ディクテーションを、ただの英語の書き取りだと考えていませんか?
また、「リスニングが伸びる」と聞いて興味があるものの、書き取りの準備がめんどうで挑戦できずにいる方も多いのではないのでしょうか。
この記事では、ディクテーションを「ただの英語を書き取るだけでは終わらせない」効果的な学習方法と、英語音声を使った実際のディクテーション練習まで、かんたんに挑戦していただけます。
今から10分間。
私たちと一緒に、リスニング力が飛躍的にあがるディクテーションを始めてみましょう。
ディクテーションとは?
ディクテーション(Dictation)とは、聞いた音声を書き取ること。
「なぜ、英語が聞こえないのか?」
あなたのリスニングの課題を丸裸にできる、唯一無二の学習法です。
また、ディクテーションの練習過程では、単語・文法知識、音声知識の自動化がおこなわれ、リスニングだけでなく、英語4技能(読む・聞く・書く・話す)の底上げにも非常に効果的です。
効果的なディクテーションのやり方
ディクテーションの主な効果は「課題分析」です。
これを聞こえなかった理由の判明だけで終わらせず、その対策をおこない課題克服をしましょう。
「習うより慣れろ」ということで、実際にやってみましょう。
STEP 1. 英語音声の書き取り
次の音声の聞こえた部分を、下部のテキストボックスに入力しましょう。
コツ
- 分からない部分はブランクでOK
- 単語の意味は分からないけど、「こう聞こえた」があればカタカナで入力 (ボウチュ/bought you )
- 「これ以上聞いても分からない!」という状態まで何度聞いてもOK
入力エリア
STEP 2. 正解確認
全て入力することができましたか?
正解を確認し、自身の回答と照らし合わせます。
1回で正解できなかった、数秒たつと英文を忘れてしまったという方は、どこかに課題があります。
認識と違った点を確認しましょう。
コツ
- 1回目で聞こえたところと、複数回聞いて初めて聞こえたところの差分をチェック
- 三単現のs、冠詞(a, the)の抜け漏れなども注意
正解
When will the new rule take effect?
新しいルールが適用されるのはいつですか?
STEP 3. 課題分析
その課題は、次の3つに分類できます。
②音声知識の不足:音の連結や脱落など、自分の認識している音と発話された音・リズムが違う
③上記①、②の両方:単語、発音ルールともに分からかった場合
日本人に多い課題が、「②音声知識の不足」です。
例えば、助動詞willは、文中では弱く・短く 「ゥル/ w(ə) l /」のように発話されることや、takeとeffectがつながって「テイケフェクッ」のように音の連結(リンキング)が起こることなど、知らなかった方も多いのではないでしょうか。
このように、「なぜ、聞こえなかったのか?」のか、あなたの弱点を見つけます。
STEP 4. オーバーラッピング 0.5~0.7倍速
このステップの目的は「英単語と音、リズム」の紐付けをおこなうことです。
つまり、間違った音の認識(will → ウィル)を、正しい認識(will→w(ə)l)にアップデートする作業です。
特に音の連結や脱落、弱く・短く発話する部分、強く・長く発話する部分を意識して、音声を真似て、ゆっくり、ていねいに、オーバーラッピングをおこないます。
最低:5回
推奨:10回
なお、「英語の強勢拍リズム」については以下の記事で練習することが可能です。
STEP 5. リード・アンド・ルックアップ
リード・アンド・ルックアップ(Read and Look up)とは、一文を黙読した後、目線を文章から外して、音読する学習法です。
コツ
- 文章を見ずに音読する際、「文章を思い出そうとして」目をつぶらないように注意
- 前のステップで習った、音とリズムの変化をできるかぎり再現
- 感情を込めて、実際の会話のように発話する
しかし、10語を超える英文や、文中に知らない単語があった場合、記憶にとどめ、再度音読するのに苦労すると思います。
その際は、意味のかたまり(チャンク)毎に、文章を想起すると良いでしょう。
I can pick up your parcels / while I’m at the post office.
あなたの小包を受け取ります / 私が郵便局にいる間に
ディクテーションの効果
ここまで読み進めていただいたあなたは、ディクテーションの効果をすでに理解しているのでは無いでしょうか?
主な効果は次の3つです。
- 課題分析
- 英単語と音・リズムの紐付け
- 意味推測と文法推測の強化
ディクテーションのやり方で、唯一触れていない「意味推測と文法推測の強化」について補足説明します。
意味推測と文法推測の強化とは?
