正し、知覚→産出→転移の段階別練習を設計します。最後に自己診断で、自分がどこで詰まっているかを判定できる状態にします。
英語のリエゾン5分類|音声変化の構造を整理する

英語の連結発音は、何が起きているかで5種類に分類できます。
| 分類 | 何が起きるか | 例 | 音の連なり |
|---|---|---|---|
| 1. 連結(catenation / linking) | 子音末+母音頭で音節が再構成される | an apple | /ə.næ.pəl/ |
| 2. 脱落(elision) | 隣接子音の影響で /t/ /d/ が消える | next day | /neks.deɪ/ |
| 3. 同化(assimilation) | 隣接音の影響で音素が変化する | good boy | /gʊb.bɔɪ/ |
| 4. 弱形・母音弱化(reduction) | 機能語の母音がシュワになる | to school | /tə.skuːl/ |
| 5. フラッピング(flapping/ら行化) | 母音にはさまれた /t/ /d/ が弾音 [ɾ](ら行に近い音)になる | water | /ˈwɑː.ɾɚ/ |
1. 連結(catenation / linking)
日本語で「リエゾン」と呼ぶときの中心現象です。前の語末の子音が、次の語頭の母音と結合して新しい音節を作ります。
- pick it up → /pɪ.kɪ.tʌp/
- an apple → /ə.næ.pəl/
- come on → /kʌ.mɒn/
書かれた英文は3単語ですが、音声上は2〜3音節の塊として処理されます。
2. 脱落(elision)
語末の /t/ /d/ が、次の子音の前で消える現象です。最も頻繁に発生します。
- next day → /neks.deɪ/
- last night → /læs.naɪt/
- I don’t know → /aɪ.doʊn.noʊ/
「言わないわけではなく、知覚できないほど弱い」のが脱落の本質です。聞き取り側は「言われていない」と判断してしまい、構文の重要要素を取りこぼします。
3. 同化(assimilation)
ある音が、隣接する音の影響で別の音に変化する現象です。後ろの音が前を変える逆行同化が最多です。
- good boy → /gʊb.bɔɪ/(/d/ が /b/ に同化)
- ten boys → /tem.bɔɪz/(/n/ が /m/ に)
- did you → /dɪ.dʒuː/(/d/+/j/ が /dʒ/ に)
(※会話速度では同化が進む。実音声学的には不完全同化 [gʊb̚.bɔɪ] / [tem̚.bɔɪz] の表記も使われる)
4. 弱形・母音弱化(reduction)
機能語(前置詞・冠詞・代名詞・接続詞)の母音が、強勢を失ってシュワ /ə/ に弱化する現象です。
- to school → /tə.skuːl/
- for me → /fə.mi/
- a book → /ə.bʊk/
- and you → /ən.ju/
リエゾンを「速く話している」と捉えがちですが、実態は強勢のある内容語だけが残り、機能語は影に沈むという強弱構造です。
5. フラッピング(flapping/ら行化)
母音にはさまれた /t/ /d/ が、強い破裂を伴わない弾音 [ɾ](日本語の「ら行」に近い音)に変わる現象です。主にアメリカ英語で起こります。
- water → ワラ(/ˈwɑː.ɾɚ/)
- better → ベラー(/ˈbe.ɾɚ/)
- get it → ゲリッ(/ˈɡe.ɾɪt/)
- a lot of → アラ(ラ)ヴ(/ə.ˈlɑː.ɾəv/)
書かれた t を「トゥ」と待ち構えると、実際のら行に近い音を取りこぼします。脱落(音が消える)や同化(隣の音に似る)とは異なり、母音間という位置条件で /t/ /d/ が弾音化するのがフラッピングです。
なぜ日本人はリエゾンが聞き取れないのか|能力分解と3層構造

リエゾンが聞き取れない原因を「リスニング不足」で片付けると、解決策も「もっと聞く」になり、いつまで経っても伸びません。原因を能力単位で分解します。
3層構造で詰まる
日本人学習者がリエゾン環境で詰まる層は、次の3つに分解できます。
- 音の聞き分けの層:個別の母音・子音を識別できない(/r/ /l/、/æ/ /ʌ/ など)
- 語の切れ目検出の層(segmentation):音は聞こえるが、どこで語が切れるか判定できない
- 処理速度の層:音素が分かり境界も切れるが、語彙検索・統語処理が間に合わない
