TOEIC vs VERSANT|目的別の使い分けと対策の根本的な違い

記事の執筆者 メイソン(株式会社The Past 代表 / 椿祐輔)

VERSANT満点(90点)、CEFR C2レベルの英語力を有する。フィリピンの語学学校で10年以上にわたりカリキュラムと教材開発に従事し、述べ5,000人以上の多国籍な英語学習者(日本、中国、台湾、ベトナム、ロシア等)の学習をサポート。言語学と音声学に精通しており、現在は株式会社The Pastの代表取締役、カリキュラム開発者として、グローバルな英語教育を推進している。

「TOEICで800点を取っているのに、英語で話せない」「VERSANTを受けたら点が低くてショックだった」——これは多くの社会人英語学習者が直面する現実です。

TOEICとVERSANTは同じ「英語テスト」と一括りにされますが、測っている能力が根本的に違います。どちらが優れているという話ではなく、目的によって選ぶべき試験と対策の方向性が異なります。

本記事では、両者の試験設計・採点方式・測定能力・コスト・対策方法を構造で整理し、自分の目的に合った試験と対策を判断できる状態にします。

試験設計の根本的な違い

最大の違いは、測定対象の英語能力です。

  • TOEIC:主にリスニングとリーディングの「受動的英語能力」を測る。読む・聞いて選択肢から選ぶ形式
  • VERSANT:スピーキングとリスニングを中心に「能動的英語能力」を測る。自分で発話する形式

TOEIC900点台の上級者でも、VERSANT平均は52点(CEFR B1+)に留まります。両試験が異なる能力を測っている以上、これは当然の結果です。「読める英語」と「話せる英語」は別物だという事実が、スコア差にそのまま表れます。

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両試験の比較早見表

項目TOEIC L&RVERSANT
試験形式マークシート式選択問題電話・PCで音声応答
主な測定能力リスニング・リーディングスピーキング・リスニング
試験時間約2時間約20分
スコア範囲10〜990点10〜90
採点方式統計処理(IRT)AI音声解析
受験頻度月1回程度(公開試験)24時間オンライン受験可能
受験料約7,810円6,600円
結果速報数週間後即時または数日
ビジネス採用国内企業の標準指標グローバル企業・コーチング業界

測る能力の違い

TOEICが測るもの

主にリスニングと読解の受動スキル。文法問題と語彙力、ビジネス文脈の理解が中心です。スコアが高ければ「英語を読み、聞いて理解できる」ことは証明できますが、自分で英語を話す・書く能力は測定範囲外です。

TOEICの運営団体IIBCは、スコアレンジ別に「英語で何ができるか」を示した「TOEIC L&R Can-Doガイド」を公開しています。ここでも、TOEICが測るのは「読んで理解できる」「聞いて理解できる」という受容的な能力に限定されていることが確認できます。

※ 詳細は IIBC「TOEIC L&R Can-Doガイド【社会人用】」(公式PDF)をご参照ください。

VERSANTが測るもの

VERSANTの総合スコアは、スピーキング力50%+リスニング力50%で構成されます。スピーキング力はさらに「話の内容(言葉の使い方)」と「話法能力(発音・流暢さ・わかりやすさ)」に分解されます。

スピーキング能力は、以下の4観点で評価されます。

  • 文章構築力(Sentence Mastery):文法・文の組み立て
  • 語彙:適切な語の選択
  • 流暢さ(Fluency):発話のリズム・速度・間
  • 発音(Pronunciation):個々の音・強勢・イントネーション

これらは「即座に英語を産出する能力」であり、TOEIC対策では鍛えにくい領域です。

採点方式の違い|なぜスコアの意味が違うのか

TOEICは受験者の回答パターンを統計処理で得点化します。一方VERSANTはAI音声解析で発話そのものを評価します。

VERSANTは1分前後の素早い応答を6つのPart(A〜F)で繰り返す形式のため、考えてから完璧な英文を作る余裕はありません。反射的に英語を産出する能力が直接スコアに反映されます。