意味推測とは、文脈や話者のイントネーションから、「何について話しているか?」「質問されているのか?」など、話の主題について推測することです。
そして、文法推測は、聞こえない・聞き逃した単語があったとしても、文法知識で欠けている箇所を補う力のことです。
例えば、今回の例文の場合、聞き取れなかった箇所にくる「品詞」は何でしょうか?
When (聞き取れない) the new rule take effect?
1回目の書き取り時に、文章を見返して「あれ?これ文法的に変だな?」と違和感を感じたら、2回目の書き取り時に、正しい文法になるように、文章を再構築できるようになると最良です。
ディクテーションにおすすめな教材とアプリ4選
使用する教材は、レベル・目的・導入のしやすさに応じて変えましょう。
また、より細かく課題を分析するには、ノートやタブレットでディクテーションをおこなった方が、1回目に聞き取れた箇所、2回目以降に聞こえた箇所と理由が判明するため、良いのですが、今現在、机に向かう習慣がない方は、お手軽なアプリから入るのもおすすめです。
教材 「英語を聞きとる力が飛躍的にアップする新メソッド 10秒リスニング」
形式:単行本、kindle版
価格:¥2,420 (単行本)
著者:小西 麻亜耶
推奨:中級〜上級
英語コーチング「The Past(ザ・パスト)」のVERSANT対策プログラムでも使用している、独学でリスニング力をあげるなら、第一におすすめしたい良書です。
STEP1. ニュースの聞き取り、STEP2. 単語の書き取り、STEP3. 意味が通じるかの見直し〜 STEP6. 音読、この6ステップを非常に書きやすいフォーマットで構成されています。
扱うトピックも、YoutubeやLGBTから、環境問題まで幅広く、2ヶ月楽しみながらリスニング力を高められます。
ディクテーション練習
最後に『マット・カッツの30日間チャレンジ』の冒頭1分を使ってディクテーションの練習をしてみましょう。
挑戦意欲が掻き立てられるモティべーショナルなスピーチとして有名ですね。
英語教材としても、広く利用されていることから視聴したことがある方も多いかもしれません。
細かな発音ポイントも一緒に見ていきますので、ここで練習して、自習にお役立てください。
スクリプト 1
ディクテーション欄
語彙・文法
stuck in a rut :《be ~》〔行動・考え方・やり方などにおいて〕マンネリである
発音
years + ago :”years”と”ago”がつながり、「ィヤーザゴゥ」のように発話
fel(t): “felt”の”t”が脱落
in + a rut:”in”と”a”がつながり、「ィナ ラッt」のように発話
スクリプト 2
ディクテーション欄
正解
so I decided to follow in the footsteps of the great American philosopher, Morgan Spurlock,
アメリカの偉大な思想家である モーガン・スパーロックにならい
語彙・文法
footsteps :足跡
philosopher :哲学者
※Morgan Spurlockは、アメリカの映画監督。1日3食1ヶ月間ファストフードを食べ続けるドキュメンタリー「スーパーサイズ・ミー」の主演、監督を務めた。
発音
decid(ed) to :”ed / t /”が脱落し、「ディサイトゥ」のように発話
follow + in:”follow”と”in”がつながり、「フォロウィン」のように発話
footsteps + of :”s”と”of”がつながり、「フッtステップソブ」のように発話
grea(t):”t”の脱落
スクリプト 3
ディクテーション欄
発音
an(d):”d”が脱落し「ェン」のように発話
try:「トライ」ではなく、「チョラィ」に近く発話
まとめ
聞き流しではなく、しっかりと課題分析ができるディクテーションは、学習負荷も高いですが、それゆえ、リスニング力を飛躍的に高める学習法となります。
特に「文字ではわかるのに、音になると理解できない」というリスニングの課題を感じる方にはぜひ挑戦していただきたいと思います。
また、課題分析だけで終わらせず、音声と同じリズムで発話できるように、オーバーラッピングを続けることで、英語特有の言語リズムも、ネイティブのボソボソ喋りもじょじょに聞こえるようになっていきます。
「やってみたかったけど、まだディクテーションは始めてない。」
残念ながら記事を読むだけでは、英語力は何も変わりません。
しかし、この記事でディクテーションに挑戦したあなたなら、始められます。
30日間の挑戦の初日が、この記事をお読みいただいた、今日となることを祈っています。