Field (2008) は、L2リスナーが segmentation を常に暫定的かつ修正前提で処理しており、音素変異が大きく境界手がかりが乏しい連結発音下では segmentation 仮説が破綻すると論じています。多くの日本人が2層目で詰まっているのは、リスニング学習が単語の意味取りに偏り、語の切れ目検出が訓練対象になっていないためです。
モーラ拍 vs 強勢拍|L1リズムが語の切れ目検出を妨害する
日本語はモーラ拍言語、英語は強勢拍言語です。リズム単位が根本的に異なります。
Otake, Hatano, Cutler & Mehler (1993) は、日本語母語話者が音声分節をモーラ単位で行うことを実験的に示しました。これは英語母語話者の強勢ベース分節やフランス語の音節ベース分節と質的に異なります。つまり、日本人は英語の連結発音をモーラ的に切ろうとして失敗する構造を持っています。
たとえば pick it up を聞いたとき、英語母語話者は強勢のある PICK と UP を錨として2チャンクで処理します。日本人は「ピ・ク・イ・タ・プ」と等価な5モーラに分割しようとして崩壊します。
幻の母音(illusory epenthesis)|「ない音」が「ある音」に聞こえる
Dupoux et al. (1999) は、日本語話者が英語の子音連続を「幻の母音を挿入して」知覚する現象を実証しました。/ebzo/ という音を聞かせると、日本人は /ebuzo/ と知覚し、しかも幻の /u/ を物理的に聞こえたと報告します。
これは日本語の CV 音節構造と phonotactic constraint(音素配列制約)が、知覚レベルで強制的に作動するためです。Kuhl (2004) のNLM-e理論によれば、生後12か月で非母語音識別能力が約80%から10〜20%へ低下します。成人L2学習者が連結発音で詰まる神経基盤は、この母語固化にあります。
ここで重要なのは、これが能力の限界ではなく、訓練で改善可能だという点です。次のセクションで、誤学習を整理した上で、有効な練習設計に移ります。
よくある誤学習|「シャドーイングだけ」の限界
リエゾン習得でよく見られる誤解を3つ整理します。
誤解1:シャドーイングを続ければ自然にリエゾンが身につく
音声を真似る練習それ自体は無駄ではありませんが、それだけでは語の切れ目検出への介入が弱いことが多いです。Hamada (2016) は、シャドーイングを週2回・4週間継続することで partial dictation スコアが統計的に改善することを示しました。ただしこれは「シャドーイングそのもの」の効果というより、語の切れ目検出に意識を向けて音を処理したことの効果です。意識を伴わない模倣だけの練習は、音声を聞き流しているのと変わりません。
だからこそ、台本で連結を可視化し(Step 2)、お手本に重ねて再現する(Step 3 オーバーラッピング)という、意識を向ける設計が必要になります。
誤解2:英語耳系のアプリで音声に慣れれば聞き取れる
英語に触れる量を増やすだけでは、Field (2008) が指摘する segmentation 仮説の破綻は解決しません。インプット量を増やしても、ボトムアップ処理(音声知覚)への直接的な介入がなければ、トップダウン推測(文脈から意味を当てる)に依存した「分かったつもり」のリスニングが固定化します。
誤解3:ネイティブの自然発話を真似すれば話せるようになる
Cauldwell (2013) は、自然発話を “jungle listening”、教室で教えられる careful speech を “greenhouse” と呼び、両者のギャップが学習者の崩壊点だと指摘しました。自然発話をいきなり模倣しても、知覚解像度が低い状態では「何を真似ているか」が分からないまま終わります。
リエゾン習得は、解像度を上げる工程と、それを再現する工程を分けて設計する必要があります。
The Past 式のリエゾン習得アプローチ|知覚→産出→転移の4段階設計

リエゾンを習得するための練習を、4段階で構造化します。各段階は前段の合格を前提に積み上げます。
Step 1:知覚解像度を上げる(語の切れ目検出の精度を上げる)
最初に必要なのは、リエゾン環境で「どこで音が連結・脱落・同化しているか」を聞き分けられる解像度です。
具体的な手段は3つです。
- Partial dictation:5〜10語の英文を3回聞き、書き起こす。書けなかった箇所が語の切れ目検出の弱点
- HVPT(High Variability Phonetic Training):複数話者・複数文脈で同じ音声変化を聞く。Bradlow et al. (1999) は HVPT が知覚改善だけでなく産出にも転移し、3か月後も保持されることを実証している