TOEICの読解問題は時間内に答えを「選ぶ」だけですが、VERSANTは「作って話す」必要があるため、英語力の自動化レベルが如実に表れます。

データで見る「TOEIC高得点でも話せない」現実

「TOEICは高いのに話せない」は感覚論ではなく、データで裏付けられています。VERSANT日本総代理店の日本経済新聞社が公表する「2023年日経スコアデータベース」は、両試験のスコア関係を明確に示しています。

TOEICスコア帯別のVERSANT平均

TOEIC L&RVERSANT総合スコア(平均)CEFR
600点台35A2
700点台38A2+
800点台43B1
900点台52B1+

TOEIC900点台といえば「英語上級者」と見なされます。しかし、その層でもVERSANT平均は52点(B1+)。VERSANTが外資系企業の採用ラインとする59点(B2)には届いていません。読む・聞く力を高めても、話す力は自動的にはついてこないのです。

同じTOEIC960点でも、VERSANTでは53点の差

さらに象徴的なのが、日経スコア活用BOOKに掲載された2人の比較事例です。

AさんとBさんは、TOEIC L&Rがどちらも960点(CEFR C1相当)。読む・聞く力では同等のハイスコアです。しかしVERSANTで測ると、Aさんは総合82点、Bさんは総合29点——53点もの差が開きました。

TOEICのスコアだけを見れば「2人とも英語上級者」ですが、実際の話す力は、Aさんが「複雑なビジネス交渉や議論ができる」レベル、Bさんは「ゆっくりした会話で簡単な情報交換ができる」レベルです。英語で「話す力」は、スピーキングテストで測らないと見えない——この事例が、それを端的に示しています。

※ 詳細は日本経済新聞社「日経スコア活用BOOK」収録の「VERSANTとTOEIC L&Rのスコア関係図」をご参照ください。

目的別の使い分け

TOEICが向いている目的

  • 国内企業の昇進・採用基準を満たしたい
  • 就職活動でスコアを履歴書に書きたい
  • 英語の読解・リスニング力を客観指標で証明したい
  • 大学院・MBA留学の英語要件(補助的に)

VERSANTが向いている目的

  • 実際の英語会議・商談で発言できる力を測りたい
  • グローバル企業(楽天・ソフトバンク等)の社内基準
  • 英語コーチングの効果測定指標
  • 客観的に「英語が話せるか」を証明したい
  • 短時間で結果が出る試験を求めている
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対策方法の違い

両試験の対策アプローチは、測る能力が違う以上、根本から異なります。

TOEICの対策

  • 公式問題集の繰り返し演習
  • パート別の解法テクニック習得
  • 頻出ビジネス語彙の暗記
  • 速読力・スキャニング技術
  • リスニングは選択肢の先読み

VERSANTの対策

  • 発音の基礎訓練(音素・音声変化)
  • 短文の即時応答練習(リピーティング)
  • 文の構築力(Sentence Mastery)の強化
  • 1秒以内に話し始める瞬発力訓練
  • 素材を3〜5日繰り返してチャンク化

TOEIC対策の延長線上にVERSANT対策はありません。TOEIC学習で読解・リスニングを伸ばしても、自分で英語を作って話す力は別途訓練が必要です。

両試験を併用する設計

実務で英語を使う社会人には、両方の指標を併用するのが現実的です。

  • TOEICを昇進・採用の対外的な証明書として持つ
  • VERSANTを実務スピーキング力の自己診断・進捗指標として使う

TOEIC高得点を持っていても、VERSANTスコアが50台以下なら、実務会議で発言できない可能性が高い。逆にVERSANT 60点以上を取っていれば、TOEICが600点でも英語会議で機能できます。

まとめ

TOEICとVERSANTは「同じ英語テスト」ではなく、測る能力が根本的に違う2つの試験です。TOEICは読解・リスニングの受動能力を、VERSANTはスピーキング中心の能動能力を測ります。

国内企業の評価指標としてはTOEIC、実務での英語コミュニケーション能力の指標としてはVERSANT——目的に応じて使い分けることが、効率的な英語学習設計の出発点です。

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