- 5分類別の重点リスニング:catenation だけを集めた音声、elision だけの音声、というように分類別に聞く
この段階での合格基準は、英文を見ながら聞いたときに「ここで連結が起きている」「ここで /t/ が脱落している」とラベリングできることです。
Step 2:チャンク音読+連結明示
知覚解像度が上がったら、自分の口で再現します。ただし最初はネイティブ速度ではなく、チャンク(意味のかたまり)単位で、連結箇所を明示しながら音読します。
例:
- pick it up → ピックィタップ(連結を明示)
- next day → ネクスデイ(脱落を明示)
- to school → タスクール(弱形を明示)
このとき、書記英文の上にスラッシュとリエゾン記号を書き込み、視覚的に処理を可視化します。Levelt (1989) のスピーキングモデルにおける phonetic plan(音声化計画)を、明示的に設計する工程です。
Step 3:オーバーラッピング(変化を再現する)
チャンク音読で連結を明示的に再現できるようになったら、オーバーラッピングに移ります。スクリプトを見ながら、音声に重ねて同時に発声し、Step 2 で分解した連結・脱落・フラッピングを、お手本のリズムに合わせて再現します。台本という支えがある状態で、模倣の精度を上げる工程です。
重ねて発声して再現できなかった箇所は、Step 1〜2 に戻って強化します。
台本を見ずに音声だけを追うシャドーイングは認知負荷が高く、初中級者では音に注意を向ける余力が残りにくいため、ここでは主軸に置きません。VERSANT 58点/TOEIC 900点以上を目安に、知覚解像度が十分に上がった上級者の補助として取り入れるのが適切です。
Step 4:即時応答での転移
最終段階は、書かれていない英文を自分で組み立てる際に、連結を出力できる状態です。
質問に対して短い文で即答するトレーニングを行います。たとえば “What did you do this morning?” に対して “I picked up my kids and went to school.” を即答するとき、pick + up、went + to の連結が自然に出力できれば、知覚→産出の双方向ループが完成します。
Bradlow et al. (1999) が示した知覚-産出の転移は、この段階で固定化されます。
記事内トレーニング|5分でリエゾンの解像度を上げる
ここまでの理論を、5分の練習で身体に落とします。
Practice 1:5分類を聞き分ける(1分)
次の5フレーズを声に出して読み、書記の英文と実際の音の違いを意識してください。
| # | 英文 | 音の連なり | 分類 |
|---|---|---|---|
| 1 | check it out | チェッキタウト | 連結 |
| 2 | first time | ファースタイム | 脱落 |
| 3 | hand bag | ハンバッグ | 同化 |
| 4 | a cup of tea | アカッパティー | 弱形+連結 |
| 5 | get it | ゲリッ | フラッピング |
Practice 2:チャンクで音読する(1分)
次の英文をチャンクに区切り、連結箇所を明示しながら音読します。
I’d like to / pick up / my kids / and / go to school.
- I’d like to → アイドラィクタ(/t/ 脱落+/tə/ 弱形)
- pick up → ピッカップ(連結)
- and go → エンゴ(脱落+連結)
- go to → ゴゥタ(弱形)
【日本語訳】子どもたちを迎えに行って、学校に送りたいんです。
Practice 3:オーバーラッピング(2分)
次の英文を、スクリプトを見ながら音声に重ねて3回発声します(オーバーラッピング)。連結・フラッピングが再現できているか録音して確認してください。
Let me get back to you on that after the meeting.
音の連なり:レッミ・ゲッバックトゥユ・オンナッ・アフタザミーティング
Practice 4:即時応答(1分)
次の質問に、20秒以内で短い英文を即答します。連結を意識して発話してください。
質問:What did you do this morning before work?
回答例:I dropped off my kids and grabbed a coffee.
連結:dropped off → ドロップトォフ、and grabbed → エングラブド、a coffee → アカフィ
自己診断|あなたはどの層で詰まっているか
リエゾン学習を効率化するために、自分のボトルネックを特定します。次のいずれが最も近いかで、注力すべき練習が変わります。
パターンA:音の聞き分けで詰まる
- /r/ と /l/ の区別がつかない
- /θ/ と /s/ が同じに聞こえる
- /æ/ と /ʌ/ の差が分からない
→ Step 1の中でも、minimal pair の重点練習と HVPT を優先します。連結練習に進む前に、音の聞き分けの基礎を固めます。
パターンB:語の切れ目検出で詰まる
- 単語単独では分かるが、文になると音が切れない
- ディクテーションでは「何かしゃべっているのは分かるが書けない」
- 字幕を見ると「こんな簡単なこと言ってたのか」と毎回思う
→ 最も多いパターンです。Step 1 の partial dictation と分類別重点リスニングを徹底し、Step 2 のチャンク音読で境界処理を意識化します。
パターンC:知覚はできるが産出できない
- 聞けば理解できるが、自分が話すとカタコトになる
- 単語ごとに発音してしまい、流暢に聞こえない
- 速く話そうとすると詰まる
→ Step 2 と Step 3 を強化します。チャンク音読で phonetic plan を明示的に設計し、オーバーラッピングで再現精度を上げます。
パターンD:処理速度が追いつかない
- 知覚も産出もできるが、リアルタイム会話で遅れる
- 1文目を処理している間に、相手が2文目に進んでしまう
- 自分の発話を組み立てるのに時間がかかる
→ Step 4 の即時応答を中心に据えます。Versant 対策のような短文即答トレーニングが直接効きます。
ビジネス英語・Versant でのリエゾン
リエゾンは「ネイティブっぽさ」の問題ではなく、ビジネス英語の通用性を決める要素です。
会議リスニングへの影響
オンライン会議で「相手が何を言ったか分からない」場面のほとんどは、語彙不足ではなく語の切れ目検出の失敗です。ネイティブ同士の自然会話は連結・脱落・弱形が常時発生しており、教科書英語の感覚で処理しようとすると、まず関係詞・助動詞・前置詞の弱形で取りこぼします。
例:
- “Would you have been able to come?” → ウジュアブンエイブルタカム
- “I should have told you earlier.” → アイシュダトールジューアーリァ
ここで should have, would have, could have の弱形(/ʃʊdə/, /wʊdə/, /kʊdə/)を知覚できないと、過去仮定法の構文がそもそも認識できません。
Versant Part A/B での影響
Versant のような短時間スピーキング試験では、流暢性と発音の両方が採点対象です。Versant Part A(音読)では、連結・脱落・弱形を再現できるかが直接スコアに反映されます。Part B(復唱)では、連結を含む文を聞き取って即時に再現する必要があり、知覚と産出の双方向ループが評価されます。
「単語の発音はきれい」だが「Versant のスコアが伸び悩む」ケースの多くは、リエゾンの産出が出力されていないことが原因です。
まとめ
英語のリエゾンの核心は、次の3点に整理できます。
- リエゾンは「ネイティブ風の飾り」ではなく、英語の音声が常時動いているデフォルト状態である
- 連結・脱落・同化・弱形・フラッピングの5分類で整理できる
- 聞き取れない原因は、音の聞き分け・語の切れ目検出・処理速度の3層構造で分解できる
練習設計は、知覚解像度 → チャンク音読 → オーバーラッピング → 即時応答の4段階で積み上げます。各段階を飛ばすと、上の段階で必ず破綻します。
「リエゾンが聞き取れない」状態は、能力の限界ではなく、訓練設計の問題です。自分がどの層で詰まっているかを診断し、その層に効く練習を優先する。これが最短距離の進め方です。
自分のボトルネックを言語化したい方へ
リエゾンの3層構造のうち、自分がどの層で詰まっているかを正確に判定するには、音声サンプルを用いた診断が必要です。
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Q. リエゾンは独学で身につきますか?
A. 知覚解像度(Step 1)までは独学可能です。partial dictation と分類別重点リスニングは、教材があれば再現できます。ただし、自分の産出(Step 2〜3)が正しく再現できているかは、第三者の客観評価がないと判定できません。録音して自己フィードバックする習慣を作るか、コーチングの活用が現実的です。
Q. シャドーイングだけでリエゾンは習得できますか?
A. 不十分です。Hamada (2016) は効果を実証していますが、それは語の切れ目検出に意識を向けて処理した場合であって、模倣だけのシャドーイングではありません。Step 1 の知覚解像度を上げる工程を省いてシャドーイングだけを続けても、自分が何を真似ているかが分からないまま終わります。初中級のうちは台本を見ながら音声に重ねるオーバーラッピングを主軸にし、台本なしのシャドーイングは解像度が上がった上級段階の補助に回すのが安全です。
Q. リエゾンを練習すれば TOEIC のスコアも上がりますか?
A. リスニングセクションに直接効きます。TOEIC Part 3・4 はナチュラルスピードの自然発話に近く、連結・脱落・弱形が頻繁に発生します。語の切れ目検出が改善すると、Part 3・4 の正答率が上がります。TOEIC Part 1 はゆっくりめ/Part 2 も近年は連結処理が必要な問題が増えているため、ここでも効果が期待できます。
Q. アメリカ英語とイギリス英語でリエゾンは違いますか?
A. 違います。最も大きいのは /r/ の処理です。アメリカ英語は語末の /r/ を保持する(rhotic)ため、car、far などで /r/ が次の母音と連結します。イギリス英語の標準(RP)は語末の /r/ を発音しない(non-rhotic)ため、far away のような環境でのみ /r/ の挿入(intrusive r)として現れます。学習者は、まず自分が目指す英語のどちらか一方に統一して練習することを推奨します。
Q. リエゾンを学ぶのに最適な教材は何ですか?
A. ボトムアップ処理を鍛える教材を選びます。具体的には、スクリプト付きで partial dictation ができる素材(TED-Ed、BBC Learning English)、ナチュラル速度の対話素材(Voice of America Learning English の Conversation シリーズ)、オーバーラッピング用の段階別教材を組み合わせます。
リエゾンを理解しても、会話の速度で聞き取れるかは別の問題です。The Past の無料eBook『シャドーイングを今すぐ捨てよ』(LINE登録)では、聞き取りが伸びない本当の原因=学習法を構造で解説します。
参考情報・出典
- Field, J. (2008). Listening in the Language Classroom. Cambridge University Press.
- Field, J. (2003). Promoting perception: Lexical segmentation in L2 listening. ELT Journal, 57(4), 325–334.
- Cauldwell, R. (2013). Phonology for Listening: Teaching the Stream of Speech. Speech in Action.
- Cutler, A. (2012). Native Listening: Language Experience and the Recognition of Spoken Words. MIT Press.
- Otake, T., Hatano, G., Cutler, A. & Mehler, J. (1993). Mora or syllable? Speech segmentation in Japanese. Journal of Memory and Language, 32, 258–278.
- Dupoux, E., Kakehi, K., Hirose, Y., Pallier, C., & Mehler, J. (1999). Epenthetic vowels in Japanese: A perceptual illusion? Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 25(6), 1568–1578.
- Bradlow, A. R., Akahane-Yamada, R., Pisoni, D. B., & Tohkura, Y. (1999). Training Japanese listeners to identify English /r/ and /l/. Perception & Psychophysics, 61(5), 977–985.
- Hamada, Y. (2016). Shadowing: Who benefits and how? Language Teaching Research, 20(1), 35–52.
- Thomson, R. I. (2018). High Variability Pronunciation Training (HVPT): A proven technique. Journal of Second Language Pronunciation, 4(2), 208–231.
- Levelt, W. J. M. (1989). Speaking: From Intention to Articulation. MIT Press.
- Kuhl, P. K. (2004). Early language acquisition: Cracking the speech code. Nature Reviews Neuroscience, 5, 831–843.
- Vandergrift, L. & Goh, C. C. M. (2012). Teaching and Learning Second Language Listening: Metacognition in Action. Routledge.
- Berlitz「英語の連結・リエゾン(音声変化)5種類と練習法」 https://www.berlitz.com/ja-jp/blog/english-liaison
- レアジョブ English Lab「リエゾンとは?英語の音声変化を練習してみよう」 https://www.rarejob.com/englishlab/column/20220226/
- ENGLISH JOURNAL「英語の音声変化の仕組み」 https://ej.alc.co.jp/